人材不足と内製化を両立させる方法とは?~BPOの進化系・BPaaS活用の勧め

最近、特に人手不足に関しての悩みを聴くことが多い。以前は良い人はいないかなと欲張りな悩みだったが、従来とは異なり人手不足による切実さが増しているように感じている。このような経営課題の解決策として、これまで用いられてきた業務改革の手法から一歩進んだBPaaSの活用を提案したい。

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業務委託、アウトソーシングの限界と弊害

業務委託、アウトソーシングの限界と弊害

企業経営における人材に関わる悩みは尽きない。

人手が足りない。人はいるけどできる人がいない。
良い採用ができてない。できる人から辞めてしまう。
外部要員を雇うにしても賃金が高騰して雇えない。
特にIT系人材は不足しており、内部では育成もできない。
でも外部に依存せず内部で行えるように内製化を図りたい。

このような場合、以前から業務改革(BPR: Business Process Re-engineering)の策として、社内人材のコア業務への集中と、ノンコア業務をアウトソーシングするBPO(Business Process Outsourcing)があった。

ただ、BPOによる効果を出すには規模のメリットが必要であり、BPOを実施した先の業務プロセスがブラックボックス化して見えなくなり、SLA(Service Level Agreement:サービスレベル契約)でコントロールしていたとしても限界があった。

一度アウトソーシングをすると、切り替えコストがネックとなり、ロックインされてしまうなどの弊害もあった。

このような課題に対して、BPOの進化系にあたるBPaaSで解決できるのではないだろうか。

BPaaSとは

BPaaSとは

BPaaSとは「Business Process as a Service」の略で、「ビーパース」と読む。

業務委託を指す「BPO」と、クラウド上で提供されるソフトウェア製品である「SaaS(Software as a Service)」を合わせた造語で、「業務プロセス」をクラウドサービスと合わせてアウトソーシングすることを指す。

従来はBPOの委託先で利用するシステムを、委託元が投資して貸与していた。BPaaSでは出来合いのクラウドサービスを選定し組み合わせて、自社向けに設定したクラウド上のシステムをアウトソーサーと一緒に利用する。

これにより作業状況が見えるようになり、余力があれば自らも業務が行えるよう内製に切替えることもできる。

契約次第ではあたかも時間バイトを雇うように、業務負荷が高い時だけオンデマンドでサービスを利用する形態にまで仕上げることも可能になるのではないだろうか。

BPaaSのメリットとデメリット

BPaaSのメリットとデメリット

BPaaSを活用するメリットとして、
(1)業務プロセスのクラウド化により、ノウハウが可視化され、蓄積が可能になる
(2)BPOに比べて投資や委託費用を抑えられるため、中小企業でも依頼しやすい
(3)ノンコア業務に限らず、AIなどの活用により幅広い業務に省人化して対応できる
が挙げられる。

デメリットとしては、多くの企業では提供されるクラウドサービスの形に合わせて、自社の業務プロセスを変える必要があることが挙げられる。

ただこのデメリットはメリットにもなる。

BPaaSでは、クラウド化に伴うシステム導入だけではなく、そのために必要となる業務プロセスまでをセットにして外部委託することで、プロセス全体の見直しに繫がり、これまで以上の業務効率改善が可能になる。

BPaaSは、BPOよりもさらに人件費の削減、業務の効率化などの効果が期待できるBPOの進化系ということができる。

定型的な事務処理以外も対象に

BPOの対象はこれまでは主に、人事業務の給与計算や経理業務の請求処理などの定型的な事務処理だった。BPO先でもAI-OCR(手書きや印刷物の文字をAI判定により光学認識し、電子データに変換するソフト。OCRは「Optical Character Recognition」の略)や、RPA(作業自動化ソフト。「Robotic Process Automation」の略)などITを駆使して、省人化や自動化を図りコストダウンを進めていた。

だが、BPaaSとして考えるべき対象は、非定型業務を含む対応ノウハウの蓄積が必要な分野だと考える。

例えば最近よく見かける例として、情報システムの業務システム保守やヘルプデスク業務が挙げられる。AMO(アプリケーション・マネジメント・アウトソーシング)として、大手SIerにアウトソーシングしていたが、内製化する動きだ。

業務システム保守業務には定型的な監視や既知の問い合わせ対応などもあるが、過去に経験したことがないシステム障害対応など非定型的な対応もある。障害を未然に防ぐための予防措置を考えていくことも業務運用に密接に関わるミッションクリティカルなシステムであれば、社内に対応ノウハウが備わっていなければならない。

これまでもインシデント管理ツールの共有のほか、問題対応においても1次や2次などの対応レベルに応じた役割を分割して共同運用してきたが、どうしてもユーザーからの距離が離れてしまい、良いサービス形態(ユーザーからの評価)になっていないことが多かった。

ただ、内製化にあたって自社でIT人材を確保して教育し定着させるには一足飛びにはできない。

BPaaSを利用して、業務対応ノウハウがブラックボックスにならないようにインシデントや対応ノウハウをSaaSの管理ツールに登録することで、情報をタイムリーに共有できるようにし、ITに精通したアウトソーサーと自社メンバーとが共同で業務プロセスを担うことで、自社メンバーでも最適なBPaaSを利用した運用を導くことが、コンサルタントとして求められるようになると考えている。

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