目を引く大型M&A案件、目立たぬ再生型M&A

これまでのところ件数が3,500件(対前年比▲15%)、取引額が14.3兆円(対前年比▲10%)、傾向としては、国内案件が堅調、クロスボーダー案件は減少したものの、大型案件で目を引くものがあった。

大企業によるベンチャー企業への出資・買収案件が増えたのも新たな傾向といえる。他方、誰もが急増すると見ていた再生型M&Aは今のところ目立った動きになっていない。

ここでは、取引額が100億円以上のM&A案件(いずれも公表ベース)の中から7つのキーワードをとらえ、2021年に向けた展望としたい。

M&Aをめぐる7つのキーワード(+1)とは

西友イメージ

2021年のM&A市場には、大きくとらえて以下の7つの特徴がある。
一つずつ、解説していきたい。

①革新的なビジネスモデル
②5G、 6G、デジタル時代の勝ち組
③業界内ランクアップ
④海外戦略の実現
⑤大企業によるカーブアウト
⑥PEファンドによるコロナ苦境業種への支援
⑦総合商社やファンド主導の体質改善のための非公開化

⑧社会問題の解決をテーマとするM&A

まずは①「革新的なビジネスモデル」を目指すものとして、KKR・楽天による西友の買収(「革新的なバリューリテーラー」)、LINEによる出前館への出資があった。楽天と西友は、オンラインとオフラインの融合したOMO(Online Merges with Offline)の実現。LINEと出前館は、フードデリバリーNo.1を目指す動きだ。

次に、②「5G、 6G、デジタル時代の勝ち組」を目指すものとして、NTTによるNTTドコモの完全子会化、オリックスによるアプレシアシステムズの買収、NECによるAvaloq Group AG (スイス、大手金融ソフトウェア企業)の買収があった。

③「業界内ランクアップ」も目立ったものがあった。
ホームセンター業界では、「ホームセンタームサシ」を運営するアークランドサカモト(新潟県三条市)が、「ビバホーム」を運営するLIXILビバ(さいたま市)を買収し、業界10位から5位へ浮上した。リース業界では、三菱UFJリースと日立キャピタルが2021年4月に経営統合(4位から2位へ)し、「三菱 HC キャピタル」を設立することが、それにあたる。

また、海外への渡航が難しいながらも、着実に④「海外戦略の実現」をこなす案件もあった。セブン&アイホールディングによる北米コンビニエンスストア「Speedway」買収、小林製薬による北米の一般用医薬品会社「Alva-Amco Pharmacal Companies, Inc.」の買収、日立製作所(昇降機事業)による台湾の大手「永大機電工業」の過半数取得などがあり、2021年はさらに増えるものと考える。

2021年には増加 大企業のカーブアウト案件

M&Aイメージ

他方、⑤「大企業によるカーブアウト」は減少した。新型コロナによる業績悪化で、売りたくても売れなかったのかもしれない。

その中で武田薬品は大衆薬事業など、少なくとも5事業を2020年中に売却している。
その他、キリンによるLion Pty Ltd (豪州子会社)の売却、富士通による携帯電話販売子会社の売却、日立製作所による海外の白物家電事業のJV化は、売り手と買い手の戦略と価格目線があったと考えられる。

2021年はコロナ禍の止血策が一巡し、このような海外子会社・事業の売却が増加すると思われる。

また、2021年はジャパン・インダストリアル・ソリューションズによるミツバ(自動車部品)への優先株出資、アドバンテッジアドバイザーズによるペッパーフードサービス(いきなりステーキなど運用)への優先株出資のような⑥「PEファンドによるコロナ苦境業種への支援」や、伊藤忠/ファミリーマート、ベインキャピタル/キリン堂に見えるように、⑦「総合商社やファンド主導の体質改善のための非公開化」が増えると思われる。

社会問題解決型のM&Aを

このコロナ禍では、外食、アパレル等小売り、旅行・宿泊、娯楽業界等が苦境に陥っている。確かにエッセンシャルではないかもしれないが、人がいきいきとして生活するためには欠かせないものであったはずだ。

例えば、居酒屋は日本の代表的な庶民文化であり、それがバタバタと倒産・廃業していく姿は寂しい限りである。対面を基本とするため、労働集約型でリモート経済への対応が遅れている業界である。

このことから新たな格差社会が生じていることも心配する。来年は少しでも、⑧「社会問題の解決をテーマとするM&A」案件が増えることに期待し、弊社(フロンティア・マネジメント)でも積極的に関わっていきたい。

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