スポーツの歴史

スポーツの歴史

「スポーツ」という言葉は、ラテン語で“運び去る”や“気分転換をする”を意味する「deportare」が語源であり、それが中世フランス語では気晴らしをする、遊ぶ、楽しむという意味の「desport」になり、16世紀に「Sport」になったとされている。

スポーツはそもそも、競技ではなく楽しむための娯楽であった。

競技としてのスポーツは、紀元前9世紀ごろ、古代ギリシャでは神々に捧げる宗教行事として「オリンピア祭典競技」を開催したことに遡る。これが現代まで続くオリンピックの起源であり、競技スポーツの始まりともされている。

日本に近代スポーツが持ち込まれたのは明治維新後で、政府により派遣された外国人教師たちにより趣味としてのスポーツが日本の学生たちに広まった。

オリンピックと日本人

オリンピックと日本人

オリンピックには、1912年に開催された第5回ストックホルム大会に、「マラソンの父」とされる金栗四三など日本人選手2名が初めて出場。これをきっかけに、競技としてのスポーツが確立されていった。

国内プロスポーツリーグの誕生は、1936年に当時7チームから始まった野球からスタートしている。現在(2021年5月時点)では独立リーグ、女子プロ野球含めると22チームまで増加。以降、1993年にJリーグ、2015年にBリーグが発足し、国内プロスポーツは大いに盛り上がりを見せている。

国内プロスポーツチームの課題

国内プロスポーツチームの課題

プロスポーツチームが多数誕生しスポーツ市場が盛り上がりを見せる一方、多くのチームは経営において厳しい状況に立たされている。

プロスポーツチームの収益は主に広告(スポンサー)、入場料、リーグ分配金(放映収入等)、物販、その他(移籍金、アカデミー収入等)収入で構成されることが一般的であるが、多くが広告(スポンサー)、入場料収入に依存しているのが現状である。

Jリーグ所属チームの収益構成はスポンサー収入、入場料収入、リーグ分配金で平均70%程度の割合を占め、Bリーグでは全体の80%程度を占めている。

また、多額のリーグ放映権収入を原資とした分配金や、ブランドに基づくグッズ販売/ロイヤリティを期待できる欧米のトップチームと比較すると、国内プロスポーツチームにおける収入の絶対額は小さい。

プロチーム経営の戦略オプション

プロチーム経営の戦略オプション

プロスポーツチームの収益最大化を図る上では、周辺事業とのシナジーや投下できる経営資源がポイントとなり、その意味で各チームの本拠地を構えるエリア特性と事業・資金ネットワークを踏まえた独自戦略の策定は極めて重要なファクターとなる。

上記を踏まえ、エリア特性と事業・資金ネットワークの2軸で見たとき、プロスポーツチームが取るべき戦略オプションは大きく4つに大別される。

1.王道経営

王道経営

絶対的な収入源を原資として他事業分野を拡張する戦略である。スター選手及びチームを上手く活用した独自コンテンツを制作し、オンデマンド配信するといった新たな収益源の創出や、有名アパレルブランドと協業し、独自ブランドを世界中で販売するといったことが挙げられる。

他事業で得た収益を選手・施設に投資しチームを勝たせ、その選手・チームを活用し周辺事業を強化するという好循環を構築することがポイントとなる。

具体例として、プレミアリーグ(イングランドサッカーリーグ)に属するマンチェスターシティが挙げられる。

当チームは親会社であるアブダビ・ユナイテッド・グループの豊富な資金力を有し、大都市であるマンチェスターに本拠地を構えるチームであるが、世界屈指のスター選手を集め、2018-2019年シーズンでは世界6位の収益を誇り、他事業ではスター選手を活用したドキュメンタリー番組を配信し、国内外問わずファンを獲得、新たな収益源を構築している。

2.チーム勝利先行型経営

チーム勝利先行型経営

選手強化を目的とした投資を先行させ、チーム強化を図る戦略である。王道経営を目指す過程にあり、事業・資金ネットワークに劣る。そのため、周辺事業の確立は劣後させ、コア事業の安定化(放映権料・入場料収入・関連物販収入)をいかに実現できるかがポイントとなる。

