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10人に1人が外国人の時代が来る
日本に住む外国人はこの10年で104万人増加して307万人となった。政府が外国人労働者や外国人留学生受入れのための制度やプロセスの整備を進めたことが、外国人増加の主な要因だ。今後日本人の生産年齢人口の減少ペースが加速する中で、外国人の増加は続くだろう。
政府機関は、2067年に外国人比率が10%を超えるとの推計を出している。ただし低賃金で単純労働に従事する外国人労働者ばかりが増え続けると経済成長に寄与しないばかりか、社会不安が拡大するリスクがある。
在留外国人307万人 10年で1.5倍増
2022年12月末時の在留外国人〈在留資格を取得して日本に中・長期滞在する外国人〉の数は307万5,213人であった。内訳は、中国24.8%、ベトナム15.9%、韓国13.4%、フィリピン9.7%、ブラジル6.8%(出入国在留管理庁公表)。
10年前の2012年12月末は203万3,656人であったから、日本で生活する外国人の数はこの10年で約1.5倍に増えた。ベトナムからの技能実習生が大きく増えたのが特徴的だ。
この人数に今年2023年に予想される訪日外国人数(インバウンド)2,110万人(JTB予想 2023年1月26日)を足すと2,417万人となり、年間約2,500万人の外国人が日本に在住もしくは訪問している。
欧米と比べまだ低い日本の外国人比率
2023年1月1日現在の日本の総人口は1億2,475.2万人(総務省 人口推計 確定値)であったから外国人比率は2.5%となり、10年前の1.6%から上昇した。
経済協力開発機構(OECD)の調査によると、移民を受け入れている欧米諸国の移民比率(OECDの調査では外国生まれの人口の比率)は、カナダが21.3%(2018)、ドイツが16.2%(2021)、イギリスが14.0%(2019)、アメリカが13.6%(2021)、フランスが13.3%(2021)、イタリアが10.4%(2021)と、軒並み10%を超えている。これらに比べれば、日本の外国人比率2.5%はまだまだ低いレベルだが、着実な上昇ペースにあるのも事実だ。
日本で暮らす外国人が増えている背景
整備が進む労働者の受入れ制度
日本に住む外国人が増えた主たる要因の一つは、政府が外国人労働者を受け入れるいくつかの制度を整備したことだ。それらの制度の中でもインパクトが大きいのが「技能実習制度」だ。
これは1993年に出来た制度だが、人手不足を背景に2015年頃から技能実習生の数は大きく増加し始めた。
この制度の本来の目的は国際貢献にある。すなわち、開発途上国から来る技能実習生が日本で技能や技術や知識を習得し、それらを母国に持ち帰って技術移転することにより母国の経済発展に貢献する。そういう人材の育成に寄与する国際貢献の制度としてつくられた。
ただし最近は、この制度が単なる低賃金の労働力の供給手段として使われる傾向が強まっている。低賃金のみならず劣悪な労働環境での技能実習生の受け入れが社会問題となり、現在この制度は見直しが行われている。
一方、技能実習制度の社会問題化を背景に、2019年4月に入管法の改正で、農業・建設業・製造業・宿泊業などの一部の単純労働での外国人雇用が可能となる特定技能制度が新設された。
また高い能力や知識を有し日本社会に貢献してくれる外国人を日本に呼び寄せるための制度として、高度人材ポイント制度が2012年5月に導入された。高度外国人材には、永住許可の緩和や配偶者の就労許可など、さまざまな優遇措置が用意されている。
さらに2023年4月から特別高度人材制度(J-Skip)が導入され、この制度の下では高度人材ポイント制度より拡充された優遇措置をうけられる。
留学生の増加
1983年に当時の中曽根内閣は、21世紀の初頭までに留学生の受入れ数を10万人にするという『留学生10万人計画』を策定。それ以降日本の国費による外国人留学生が増え始めた。
2008年には福田内閣の下で、2020年までに日本国内の外国人留学生を30万人に増やすという『留学生30万人計画』が策定された。
この計画では、入試・入学・入国から就職など卒業後の進路に至るまでの一連のプロセスの改善を図った。外国人留学生はこの計画のもと順調に増加を続け、日本学生支援機構の調査によると、2012年の137,756人から2019年には2.3倍の312,214人にまで増えた。
その後コロナ禍での落ち込みにより、2022年はピークの8割弱の231,146人にとどまった。
岸田内閣は、2033年までに40万人の外国人留学生の受け入れを目標としている(23年3月17日 教育未来創造会議)
日本社会の国際化
このカテゴリーに含まれる代表的なケースは国際結婚だ。
外国人が日本人と結婚すると「配偶者」の在留資格を得るので、結婚後カップルが日本に住めば、国際結婚の増加は外国人の増加要因となる。
