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ブランドエクイティとは?ブランドロイヤリティなどの構成要素とブランドエクイティピラミッドもあわせて解説
消費者の購買意欲が低下する現代、ブランドエクイティの向上が安定した収益確保につながることから、ブランドエクイティの向上に取り組む企業が増えています。今回は、ブランドエクイティを高める重要性や、ブランドエクイティの構成要素について解説していきます。
ブランドエクイティとは?
ブランドエクイティとは、あるブランドが有する資産価値です。形がなく目に見えないブランドというものを、不動産や株式などと同様に資産として評価しようという考え方が根底にあります。
品質も価格も同じくらいの商品・サービスがあれば、ほとんどの消費者はブランド力の高いほうを選択します。差別化が難しいと言われる昨今、ブランドエクイティの構築・向上に努める企業が増えています。
ブランドエクイティが重要な理由
今、ブランドエクイティの向上に努める企業が増えている理由としては、主に以下の3点が挙げられます。
顧客ロイヤリティの向上
ブランドエクイティが高まると、顧客ロイヤリティが向上します。顧客ロイヤリティとは、顧客がある企業・ブランドに対して信頼や愛着を感じる度合いを言い、信頼や愛着が大きいと顧客ロイヤルティが高いと表現します。顧客ロイヤリティが高い消費者は他のブランドを購入する必要性を感じなくなり、そのブランドの商品を繰り返し購入してくれます。
競合との差別化
消費者は、ブランドエクイティの高い商品を手にすることで「人と違うものを使っている」という特別感や優越感を抱くものです。このような特別感や優越感は、競合他社との明確な差別化ポイントになります。ブランドエクイティが高まれば競合他社との価格競争から脱却できるだけでなく、プレミア価格の提示も可能になります。
経営の安定化
企業がブランドエクイティを高めることで、顧客ロイヤリティが向上します。当然のことですが、顧客ロイヤリティの高いリピーターが増えれば、安定的な収益を確保できるようになります。さらに、ブランドエクイティの向上によって競合差別化を実現できれば、より安定した経営を実現できるようになるでしょう。
ブランドエクイティを構成する5つの要素とは?
ブランドエクイティを提唱した人物として有名なのがデイヴィッド・アーカーです。アーカーは、以下の5つの構成要素によってブランドエクイティを説明しています。
①ブランドロイヤリティ
ブランドロイヤリティとは、あるブランドに対する消費者の愛着や忠誠心のことです。ブランドロイヤリティの高い消費者はそのブランドに深い愛着を持っており、競合他社の商品・サービスに手を出すことはありません。ブランドのリピーターとして、安定的な収益をもたらしてくれます。
また、ブランドロイヤリティがほかの要素と異なるのは、ブランドの使用経験者に限られる点です。使用経験者による知覚品質やブランド連想は実体験に基づいているので、潜在顧客への影響力があるという観点も重要です。
なお、ブランドロイヤリティは以下のとおり4段階に分かれ、「固執」がもっともブランドロイヤリティが高い状態だとされます。
- 不認知:ブランドをまったく知らない状態
- 認知:ブランド名くらいは知っている状態(不認知より選ばれる可能性が高い)
- 選択:似たブランドが並んでいても好んで選ばれる状態
- 固執:絶対にそのブランドしか選ばない状態
②ブランド認知
ブランド認知は、あるブランドがどのくらい知られているかを表すもので、以下の2つで構成されます。
・ブランド再認:ブランドの要素に接したときに、特定のブランドを思い出すこと
ex. 牛のイラストやオレンジ色の看板を見て、吉野家を思い出す。
・ブランド再生:ある欲求が生じたときに、特定のブランドを思い出すこと
ex. 「お腹が空いた」「肉が食べたい」などの欲求が生まれたときに、吉野家を思い出す。
私たちは「失敗したくない」「安心して購入したい」といった心理から、知っているブランドを選択する傾向にあります。消費者に知られていなければ選択肢にも入りにくいですが、ブランド認知が高いほど資産価値も高い(=ブランドエクイティが高い)と評価されます。
なお、ブランド認知は消費者が単にブランド名を知っていることだけでなく、そのブランドのカテゴリや特徴まで正しく認識しているかどうかも含めて判断されるのが一般的です。
③知覚品質
