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EdTech(エドテック)とは?テクノロジーの力で教育にイノベーションを
EdTechは、「Education(教育)」と「Technology(技術)」をかけ合わせた造語で、ITテクノロジーを駆使して教育領域にイノベーションをもたらす新しい産業・サービスとして注目を集めています。今回はEdTechについて、その意味やICT教育・eラーニングとの違い、EdTechでできることや期待される効果、活用事例などを解説していきます。
EdTech(エドテック)とは?
EdTech(エドテック)とは、「Education(教育)」と「Technology(技術)」を融合させた造語です。
人工知能(AI)やVR(仮想現実)などの先端テクノロジーを教育分野に導入することで、今までになかった学習の場を提供します。
またEdTechは、学ぶひとだけではなく、教えるひと、教育分野でビジネスを展開する企業など幅広い領域でのイノベーションが期待されています
ICT教育・eラーニングとの違い
EdTechという言葉は、ITテクノロジーを活用して教育関連の業界・市場にイノベーションをもたらすビジネスやサービス、手法などの総称として用いられます。
EdTechと似た用語として、「ICT教育」や「eラーニング」があります。
ICT教育とは?
ICTとは「情報通信技術」のことで、ICT教育とは、コンピューターやインターネットなどのデジタルテクノロジーを活用した教育手法のことを言います。
イメージしやすいのは、PCやタブレットを使った学校の授業などです。
eラーニングとは?
eラーニングとは、インターネットを介して学ぶ学習形態のこと。
学校や塾、研修施設などで教師・講師と対面して学ぶ形態に対し、自宅などでPCやタブレットを使ってオンラインで学ぶ形態がeラーニングです。
「EdTech」「ICT教育」「eラーニング」は、それぞれの用語が持つ意味の広さや用法で異なっています。
EdTechはもっとも広い概念で、仕組みや産業そのものを指すことが多く、主にビジネス領域で用いられます。
ICT教育は、主に教育分野で「教育手法」の一つとして使われる用語です。
eラーニングはより限定的で、「オンライン学習」と同義で使われるのが一般的です。
EdTechの市場規模
日本におけるEdTech市場は、学習指導要領の改定や働き方改革の推進が追い風となり、市場規模は着実に拡大しています。
大企業からベンチャーまで多くの企業がEdTechサービスの運用に乗り出しており、野村総合研究所によるとEdTechの市場規模は、2020年度で2,320億円、2022年度で2,888億円、2025年度では3,210億円にのぼると予測しています(※)。
※参照:野村総合研究所「ITナビゲーター2020年版」p.72
経済産業省は、2018年1月に「『未来の教室』とEdTech研究会」という教育改革に関する有識者会議を設置。
EdTechを活用した新しい教育をどう構築するか、積極的な議論が国をあげて進められています。
これに加え経産省は、EdTechソフトウェア・サービスを学校などに導入実証する事業者に対し、経費の一部を補助する事業(EdTech導入補助金)を実施。
教育イノベーションの全国的な普及を後押しし、官民ともにEdTech市場への積極的な参画が目立ってきています。
参照
令和の教育改革に向けた、「未来の教室ビジョン」をとりまとめました (METI/経済産業省)
EdTech導入補助金(令和元年度補正)
EdTech導入で実現可能な新しいサービス
EdTech導入によってどんなことができるのでしょうか。
代表的な活用法を紹介します。
オンライン学習
EdTechの例としてイメージしやすいのがオンライン学習です。
インターネット環境とデバイスさえあれば、時間や場所を問わず、どこでも講義・授業を受けられます。
公教育以外でも、英会話やプログラミングなどのオンライン学習サービスは増加しており、子供から学生、社会人、まで幅広いニーズが生まれています。
SNS
SNSをベースにしたEdTechサービスも少なくありません。
授業内容への質問やディスカッションにSNSが活用されるほか、生徒同士や教師同士、教師と生徒、教師と保護者をSNSでつなげるサービスも登場しています。
単なる連絡・共有にとどまらず、学習に関するモチベーションアップや悩み解決にまで活用されているのが特徴です。
学習状況の管理
EdTechによって、学習状況を把握・管理するためのシステム「LMS(学習管理システム)」が進化を遂げています。
