テレワークによるメリット

新型コロナウイルスの影響で、多くの企業がテレワークの導入を進めている。
感染は、7月時点で都市部を中心に再度増え始めており、影響は長期化する。感染拡大がたとえ収まっても、テレワークの普及は止まらないだろう

そもそもテレワークを導入することは、企業側には多くのメリットがある。

柔軟な働き方の提供

まずは、柔軟な働き方の選択肢を提供することで、優秀な人材を確保することができる。

出産、育児、介護あるいは配偶者の転勤などによって、優秀な社員が退職や離職をせざるを得ない場合がどうしてもあった。しかし、テレワーク導入で、通勤の必要をなくせば、優秀な人材の流出を防ぐことが可能となる。そもそも、転勤を減らすことも可能になる。

コストの削減

ICT環境の整備などに投資が必要な場合もあるが、広いオフィスを確保する必要がなくなり、オフィススペースコストや、通勤定期代など交通費などが削減できる。

また、通勤時のストレスを受けることもなく、仕事にエネルギーを注ぐことができる。仕事の生産性・効率性が上がり、全体的にはコスト削減につながるだろう。

テレワーク下において管理職が抱えるマネジメントの課題

テレワークで働く部下をマネジメントする管理職側には、多くの課題がある。

リクルートマネジメントソリューションズ(東京・品川)の組織行動研究所が2020年4月28日に発表した、「テレワーク緊急実態調査」によると、テレワーク環境下では、管理職層の半数が「部下がさぼっていないか心配である」と感じている。

6割以上が「必要な時に業務指示を出したり、指導をしたりしづらい」「部下の心身の健康の悪化の兆候を見逃してしまう」「部下との間でのコミュニケーションが減り、チームビルディングができない」ことを不安に感じていることが分かった。

目の前にいて状況が把握しやすい部下へのマネジメントには慣れているが、直接顔を合わせる機会が減ると、部下との信頼関係を築くのが難しくなる。管理職の多くが、どうしていいか不安になっている状況が見えてくる。

管理職がテレワークでマネジメントをする方法

それでは管理職がテレワークで働き直接顔を合わせる機会の減った部下と信頼関係を築きつつ、マネジメントするにはどうしたら良いのだろうか。その方法について説明する。

1.「人」ではなく「タスク」をマネジメントする

「社員がオフィスにいないと管理できない」と言う管理職は、とかく労働時間と着席率で部下を評価しがちだ。部下は定刻通りに出社しているか、ちゃんと着席しているか、真剣にパソコンに向かっているか、などだ。

テレワークの部下をマネジメントするには、そもそもこの発想を転換する必要がある。

このような「人」そのものに着目するのでなく、その人のやるべき仕事を「タスク」に細かく分解。そのタスクが予定通り完了し進んでいるかどうかを、マネジメントするべきだ。そのためには管理職側も今までの「誰に任せた(人)」というやり方から、部下の仕事内容を十分に把握し「何を任せたか(タスク)」を明確にしておくことが重要になる。

2.OKRを導入し、明確な目標と締め切りを設定する

テレワーク環境下では、対面で部下の状況を把握し、細かい指示を出すことが難しくなる。そのため、部下からしても「何をしたらいいのかわからない」といった状況に陥りやすい。

こうした状況を防ぐためには、管理職は自分が部下に対して期待していることや目標を明確にしておくことが重要になる。

同時に設定した目標に対して締め切りを設けることも忘れてはならない。

目標管理のフレームワークとしては、アメリカのIntel社で誕生し、GoogleやFacebookをはじめとしたシリコンバレーの大企業も導入している「OKR(Objectives and Key Results)」で設定するのが最新の手法だ。

OKRとは、Objectives(目標)とKey Results(主要な結果)からなる目標設定や管理の手法で、全社OKR→チームOKR→個人OKRへと目標が紐づくため、自らの業務がチームや会社の目標とどのように紐づいているのかを意識することができる上に、目標をオープン化することによって社員間のコミュニケーションが促される。また定期的に振り返りをするため、経済動向などの外的要因にも柔軟に対応しやすいなどの特徴がある。

3.1on1ミーティングを定期的に実施する

明確な目標と締め切りを設定したら、その進捗を確認し、継続的にフォローを行うことが重要だ。

管理職と部下との間で、目標進捗を共有する定期的な場を設け、思うように進捗していない場合には、管理職は内省支援やアドバイスなど必要なサポートをすることになる。

その手段のひとつとして、実施するのが1on1ミーティングだ。1on1ミーティングとは上司と部下によるマンツーマンのミーティングのことで、アメリカの大手IT企業を始め、とりわけシリコンバレーで深く根付いていることで知られている。
また、定期的に1on1ミーティングを行うことは、目標の進捗を確認し合うだけでなく、コミュニケーションをする機会の少なくなった部下とのつながりを深め、信頼関係を築くことができる。
管理職が業務支援や内省支援をすることを通じて、部下の成長を促進することが可能になる。

さらに1on1を通じて、テレワークによる心身のストレスなど、部下のコンディションの確認を行うことも大切で、そのためにも可能な限り、Web会議などでも、顔が見える形で行うようにしたい。

