VDRとは?M&Aでの活用法や企業の事例も紹介

新型コロナウイルスの影響で普及したリモートワーク。場所に縛られない働き方がスタンダードとなったことで様々な課題も発生しました。 中でも、オフィス外からのアクセスでも安全性と利便性を保つデータ管理の方法について模索している企業も少なくありません。 そこで注目されているのがVDR(バーチャルデータルーム)と呼ばれる、仮想的なデータルームです。元々、M&A業界や医療業界で活用されていたものですが、近年は他業界での活用も検討されています。 今回は、VDR(バーチャルデータルーム)の概要や、活用のメリット、M&Aでの活用方法や企業での活用事例などを詳しく解説します。

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VDRとは?

VDRとは、セキュリティが確保されたウェブ上に文書やデータをアップロードし、パスワードを使って閲覧者がアクセスする方法です。2000年頃からM&Aのデューデリジェンスなど、機密性と確実性が求められる文書の共有の際に活用されていました。その他の用途としては、行政の開示資料閲覧や医療・製薬業界のデータ共有などがあります。

注目されるようになった背景

限られた業界のみで使われていたVDRですが、近年他業界でも注目を浴びています。VDRに注目が集まっている理由は、高い安全性を特徴とする情報共有サービスへの需要が高まったことです。

リモートワークの普及に寄りオフィス以外の場所で働く社員が増えたことで、詳細なアクセス権限の設定や厳密な情報管理が必要となっています。
また、技術の進歩により効率化が進む一方で、情報漏洩リスクの深刻化も進んでいます。

アクセス権限や閲覧履歴などの厳重な管理が可能なVDRは情報漏洩のリスクを抑えながら効率的に文書・ファイルの共有ができるため各業界で導入が検討されています。

VDRのメリットとデメリット

以下では、データ管理・共有で注目されるVDRのメリットとデメリットを解説します。VDRは元々、高い機密性が求められる場面での文書の管理や共有に利用されていたため、他のファイル共有サービスとは違った特徴があります。自社が抱える課題と照らし合わせながら確認してみてください。

VDRのメリット

VDRのメリットは主に三つ挙げられます。

一つ目は高い安全性です。元々、M&Aにおける経営情報の管理や医療業界での治験データ管理など、高度なセキュリティが求められる場面で活用されていたVDRの最大の特徴といえます。万全のセキュリティ体制が敷かれているため情報漏洩のリスクが軽減できます。

二つ目は効率性です。インターネット環境があれば文書を閲覧できるため、自由なタイミングで簡単に情報にアクセスできます。入札形式のM&Aや絵画企業とのM&Aなどでは、関係者に情報を分配する手間の少なさは大きなメリットでしょう。また、実際にデータルームを開設する場合に必要となるデータルームの管理人もVDRの場合は不要です。

三つ目は詳細な設定が可能である点です。ユーザーごとのアクセス権限の設定だけでなく、閲覧・ダウンロード・印刷などの設定もできます。また、履歴も細かく把握できるため、厳密な管理ができるでしょう。

VDRのデメリット

メリットが多いVDRにもデメリットが存在します。
一つ目はデータルーム会社への費用が必要になることです。高い機密性と効率性が特徴であり、詳細の設定も可能と高品質であるため、費用が高額になる場合もあります。厳密な情報管理が求められていない場合はオーバースペックとなる可能性もあるため、注意が必要です。

二つ目は、電子化した資料をアップロードするため、ハードコピーでのみ保存されている資料を電子化する手間がかかることです。IT化は進んでいますが、紙媒体で保存している重要資料が多い企業にとっては問題となるかもしれません。

M&AにおけるVDR活用方法

VDRは、特にM&A業界で多く利用されます。大量の書類を安全に管理・共有する必要があるM&Aであっても、VDRを活用することで厳重なセキュリティ体制の下、進めることができます。以下では、M&A業界におけるVDRの活用方法を詳しく確認してきましょう。

デューデリジェンス

M&Aのデューデリジェンスは、VDRが最も活用される場面といえます。デューデリジェンスとは、M&Aの際に行われる対象企業への事前調査です。事業内容や経営実態などを調査し、投資を検討します。

VDRは、M&Aを検討する企業の情報公開により理解を深める段階で活用されています。財務諸表などの機密情報をVDRで管理することで、安全かつ効率的に企業間の理解を深められるでしょう。

社内の機密情報共有

社内の機密情報の共有でも、VDRを活用できます。コロナ禍でオフィス外から社内の機密情報にアクセスする場合、特に高い機密性が求められるためVDRは有効なソリューションとなります。

また、重要な会議に参加できない幹部社員への情報共有も、機密性を保ちながらスムーズに行うことができるでしょう。

海外企業との情報共有

対面での会議が難しい海外企業とのM&A検討の際も、VDRを使った情報共有は有効です。VDRを利用して文書をアップロードすると、インターネット環境があれば文書にアクセス可能となります。遠方の企業とのM&Aも効率的に進むでしょう。

M&A後の部門統合

M&Aのプロセス完了後の部門統合の際も、VDRが役立ちます。M&Aの際の資料についての設定を変更することもできるため、効率的にM&A後の統合を進められます。

知的財産の管理・移転

特許などの知的財産の管理や移転は、非常に厳密かつ迅速な情報管理が求められるため、VDRが適しています。また、一部のデータのみ共有したいという場合も、VDRを活用したデータ管理であれば設置可能です。

開示データについては自社でも確認・管理が可能で履歴も確認できるため、ミスも少なくなるでしょう。

VDR活用事例

ここでは、VDRを活用した事例を紹介します。

国交通省航空局(広島空港特定運営事業)

国土交通省航空局による広島空港特定運営事業についての民間投資意向調査で、イントラリンク合同会社のVDRソリューションが採用されました。

2013年の民活空港運営法の施行により、滑走路の航空事業も民間運営が可能になったため、各空港で手続きが進んでいます。広島空港での事業では、万全のセキュリティ体制や、日本語のサポート体制が評価されてVDR採用に至ったようです。

VDRを活用した民間事業者への守秘義務対象資料の情報開示や意見書の提出などが行われました。

パナソニック株式会社(M&Aプロジェクトの動画配信)

パナソニック株式会社が推進しているM&Aプロジェクトでの動画配信において、イントラリンクのVDRが活用されています。

パナソニック株式会社は2022年の持株会社体制への移行のため、グループ事業の再編を進めています。その一環として進められているM&A プロジェクト内で、コロナ禍での工場視察が必要となり、工場内を撮影した動画の共有方法が課題となりました。

VDR採用後は、大容量の動画データでも費用を抑えつつスピーディな情報共有が可能となり、閲覧期限の設定によって流出リスクにも対応できています。

様々な機能を活用しているパナソニックでは、他のプロジェクトでもVDRの活用を検討しており、今後の動向も気になるところです。

VDRで安全かつ効率的にデータ管理を

詳細の設定が可能で、安全性や効率性に優れたVDRはM&Aなどの用途に適したデータ共有サービスです。近年、情報漏洩の危険性が高まっており、機密性の高いデータ管理と共有は各企業にとって重要な課題といえます。現在の体制では、データ管理の安全性に不安がある場合、VDRの導入は非常に有効でしょう。

VDRは業界を問わず導入が可能であり、M&A以外での活用も増加傾向にあります。日本のサーバーを利用したVDRサービスの提供を行う企業も登場し、国内でのVDR活用の流れは拡大しています。積極的に導入し、安全でスムーズなデータ管理でビジネスを推進してみてはいかがでしょうか。

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