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プル戦略、プッシュ戦略とは?ふたつの違いと使い分け方について解説
自社の商品やサービスは、市場調査からサプライチェーンを経て、市場に出てからは顧客に認知してもらい、最終的に購入してもらうまで多くのプロセスを踏みます。 そのなかで重要な戦略のひとつがプロモーションであり、中間業者や顧客へのアプローチが売上につながります。 「プッシュ戦略」と「プル戦略」はそのアプローチについての考え方です。 今回は、マーケティングにおける押し引き「プッシュ戦略」および「プル戦略」について、それぞれの違いや実施方法、使い分けが有効な場面などを解説します。
プッシュ戦略とプル戦略はどう違うのか?
プッシュ戦略とプル戦略は、それぞれが対照的な特徴をもつプロモーション戦略です。
プッシュ戦略は、メーカーから流通業者、小売業者などを経て顧客に製品が届くまでの過程で、各業者が積極的に売り込みをかける戦略です。
押し出す(プッシュ)ようにしかけるイメージから、「プッシュ戦略」と呼ばれます。
これに対しプル戦略は、メーカーが広告などで間接的に顧客へ働きかけ、需要を喚起して売り上げを狙う戦略です。
需要を引き出す(プル)ことを目的としているため、「プル戦略」と呼ばれます。
プッシュ戦略はアプローチが能動的、プル戦略は受動的見分けましょう。
プッシュ戦略の実施方法と重要なポイント
ブッシュ戦略には、「メーカー⇒流通業者」「流通業者⇒小売業者」といった流通チャネル内の働きかけと、メーカーから顧客への直接的な働きかけの2通りがあります。
流通チャネル内の働きかけについては、以下のように供給体制の強化に必要な手法を採用します。
- 取引先へのディスカウントやリベート
- 販売員の店舗への派遣
- 販売員に対する製品の説明や販売方法の指導
顧客の需要に対する供給不足や、店舗での販促能力不足に陥らないためにも、このような業者間の努力も重要です。
メーカーから顧客への働きかけについては、次のようなアプローチを採用します。
- Eメール
- 通販番組
- 訪問営業
- 電話営業
- キャッチセールス
基本的に認知度が低かったり、競合との差別化ができていない段階では大規模な広告を打っても顧客の反応があまり期待できません。
そのため、顧客に対して直接働きかけ、ブランドや製品について詳しく説明する必要があります。
これらの方法は、売り込み方が強引だと顧客に警戒される可能性があり、企業のイメージダウンにつながるリスクがある点には注意が必要です。
顧客の個人情報に対する意識も近年高まっているため、セールスをかける際の情報の取り扱いにも十分に留意しましょう。
見込み顧客を探し出し、いかに効率よくアプローチできるかが成功の鍵となります。
プル戦略の実施方法と重要なポイント
ブル戦略では、顧客が自発的に「この商品が欲しい」と考えるための働きかけが必要となるため、具体的に実施すべき内容は以下のようになります。
- テレビCM
- Webや新聞・雑誌・タウン誌などの広告
- SNSでの情報発信
- コンテンツマーケティング
- 口コミ
- 展示会への出展
いずれも企業や商品のブランドイメージを向上させ、顧客の興味をひくのが目的となります。
ここで重要となるのが、見込み顧客となる顧客の需要を事前に見極めることです。
年齢や地域、所得分布などの細かい属性に焦点を当て、どの層へ向けるべきかをマーケティングリサーチなどで明らかにしておきましょう。
また、広告活動から興味もった顧客がいても、企業のホームページの導線が悪い、注文のための電話が込み合っていて繋がらないなどの障害があると、顧客が途中で購買を断念してしまうおそれがあります。
そのため、広告の出稿から商品受注にいたるまでのプロセスに穴がないかのチェックも重要です。
顧客の「買いたい」という気持ちの誘発や、スムーズに購買へいたるまでのプロセス設計は、顧客心理を意識するとより効果を発揮します。
その際は、AIDMA(アイドマ)の法則をはじめとする心理学的なフレームワークの活用が良いでしょう。
関連記事:AIDMA(アイドマ)の法則とは?マーケティング活用法を解説
近年はプル戦略が注目される傾向に?
近年は顧客の嗜好が多様化しており、顧客の目線に立ったマーケティングが重視される時代だといわれています。
また、インターネット環境が幅広く普及し、顧客自身で情報を簡単に入手できるようになりました。
したがって、従来のプロモーションとしてプッシュ戦略の採用よりも、プル戦略の採用がコスト面や効率面で有効だと考えられる傾向があります。
なかでも顕著なのが、検索エンジンが収集するデータとプロモーションとが組み合わったたSEM(サーチエンジン・マーケティング)です。
SEMは見込み顧客が自ら検索したキーワードを利用する手法で、特定の情報に関心が高い見込み顧客にピンポイントでコンテンツを訴求します。
今後はデジタル変革が進む見込みとなるため、顧客ニーズに合わせるプル戦略型の考え方はより重要となっていくかもしれません。
プル戦略とプッシュ戦略は使い分けるのが効果的
今後はプル戦略の方が重視される見通しではありながらも、プッシュ戦略を軽視すべきではありません。
プル戦略とプッシュ戦略は、どちらかを採用するともう一方を採用できないトレードオフの関係ではなく、互いを補完し合う性質をもっています。
つまり、状況に応じたふたつの戦略の使い分けで、潜在的な需要を引き出しながらの販売力強化が可能です。
たとえば、メーカーが直営する販売店のケースを考えてみましょう。
そのメーカーが新商品を発売する際、テレビCMで大規模に宣伝しつつ(プル戦略)、販売店では商品に詳しい販売員が顧客に説明して理解を深めてもらう(プッシュ戦略)、という連携ができます。
このような事例は自動車メーカーや化粧品メーカーのように、製造から販売までワンストップで行う業界によくみられます。
もう少し小規模な事例としては、スーパーの特売チラシによる顧客を呼び込みと(プル戦略)、売り出したい商品の試飲・試食販売の実施(プッシュ戦略)も戦略の使い分けといえます。
ふたつの考え方を柔軟にマーケティングへ活かす
プッシュ戦略とプル戦略は、方法論というより商品やサービスを顧客に買ってもらうまでのアプローチに関する考え方といえます。
そのため、それぞれは相反するものではなく、違いや特徴を知ることで効果的な使い分けが可能です。
近年の傾向からプル戦略的な思考が重視されている点は念頭に置きながらも、自社の事業や商品・サービスの特性を把握したうえで、柔軟にマーケティング施策を実施しましょう。
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