内向きになった各国

USA中国イメージ

新型コロナウイルスによる影響は続く。感染拡大が収まらない限り、各国の内向き化は続き、グローバル化した経済に影響を与え続けるだろう。

米中対立だけでなく、日本や米国にオーストラリアやインド、そして英国やフランスなどを加えた自由民主主義諸国と中国との対立は、2020年以上に表面化する可能性がある。

今年のG7サミット議長国である英国は、韓国とオーストラリア、インドを招待すると発表した。こういった事実は両陣営の軋轢をエスカレートさせる要因となるだろう。

経済は回復しても、残るリスク

新型コロナウイルスが終息する方向に動き出せば、世界経済は数字としては回復傾向となる可能性が高い。しかし、今までに積もりに積もったリスクがコロナ禍をきっかけに顕在化する恐れがある。

1つに、抗議デモや暴動への注意が必要だ。
去年、タイやインドネシア、香港やベラルーシ、米国やナイジェリアなど各地で抗議デモや暴動が相次いだ。
各国のケースの背景・原因はそれぞれ違うが、ロックダウンなどさまざまな社会規制がこの1年間各国で敷かれてきたなか、社会経済的な不満・怒りを高めている市民も多い。

タイでは、感染が深刻とは言えない状況のなか、政府が非常事態宣言を繰り返し延長したことに対して、市民の間では「経済活動やデモを抑えるためだ」との見方が広がり、抗議デモの長期化を誘発したともいわれる。

ロックダウンなど社会規制が徐々に解除されることで、そういった市民の不満・怒りというものが抗議デモ(悪化すれば暴動)という形で去年以上に表面化する可能性がある。

テロへの警戒

新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年中に世界でテロ事件が大幅に増えたわけではない。しかし、そのリスクは、短期的なものではなく中長期的に考えるべきだろう。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、一部の国々では、テロ対策に従事してきた警察や軍が、ロックダウン対策に時間を割かれている。
その分、監視やパトロールなどが疎かになり、イスラム過激派などテロ組織の行動範囲が拡大し、治安が悪化することへの懸念が拡がっている。

欧米諸国では、ロックダウンによって自宅での生活を余儀なくされた結果、若者たちがオンラインで過ごす時間が増加し、白人至上主義など極右組織がネットやSNSを通して若者のリクルート活動を活発化させているともいわれる。

たとえ感染が収まる方向になったとしても、抗議デモや暴動、テロなどセキュリティリスクへの警戒は引き続き重要だ。

事前の情報収集が重要

抗議イメージ

海外に出る日系企業の中には、駐在員や出張者の安全・保護に関する危機管理対策を講じている企業は多いだろう。

日々変化する世界の安全保障情勢について、事前にどれほどの情報を正確に入手し、それを社内で徹底しているかは、企業の経営や社員の安全・保護に直結する問題である。国家間対立やテロ、暴動などのセキュリティリスクを見ていく上においては、日々情勢を注視し、情勢悪化のシグナルを見逃さないことが重要となる。

海外発の情報に留意を

テロやデモなどセキュリティリスクに関する情報は、日本のメディアでは報道されないものも多い。米国や英国などの情報機関、国際問題を専門とする欧米シンクタンクなどは、毎日のようにテロや暴動など治安に関する重要な情報を発信している。国際政治・安全保障の研究と実務に従事する個人として、日系企業の方々には是非とも情報収集の強化をいうものを徹底して頂きたいと思っている。


和田大樹(わだだいじゅ)

OSCアドバイザー/清和大学講師。岐阜女子大学特別研究員、日本安全保障・危機管理学会 主任研究員、言論NPO地球規模課題10分野評価委員などを兼務。
専門分野は国際政治学、国際安全保障論、地政学リスクなど。日本安全保障・危機管理学会奨励賞を受賞(2014年5月)、著書に「2020年生き残りの戦略 -世界はこう動く!」(創成社 2020年1月)、「技術が変える戦争と平和」(芙蓉書房2018年9月)、「テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策」(同文館2015年7月)など。
プロフィールはこちら (https://researchmap.jp/daiju0415
(筆者の論考は個人的見解をまとめたもので、所属機関とは関係ありません)
Email: mrshinyuri@yahoo.co.jp

▼過去記事はこちら
東南アジアのテロ情勢と駐在員の安全・保護
コロナ禍で急速に変わるインド・太平洋地域の国家間関係
バイデン政権下の米中対立における日系企業への影響

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