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エッジAIとは?概要からクラウドAIとの違い、事例まで解説
カメラを使った「顔認証システム」や、無人での自律走行が可能な「ロボット農機」など、末端のデバイス(カメラ、農機)に直接学習モデルを実装するケースが増えてきました。システムの末端(エッジ)にAIを搭載しているため、この技術を「エッジAI(edge AI)」と呼びます。 エッジAIの市場規模は年々拡大をつづけ、多くの産業分野で注目を集めています。本記事では、エッジAIの概要やクラウドAIとの違いについて、実際の導入事例を紐解きつつ解説します。
エッジAIとは?デバイスの末端にAIを搭載する仕組み
エッジAI(edge AI)とは、AI(人工知能)とエッジコンピューティングを組み合わせた造語です。
システムの末端のデバイス(エッジデバイス)における処理に人工知能を実装する仕組みを意味します。
エッジデバイスの例として、たとえば自動車、カメラ、産業用ロボットが挙げられます。
こうしたデバイスに直接AIを実装し、リアルタイムで即応性が高いシステムを構築するのが、エッジAIの狙いです。
エッジAIとクラウドAIとの違いを比較
エッジAIと対になる概念として、クラウドAI(cloud AI)が挙げられます。
クラウドAIとは、システムの末端部分ではなく、外部のデータセンターなどのクラウド環境に人工知能を実装する仕組みです。
ネットワークを通じて大量の学習データをクラウド環境に蓄積し、データセンター内のマシンで高速処理を行い、機械学習モデルを効率的に作成できるのが特徴です。
IBM、Google、Microsoft、Amazonなど、世界的なAIプラットフォーマーの多くが、クラウドAIを採用しています。
エッジAIとクラウドAIの違いは、次のように整理できます。
エッジAIの特徴:必要なデータのみをクラウドに送信する
エッジAIにもクラウド環境を利用するものはありますが、クラウドAIと違い、必要最低限の学習データしか送信しません。
そのため、セキュリティ上のリスクが少なく、情報プライバシーも保護されます。
大規模なハードウェアや通信ネットワークを構築する必要がなく、低コストで実装できる点も特徴です。
もう1つの強みとして、即応性が高いリアルタイム処理が可能な点が挙げられます。
クラウド環境とのやりとりに時間がとられないため、瞬時の判断が可能です。
クラウドAIの特徴:大量のデータをクラウドに送信する
クラウドAIでは、大量の学習データをクラウド環境に送り、データセンターのマシンで情報処理を行います。
エッジデバイスと比べて、CPUやGPUのマシンパワーが高いため、エッジAIよりも複雑で高度な処理が可能です。
ビッグデータの分析も可能で、大量の学習データを高速で処理したいケースに適しています。
エッジAIの2つのタイプ
エッジAIには2種類あります。
1. 学習データの分析はクラウド環境で行うタイプ
エッジAIとクラウドAIのいいとこ取りをしたタイプです。
膨大な学習データを扱うディープラーニングなどでは、マシンパワーの高いクラウドAIを活用し、リアルタイムでの処理が必要な場合のみエッジAI側で情報処理を行います。
2. エッジデバイスだけで処理を行うスタンドアロンタイプ
クラウド環境に依存せず、エッジ側だけで学習を行う完全独立型のタイプも存在します。
産業用ロボットや工作機械など、即時対応が求められるデバイスで採用されます。
高速でのデータ処理や、スタンドアロンでの自律学習が特徴です。
エッジAIの市場が急成長した理由
エッジAIの市場は急成長しています。
富士経済グループによると、エッジAIコンピューティングの2018年の市場規模は110億円と推計されています。
2030年の支出額は6倍以上の664億円に達し、急速な拡大が予想されます。[注1]
なぜ、エッジAIが注目を集めているのでしょうか。
その理由として、自動運転技術の登場と、第4次産業革命にともなう工場の自動化(ファクトリー・オートメーション)の推進という2つの要因が挙げられます。
