自社株買いとは?企業のメリット・デメリット、最新事例も解説

最近、メディアの情報で「自社株買い」という言葉を目にすることが多いです。 自社株買いは企業の経営戦略・財務戦略の一つであり、企業や投資家にとってのメリットやデメリットをしっかりと理解しておく必要があります。 本記事では、自社株買いのメリット・デメリットに加え、最近の自社株買いに係る事例を紹介します。

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自社株買いとは?

自社株買いとは、企業が自社の株式を証券市場から買い戻すことです。

例えば証券市場に100万株の株式が流通している会社であれば、その20%となる20万株を、市場を通じて自社が購入することになります。

自社株買いは従来様々な制限がありましたが、2001年10月の商法改正以降、目的を定めない自社株買いができるようになってから、多くの企業が財務戦略の一つとして検討し、実践するようになりました。

自社株買いの目的

自社株買いをすることの目的はいくつかあります。

代表的な目的としては、株主に資金を還元する株主還元の一環として、また、配当を支払う対象を少なくすることによる配当金総額の削減、現状の株価が低位推移していることを前提に株価を調整するといったものがあります。

加えて、将来の株価上昇を見据えて役職員にストックオプションを付与する際の原資として株式を取得しておくことや、第三者による買収を防衛する目的で行われることもあります。

自社株買いのメリット

自社株買いを行う目的について触れましたが、企業にとってのメリット・デメリットについて考えてみます。

投資家へのアピール

自社株買いは経営者が自社の株価が低位推移していると認識しているということのアナウンス効果があると言われています。
経営者が、「今の自社の株価は経営陣が認識している株価と比べて不当に低いので、当社は自社株買いを行います」といった具合です。

理論上も、自社株買いを行うと自己資本が減少しますので、自己資本に対する利益の割合であるROE(自己資本利益率)が改善します。
ROEが改善することで、資金を効率よく活用している会社として株式が買われることが多いといえます。

また、そもそも株式市場に流通している株数が減少しても、企業の価値は変わりません。
自社株買いによって株式市場に流通している株式数が減少することから、1株当たりの価値(=株価)が改善するということは直感的にも理解できます。

既存株主への還元

自社株買いは株式市場に自社の株式を購入するという行為を通じて資金を投入するため、既存の株主への還元といった側面もあります。
一方で、自社株買いによる還元は、自社株買いに応じた(市場で株式を売却した)株主のみに資金が還元されることから、すべての既存株主に還元が行われず、不公平だと考える人も存在します。

ストックオプション発行による役職員のモチベーション改善

企業は市場から自社株買いにより買い集めた株式を消却することも「金庫株」として保有し続けることも可能です。
金庫株として保有する株式を使って、ストックオプション制度を導入し、従業員への金銭的なインセンティブ制度として活用することもできます。

ストックオプション制度を導入することで、従業員の株価改善へのモチベーションが改善し、企業価値の向上に資することとなることも考えられます。

敵対的買収の防止効果

企業が株価改善に資する施策を打っているということは敵対的な買収を阻止する効果があります。
株価上昇は経営者への株式市場からの信頼となり、信頼を受けている企業は第三者による敵対的な買収の標的となりづらいといった側面もあります。

自社株買いのデメリット

メリットの多い自社株買いですが、メリットに反してデメリットも存在します。
ここでは、自社株買いにおいて想定されるデメリットについて紹介します。

キャッシュ残高の減少

自社株買いが企業の有するキャッシュで自社株式を株式市場から購入する行為であることから、相当量のキャッシュを準備することが必要となります。
自社株買いを行うことでキャッシュ残高は減少しますので、将来的に大きな投資案件などが控えているかなど、中長期的な資金繰りを想定して自社株買いを実行しないと、思わぬ資金ショートに直面することになってしまいます。

計画不足による株価低下

先ほど、取得した自社株は、消却することも、金庫株として保有することが選択可能とご説明しました。
金庫株として保有する株式は、将来の適切なタイミングで、再度株式市場で売却することもできます。
ただ、この自己株式の売却において、しっかりとした計画を立て慎重に行わないと、思わぬ株価低下を招くことになります。

というのも、自社株買いを行うことによる株価改善についてご説明しましたが、自社株の処分(=売却)においては、逆の理屈で株価低下が起こることになります。

また、自社株買いが自社の株価が低いことを暗に示すアナウンス効果があるとご説明しましたが、逆に自社株の放出は、自社の株価が適正、もしくは高いと経営者が考えているととらえられてしまう可能性があるためです。

自社株買いの最新事例

注目されている自社株買いですが、最近発表された事例についてご説明します。

日本郵政

日本郵政は2021年10月6日、1,000億円を上限とした自社株買いを行うことを発表しました。
これは、政府が保有する日本郵政株式を株式市場に売り出すことを受けたもので、一気に大量の株式が株式市場に放出されることで、株式の需給バランス悪化により株価下落を回避することが目的といわれています。

また、日本郵政は10月の自社株買いの前にも2021年6月に2,500億円を上限とする自社株買いを行っています。

各々、従来からの路線である郵政民営化の区切りとして、政府が保有する日本郵政株式を放出することを受けたものと考えられています。

リコー

リコーは2021年3月に、発行済株式の20%に相当する1,000億円を上限とする自社株買いを発表し、国内企業における過去の例と比較しても有数の規模となりました。

リコーは同時に5ヵ年の中期経営計画も発表し、ROE(自己資本利益率)の目標を10%とすることや、株主還元である総還元性向を50%の範囲内を目安に「バランスを取りながら積極的に還元してゆく」旨も明確化しました。

リコーはROIC(投下資本利益率)経営の最先端を走っている企業としても知られており、有利子負債と株主資本をバランスよく活用し、「稼ぐ」企業体質を作ってゆく一環として、自社株買いを行うことになったものと考えられます。

Zホールディングス

特に最近の事例だと、ヤフーの親会社であるZホールディングスが2021年12月3日に最大682億円の自社株買いと、取得した自社株を活用した新株予約権の発行を行うことが発表されました。

この自社株買いは、2022年4月から実施される東京証券取引所の市場区分再編の流れを受けたものと言われています。
市場区分再編で新設されるプライム市場に上場するためには、株式市場で自由に投資家が売買できる流通株式の割合を35%以上とすることが求められていますが、Zホールディングスのそれは33.9%と基準に達していませんでした。

今回の自社株買いには、ソフトバンクグループが出資するZホールディングスの親会社も自社株買いに応じるものとみられ、結果的に流通株式の割合を35%以上とする効果があるものです。

まとめ

本記事でご説明したように、自社株買いは自社の株価対策となると同時に、株主からの信頼を得て敵対的買収などの脅威から自社を防衛する財務上の戦略ということができます。

2021年中の自社株買いの事例でご説明した通り、株式市場に流通している株式を自社で取得することには様々な理由がありますが、効果的に自社株買いという選択肢を活用することで、事業成長を実現できるものと考えられます。

昨今、国内事例も多いですが、アメリカにおいても自社株買いが注目されています。
マイクロソフトや、USスチール、アルファベット、メタ(旧ファイスブック)などの超大手企業の自社株買いが発表されており、その規模は2021年の年間ベースでは過去最高であった2018年の約9,700億ドルを上回るものと想定されています。

国内事例や海外事例も含め、最新の事例をメディアなどで確認することで、具体的にそのメリット・デメリットをイメージしてみると良いでしょう。

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