先端技術を活用するスマート農業とは。コロナで深刻化する人手不足を解決できるか

農業分野で、ICT、AI、ロボットなどの先端技術を活用した「スマート農業」への注目が高まっている。農家の高齢化に加え、新型コロナウィルスの影響で外国人研修生が確保できず、人手不足が加速しているためだ。

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スマート農業とは。日本の農業の課題解決策として期待

農林水産省が主導する「スマート農業実証プロジェクト」は、2019年から、全国でスタートしている。スマート農業は、ICT、AI、ロボットなどの先端技術を活用して、農作業の生産性改善、収穫量アップ、農作物の品質改善などを促すものであり、日本の農業の課題である高齢化や人手不足の問題を解決することを目的としている。実証で得られたデータは、農業従事者に幅広く発信されるため、農業の生産性改善に繋がることが期待される。

コロナの影響でスマート農業実証を緊急的に追加実施

農林水産省は4月、「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」の公募を開始した。この背景は、新型コロナウィルスの感染者拡大に伴い、農業分野における人手不足が深刻化したためだ。2020年度2次補正予算に10.5億円が計上され、6月に実証を行う事業者が選定された。今回の公募では、労働力不足の解消に有効な技術の実証に重点が置かれている。

日本における農業の課題:就業人口の減少と高齢化の進展

日本の農業就業人口は、2000年末389.1万人から2019年末168.1万人と大幅に減少しており、今後も減少が続くと予想されている。

また、農業就業人口に占める65歳以上の占める構成比は2000年末52.9%から2019年末70.2%、平均年齢は同61.1歳から67.0歳とともに上昇し、高齢化も進展している。

こうした環境下、若年層の農業従事者の確保、もうかる農業の仕組みづくり、熟練農家の技能継承などのために、ICT(情報通信技術)を農業分野にも活用する動きが活発化してきている。

スマート農業の事例:ICTを活用した自動走行農機なども登場

日本の農業機械メーカー各社は、ICTを活用した情報管理システムや農業機械を投入している。既に、自動運転および自動運転アシスト機能付きのトラクタ、コンバイン、田植機、自動収穫ロボットなどが販売されている他、ドローンを活用した農薬散布なども行われている。これらの製品は、熟練工の作業を代替できるとともに、作業効率の向上、収穫量のアップ、省人化などに寄与している。

トータルソリューション力を強化する動き

また、農業機械メーカーにとって、顧客である農家の収益改善につながるソリューション力を高めることが重要になりつつある。このため、センシング、計測、データ分析などの技術が必要となっており、農業機械メーカーでは、これらの技術を有する企業との協業や提携などを進めている。

農業機械大手のクボタは、米国の自動収穫ロボットなどを手掛けるスタートアップ企業3社に出資するとともに、6月にはシリコンバレーにAgriTech(日本のスマート農業と同義語)関連のスタートアップ企業と提携するための拠点を設置する。

今後、農業機械メーカーでは、ICT、AI、ロボット、データ分析のノウハウ蓄積により、農家に対するトータルソリューション力を強化することが重要となりそうだ。

スマート農業普及への政府のバックアップも重要

スマート農業は、日本の農業の課題解決策として期待される。普及を促進するためには

(1)農家の大規模化
(2)スマート農業導入のための農業機械や関連機器の低価格化
(3)高齢者へのICTツールの教育
(4)若者の農業への就業促進

などの課題も抱えており、国策として政府の後押しも必要となりそうだ。

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