4.テクノロジーを活用して頻繁にコミュニケーションをとる

通勤をやめ、テレワーカー(特に在宅勤務者)となった社員の多くが、孤独を感じる傾向にあると言われている。

オフィスで働く社員同士のコミュニケーションが減る事に加え、外出も控えめになる。
話し相手のいない自宅で働かなければならないという状態で部下を長く放っておくと、「取り残された」と孤独感を感じ、仕事に対するやる気をなくしてしまう可能性が高くなる。

パフォーマンスの低下だけでなく、離職につながる可能性も出てくる。
メール、チャット、電話、Web会議ツールなどのテクノロジーを活用すれば、地理的制約を克服することが可能だ。リモートで働く自宅にこもりがちな部下と少なくとも1日に1回は直接やり取りをする密なコミュニケーションを取ることも重要だ。

管理職は発想の転換が求められている

テレワークの導入という大きな流れは、今後も止まらないだろう。
新型コロナウイルスの影響だけでなく、少子高齢化や労働力不足の流れに対応してゆくには、必要不可欠になる。皮肉にもコロナウイルス問題が引き金となり、「働き方」の改革は大きく進んだ。
部下のマネジメントにおいても、管理職は大きく発想の転換を求められている。

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(東京・品川)組織行動研究所「テレワーク緊急実態調査」

▼過去記事はこちら
シェアド・リーダーシップとは?リーダーシップ論の変遷とともに解説~「経営人材」へのサプリメント■第1回
心理的安全性とは?生産性向上のための環境を~「経営人材」へのサプリメント■第2回~

関連記事

シェアド・リーダーシップとは?リーダーシップ論の変遷とともに解説~「経営人材」へのサプリメント■第1回

「リーダーシップ」に対する考え方が、近年変化している。多種多様なリーダーシップ論があふれているが、この記事ではチーム全体でリーダーシップを発揮するという「シェアド・リーダーシップ」を紹介する。

心理的安全性とは?生産性向上のための環境を~「経営人材」へのサプリメント■第2回~

Googleの労働改革プロジェクトの調査チームが、チームの生産性を向上させるためには「心理的安全性」を高めることだと発表してから、多くの企業が関心を示している。今回は、その「心理的安全性」とは何かを紹介する。

「ニューノーマル」って言うな!

「ニューノーマル」や「新しい生活様式」という言葉が、市民権を獲得し始めている。「これからは過去の常識が通用しなくなる」「元には戻らない」といった、勇ましい言葉が跋扈(ばっこ)している。しかし、我々人間は過去において、コロナ禍とは比較にならないほど大きな、断層的な変化を乗り越えてきた。現在、我々の眼前にあるのは本当に「ニューノーマル」なのだろうか。

ランキング記事

1

ドラマ「半沢直樹」に学ぶこと JALのリアル「タスクフォースメンバー」が語る

TBS日曜劇場「半沢直樹」の快進撃が続いている。2013年に放映された前作は、最終回の平均視聴率が平成の民放ドラマ1位となる42.2%(関東地区)をマークし社会現象になった。今回も、視聴率が20%台の中盤と極めて快調だ。筆者は、後半のストーリーのモデルとなった「JAL再生タスクフォース」のメンバーであり、実際に日本航空に乗り込んで「タスクフォース部屋」を設置した。その当時のことを思い出しながら「半沢直樹」を見ている。ドラマと実際に起こったことに違いはあるものの、スリルのある面白いドラマとして楽しんでいる。 本稿では、筆者が、「半沢直樹」をみて感じたこと、そして、学ぶべきと思ったことを述べたいと思う。

2

「不要不急」 削減された交際費の研究

会社の交際費で飲み食いし、湯水のようにお金を使う。いわゆる「社用族」と呼ばれる人々は、バブル崩壊とともに消え去った。多くの人が、そう思い込んでいる。しかし、交際費をめぐる数字を丹念に見ていくと、そのような「思い込み」とは異なる風景が見えてくる。この記事では、前回東京オリンピックが開催された1965年からの長期トレンドを観察し、日本の「交際費」を分析する。

3

フードデリバリーの大きな「伸びしろ」と課題

UberEatsや出前館に代表されるフードデリバリー企業の隆盛が著しい。新型コロナウィルス感染の影響による飲食店利用の減少と在宅時間の増加が相まって、ファストフード(FF)店やレストランの料理の配送サービスが足元で急増している。本稿では、流通・小売業界におけるEコマース市場の歴史等を参考に、フードデリバリー業界の将来シナリオについて論考していきたい。

4

「7割経済」時代の事業再生 Withコロナ ㊤バブル後30年の変化

コロナと共に生きるWithコロナ時代は、「7割経済」と言われている。これは、多くの産業で「コロナ前の水準に業績が回復することはない」ことを意味する。これまでの事業再生は、「経営改革を伴う再生計画を実行すれば、いずれ売上高も回復していく」という基本前提に立っているが、その前提が大きく崩れる。Withコロナ時代はこれまでとは異なる手法、事業再生の「ニューノーマル」が求められる。

5

村上春樹さんから学ぶ経営④~作品に潜む成功へのヒント~ 危機と指導者

「村上春樹さんに学ぶ経営」の第4回。昨今のコロナ禍が拡がる状況を反映し、まずは以下の図表をご覧いただきたいと思います。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中