インターネット上で教材や課題の配信・回収ができるほか、生徒は自らの学習履歴を管理でき、教員は一人ひとりの生徒の学習状況がひと目で分かります。
多様な学び方の提供
EdTechの広がりによって、多様な学び方が提供されるようになりました。
たとえば、教育への「ゲーミフィケーション」の導入です。
ゲーミフィケーションとは、レベルやポイント、ランキングやミッション、キャラクターなどのゲーム的な要素をゲーム以外の分野に取り入れることです。
教育にゲーミフィケーションを取り入れることで楽しみながら学ぶことができ、モチベーションアップや学習の習慣化につながります。
また、「VR」を使った疑似体験学習も増加しています。
学校教育においては、歴史的建造物を擬似的に見学したり、人体の構造をよりリアルな視覚情報で理解したりと、様々な学習にVRが活用されています。
EdTechにより期待される効果
EdTechの普及によって何がもたらされるのでしょうか。
大きな期待が寄せられているのが、以下の3点です。
教育格差の解消
日本では、経済格差によって教育格差が生まれている現状があるほか、都市部と地方でも学習機会の差から教育格差が生まれています。
EdTechの広がりによって、このような教育格差の解消が期待されています。
たとえば、オンライン学習がさらに一般的なものになれば、教室や塾などの「場所」が必要なくなるほか、教師・講師が移動する必要もなくなります。
スマホで学べることが増えれば、教材費も削減可能です。EdTechによって、いつでもどこでも低コストで質の高い教育を受けられるようになれば、教育格差も少なくなっていくでしょう。
教育者の働き方・教え方の改善
教育現場の働き方改革は遅れており、従来からの非効率な管理体制や教師の業務負荷の大きさが問題視されてきました。
EdTechは、教育現場における働き方を改善する可能性を秘めています。
実際に、EdTechを活用した校務支援ツールや学習状況の管理ツールなどが続々と登場しており、業務効率化の効果が見えはじめています。
さらに、教師の教え方をサポートするアプリや動画なども増えており、これらを活用することで教師の負担を軽減しながら「教える質」を高めることが期待されています。
学習効果の向上
EdTechによって、「アダプティブラーニング」の精度は格段に向上しました。
アダプティブラーニングとは、AIをはじめとするテクノロジーの力を使って、個々に最適化された学びを提供することです。
たとえば、個々の学習履歴や過去の回答を蓄積し、そのデータをAIに分析させることで、理解度や思考パターン、ミスの傾向や苦手なポイントを明確にすることができます。
これにより、高い精度で学習内容・カリキュラムを個別最適化できるため、学習効果の向上が期待できます。
EdTechの事例
数多くの企業がEdTechを活用した事業・サービスを展開しています。
代表的なものを2つ、紹介します。
スタディサプリ
スタディサプリは、リクルートマーケティングパートナーズが提供するオンライン学習サービスです。
小中高、大学受験に必要な5教科18科目の講義動画をスマホやPCからいつでも視聴可能です。
月額1,980円で見放題と、教育環境格差の解消を目的に高品質な学習コンテンツを安価に提供しています。
学生向けの受験対策だけでなく、英語を学びたい社会人向けに「スタディサプリEnglish」や、学校向けのICT教育支援サービス「学校向けスタディサプリ」も展開しています。
Udemy(ユーデミー)
Udmedyは、教えたい人と学びたい人をつなげるオンライン学習のプラットフォームです。
デザイン、開発、マーケティング、IT・ソフトウェア、自己啓発、ビジネスモデル、写真、音楽など多彩なジャンルをオンラインで学べるのが特徴で、10万本以上の動画をオンラインで視聴できます。
一方で、専門知識を活かして教えたい人は、講師になって収入を得ることができます。
EdTechで教育現場にイノベーションを
日本の教育現場は、アナログ依存の古い体質からなかなか脱却できないところが多くあります。
それだけにEdTech関連のサービスが果たす役割は大きく、これからのイノベーションに期待が寄せられています。
ひと昔前に比べると、学びはより開かれたものになり、学びたい人も増えています。
あとは、学びを提供する側が日々進化するテクノロジーを活用し、どんなサービス・ツールを生み出していけるかにかかっています。
今後、高品質な学びを提供していくには、EdTechが鍵になるのは間違いありません。
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