ただし配偶者の在留資格を持つ人は2022年12月末で144,993人で、10年前の約16万人と比べてやや減少している。
一方、この10年来着実に増えているのが永住者だ。日本に住む外国人の在留資格のなかで最も多いのが永住者で、2022年12月末時点で863,936人と毎年過去最高を更新している。
永住許可の要件は「原則10年在留」をはじめとして厳しいが、それでも永住者が増え続けている事実は、何らかの理由で日本に長期滞在する外国人が増えている、すなわち日本の社会の国際化を表しているといえよう。
2067年に比率 10%超に
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2023年4月に公表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、日本に住む外国人は今後も増え続ける。
2067年には現在の約3倍の915万人となり、外国人比率は初めて10%を超えて10.2%となる。この数字に、日本国籍を取得した人や両親のどちらかが外国籍の人を加えれば、2067年の人口に占める「外国に先祖を持つ人」の比率は10%を大きく超えてもおかしくない。
外国人の受け入れ 人口減少のペースを緩和
社人研の将来推計人口では、外国人を除く日本人の人口減少は続き、2067年には現在から34%減少して8,059万人となる。
経済活動の担い手である生産年齢人口(15歳から64歳の人口)は44%減少して4,021万人となり、社会保障の主たる受益者である65歳以上の人口は9%の減少にとどまり3,289万人となる。
経済成長率 = 人口成長率+一人当たり実質 GDP 成長率(=労働生産性の伸び率)であるから、人口の減少が続けば経済規模は縮小してゆくことになる。
人口減少は避けられないが、労働生産性を上げれば経済成長は可能であり、日本は何としても生産性を上げなければならない。
ただし労働生産性を上げるには、個々の企業の生産性が上がること、産業間の労働移動が活発化すること、技術革新とイノベーションが起こること、などが必要だが、いずれも一朝一夕に実現できるものではない。
一方、人口減少は確実に進行し、しかも年々減少幅は拡大する。外国人の増加は日本人の減少幅の拡大を一定程度抑える効果を持つと考えられる。
地政学的な要素を除けば、政府は外国人の安定的な増加をもたらす政策を今後数十年は維持する可能性が高いと思われる。
社会不安拡大のリスクも
移民政策を採っている欧米では、移民の受け入れに伴って様々な問題が生じている。深刻なのは治安の悪化に代表される社会不安の拡大だ。
異なった言語や生活習慣や文化を背景に、外国人である移民と地域住民の間に軋轢が生じ、エスカレートすると外国人を排除しようとする動きも出る。
また外国人労働者は低賃金で単純労働に雇われるケースが多いため、低賃金により困窮して犯罪に走る事例も少なくない。
さらには、外国人労働者の低賃金がより広範な労働者の賃金の低下を引き起こし、それに対する反発で暴力行為を伴う過激なデモやストライキが頻発することもある。
日本は現在移民政策を採ってはいない。しかし2019年4月に、単純労働での外国人の雇用を可能とする特定技能制度が新設された。今後日本でも、外国人労働者が低賃金の単純労働の主たる担い手となる可能性も否定はできない。
ただしこの制度が欧米の移民政策と違うのは、在留期間に5年の上限があり、給与は日本人と同等以上が原則で、家族の帯同は認められない。
能力の高い外国人に選ばれる国へ
外国人を労働力として受け入れるとはいえ、単純労働の担い手として低賃金で外国人労働者を受け入れることは経済成長に貢献しない。労働集約的な旧式のビジネスモデルは手つかずとなり、生産性の向上が起こらないからだ。
求めるべき人材は、日本の企業文化に技術革新やイノベーションの刺激をもたらす高い能力を備えた外国人だ。
ただし今人手不足なのは日本だけではない。アメリカも欧州もアジアの新興国も人手不足で、勤務地に柔軟性のある能力の高い人材の獲得競争はグローバルで激しい。
その中で現在の日本は、能力の高い外国人から選ばれにくい国と言わざるを得ない。日本は経済成長が見込みにくい国と見られており、民間企業でも全般的に賃金や給与の水準は低く、能力の高い外国人であってもその能力にふさわしい報酬は支払われないと見られている。
また日本語の壁もある。習得するのが難しい言語だが、使えるのは日本だけだ。このほか二重国籍が取れない、在留資格の取得・更新手続きが煩雑など、今後改善やサポートを検討すべきいくつかの項目がある。
グローバルベースで優秀な人材が日本での勤務に魅力を感じるにはどうすればよいかを、官民挙げて考えるべきだろう。
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