川崎フロンターレ(サッカー)は、その成功事例の1つとして挙げられる。過去より代表経験のある主力選手や有名外国人選手の獲得に注力することでチーム強化を図り、2017,2018,2020年シーズンではJリーグ制覇を成し遂げている。

結果として、リーグ配分金(リーグでの成績に応じて配分される資金と放映権)や物販収益の絶対額が大きく、営業利益率11%(2020年1月期)とJリーグ内でも突出して高い収益性を実現している。

3.スタジアム・アミューズメント化経営

スタジアム・アミューズメント化経営

スポーツ以外の市場ニーズを押さえ、顧客ターゲット拡大による入場料収入・関連物販収入の最大化を目指す戦略である。スタジアム投資を積極的に行い、試合のない日でもスタジアムに来てもらえるような体験型の空間価値(アトラクション、ショッピング施設、飲食店、コミュニティプラットフォーム等)を高めることがポイントとなる。

東北楽天ゴールデンイーグルス(野球)の「楽天生命パーク宮城」のように、スタジアム内外に60以上の飲食店を用意し、球場外には観覧車やメリーゴーランドなどのアトラクションを設置することで、試合のない日でも楽しめる空間を創造することがその一例である。

4.地域密着型経営

地域密着型経営

地域課題の解決を企図した周辺事業とコア事業のエコシステムを確立する戦略である。周辺事業において新たな収益源を獲得することに加えて、その派生効果で地域住民のロイヤリティを高め、堅実に地域に支持されるチーム作り(=コア事業の維持・拡大)を行うことが重要となる。

松本山雅FC(サッカー)は地域密着型経営の好事例であり、史上最速のJ2加入後3年でJ1に昇格し、2015年(J1在籍シーズン)シーズンでは観客動員数6位を誇るチームである。サポーターの年齢層は、60歳以上が約20%(Jリーグ平均約11%)を占めていることが特徴的である。

山雅ドリームサミットといった、選手・自治体・住民による今後の街づくりを検討する座談会を定期的に実施するなど、様々な地域に根付いた活動を行っている。地元住民から確固たる信頼を得ているチームとして、世間から認識されている。

なお、地域密着型経営を確立することで得た収益を原資に、スタジアム投資や勝利先行を目的とした選手投資といった戦略オプションを跨いだ染み出しも地域密着型の先には考えられる。

コロナ禍で変化する観戦スタイル

コロナ禍で変化する観戦スタイル

また共通的なトピックとして、昨今の新型コロナウイルスによる消費者ニーズの変化を考慮していく必要がある。

1つ目の大きなポイントは、各観戦手段(デジタル/リアル)のデメリット補完ニーズの台頭である。コロナ禍により急速に拡大したデジタル視聴は、マルチアングルや各自のタイミングで再生やスローモーションカット、ハイライト等を楽しむことができるが、臨場感に欠ける点が課題である。

一方、現地観戦(リアル)では臨場感はあるが、選手との物理的な距離感の遠さは以前からの課題であり、コロナ禍によりデジタル視聴が普及したことで、相対感からお互いのデメリットがより顕在化された。

そのため、いずれに観戦手段においても、VR等のデジタル技術を駆使した対応策の検討が必要となる。

デジタル観戦にも一体感と臨場感を

もう1つのポイントは、リアルでのヒトとの繋がりが断絶されたことによる、コミュニケーションニーズ(価値)の更なる向上である。現地観戦では問題ないが、現状のデジタル視聴では個人又はそのリアル空間にいるヒトとしか繋がれないため、現地観戦と比較して繋がりに関する遡及は不十分と言える。

そのため、例えばオンライン上の共同プラットフォームで視聴し、その中でチャットによるコミュニケーションや投げ銭による高揚感・一体感を醸成するような仕組み作りが今度求められると考えられる。

変革へのロードマップ作成の好機

持続可能な経営を行っていくためには、各プロスポーツチームにとって自身が置かれているポディションを分析。その上で突き詰めるべき戦略オプションを特定した上で、具体的な施策へ落とし込み、中長期的に目指す姿を踏まえた全体ロードマップを策定することは非常に重要となる。

特に、政府の政策面での後押しやコロナ禍により生まれた新たなニーズへの対応等、変革が求められる今こそ、その最善のタイミングと言えるのではないだろうか。

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