いずれの技術も、リアルタイムな推論・判断や、エッジ側の高速なデータ処理能力が不可欠です。
エッジAIコンピューティングの発達により、スタンドアロンでの自律学習や、エッジ側の動作軽量化が現実味を帯びてきました。
そのため、エッジAIの研究開発が活発化し、国内でも多くのベンチャーやスタートアップが登場しています。
エッジAIを搭載する4つのメリット
エッジAIを採用すれば、次の4つのメリットが得られます。
リアルタイムでの推論・判断
エッジAIの最大のメリットは、リアルタイムな情報処理が可能な点です。
クラウドAIであれば、学習データをクラウド環境に送信し、解析し、もう一度受信するという手間がかかります。
エッジAIではエッジ側で情報処理が完結しているため、通信の遅延が発生しません。
瞬時の判断が必要な機器にも搭載できます。
通信ネットワークのコストを削減
エッジコンピューティングでは、最低限の学習データしかクラウド環境に送信しません。そのため、やりとりするデータ量が少なく、通信コストを抑えられます。
たとえば、ファクトリー・オートメーションの場合、個々のデバイスが送るデータは小さくても、工場全体で見るとデータ量は膨大です。
すべての学習データを送るクラウドAIの場合、通信インフラ構築のためのコストもかかります。
堅牢なセキュリティ
クラウド環境と最小限のやりとりしかしないスタンドアロンのエッジAIなら、外部ネットワークを通じてサイバー攻撃を受けるリスクが小さく、セキュリティも強固です。
情報処理がエッジ側で完結していれば、情報漏えいや不正アクセスの被害を受けにくく、情報保護やプライバシーの観点からも優れています。
クラウド環境での分析精度改善
エッジAIとクラウドAIを組み合わせれば、クラウド環境の学習精度も高まります。
エッジ側で可能な限りデータ処理を行えば、生の学習データをクラウド環境に送るよりも、効率のよい学習が可能です。
エッジ側で処理を分担すれば、クラウド側の負荷が軽減され、マシンパフォーマンスも低下しません。
クラウドコンピューティングの分野でも、エッジAIの考え方が取り入れられつつあります。
エッジAIの導入事例
エッジコンピューティング技術の発展にともない、エッジAIはさまざまな産業分野で導入が進められてきました。
たとえば、次のような導入事例があります。
自動運転技術
エッジAIの活用がもっとも期待されているのが、自動運転技術です。
たとえば、車・歩行者・信号機などを自律的に認識するため、画像認識システムを自動車に搭載しています。
車の運転では瞬時の判断が必要です。
クラウド環境に学習データを送り、判断していては間に合わないため、エッジAIが採用されています。
顔認証技術
カメラのAIで顔の特徴を読み取り、データベースと照合する技術です。
カメラの前を歩くだけで顔認証ができるウォークスルー型の機器も登場しています。
気象予報
従来の気象予測システムは、広域でのシミュレーションが中心でした。
エッジコンピューティング技術により、各地に設置されたセンサで局所的な気象データを読み取り、高精度かつリアルタイムなシミュレーションが可能になりました。
自律ドローン
ドローンの自動運転にもエッジAIが使われています。
人や構造物をドローン内部の学習機能でリアルタイムに認識し、自律的で安全なフライトが可能です。
人やモノの捜索・追跡、インフラの点検・補修などへの応用が期待されています。
ロボット農機
農作業の効率化や、人手不足の解消のため、自立運転が可能なロボット農機の導入が本格化しています。
自動車分野でも使われる自動運転技術や、作物の場所・生育状態を判断するための画像認識技術など、要素技術はすでに出揃っており、農林水産省が提唱する「スマート農業」の一端を担うと期待されています。
エッジAIの今後
エッジAI技術は、まだまだ発展途上です。
さまざまな業界・産業分野において新技術に関するニュースが日夜リリースされています。
ビジネスにおいては、新たなテクノロジーの出現により構造が大きく変わる可能性があります。
したがって、日々情報をキャッチアップする必要があるでしょう。
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