知覚品質とは、消費者があるブランドの品質をどう捉えているかを表すものです。たとえば、スマホであればパフォーマンス(デザインや機能)、信頼性(不良品・欠陥品の少なさ)、耐久性(壊れにくさ・耐用年数)、付加サービス(保証・特典)などを、消費者がどう捉えているかということです。
消費者が「ブランドAより、ブランドBのほうが品質が良い」と認識していれば、ブランドBのほうが知覚品質が高いということになります。なお、知覚品質は実際の品質とイコールになるとは限らず、あくまでも消費者が捉えているブランドの「品質イメージ」です。事実として品質が優れている商品でも、知覚品質が低ければ消費者に選ばれにくくなります。
④ブランド連想
ブランド連想とは、消費者があるブランドの名前を聞いたときに連想するすべてのものです。キャラクターや人名、施設やモノ、色や感情など、あらゆるものを含みます。
ブランドエクイティを向上させるうえでは、消費者がポジティブな連想することが重要です。好ましいブランド連想が思い浮かべば、そのブランドに感情移入しやすくなり、共感・応援へとつながっていきます。逆にネガティブな連想が多くなると、消費者は感情移入することもなく、ブランドに価値を感じることもありません。
⑤その他の所有権のあるブランド資産
その他の所有権のあるブランド資産とは、ブランド以外の無形資産のこと。具体的には、特許権や商標権、著作権、独自の技術やノウハウなどのことを言います。
ブランドエクイティピラミッドとは?
ブランドエクイティピラミッドとは、ケビン・レーン・ケラーが開発したブランド価値を高める方法を段階的に示したフレームワークです。ピラミッド状に6つのブロックに分かれており、頂点にたどり着くことでブランドエクイティが創出されると考えます。頂点に達するには、理性的・左脳的なルートと感情的・右脳的なルートがあります。
①ブランドセイリエンス
ブランドセイリエンスとは、あるブランドを知っているかどうかという認知・認識のことを言います。そもそも商品・サービスが知られていなければ、消費者の選択肢にも入ってきません。その意味で、ブランドセイリエンスはブランドエクイティピラミッドにおける土台となる重要なものです。
②ブランドパフォーマンスとブランドイメージ
ブランドパフォーマンスとブランドイメージの階層は、初期利用によって商品・サービスのことを理解するフェーズです。
ブランドパフォーマンスとは、あるブランドの機能・効能のことで、消費者の実用的なニーズをどのくらい満たしているのかを表すものです。多機能でスペックの高い商品・サービスでも、消費者のニーズを満たしていなければブランドパフォーマンスは高いとは言えません。
ブランドイメージとは、ブランドに対して顧客が抱いているイメージのこと。企業が打ち出すブランドイメージは、消費者が抱くブランドイメージと必ずしも一致しません。双方がブランドに対して持つイメージに違いがないかを認識することは、後のブランドの方向性を決める上で重要になってきます。
③ブランドジャッジメントとブランドフィーリング
ブランドジャッジメントとブランドフィーリングの階層は、継続的な利用を通して商品・サービスのことを評価するフェーズです。
ブランドジャッジメントとは、あるブランド機能や品質に対する消費者からの評価(理性的判断)です。ブランドパフォーマンスの上位概念にあたり、消費者とブランドの距離が近い状態を前提としているので、機能や品質に対する信頼の度合いを表すものとなっています。
ブランドフィーリングとは、あるブランドに対する消費者の感情的判断のことです。ブランドイメージの上位概念にあたり、そのブランドに対する安心感・信頼感といった印象のほか、そのブランドを選択する自分を好ましいと思うかといった消費者自身に対する感情も含まれます。
④ブランドレゾナンス
ブランドレゾナンスとは、あるブランドに対して消費者が抱く共鳴性や忠誠心のことです。「消費者の感情移入の度合い」や「消費者とブランドの絆の強さ」などと説明されることもあります。デイヴィッド・アーカーが言うところの「ブランドロイヤリティ」にあたるものがブランドレゾナンスです。
企業価値を左右する無形資産「ブランドエクイティ」
ブランドエクイティは短期的に構築できるものではなく、長い時間をかけて育てていくものです。また、一度構築したブランドエクイティも永続するわけではなく、不具合や不祥事などマイナスの事象によって瞬く間に失われてしまいます。その意味で、ブランドエクイティの向上は「遠回り」な取り組みに思えるかもしれませんが、ブランドエクイティを確立・維持できる企業は恒常的な成長サイクルに乗ることができるはずです。
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