地方銀行の苦境は、経営者の責任 

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私も当初は、数か月辛抱すれば、今年の夏頃には元の状態に戻るのではないかと考えたが、今は、そのような考え方は完全に捨て去った。むしろ、新型コロナショック後の新しい混迷の時代がどのようなもので、そして、そのような中で各産業においてどのような事業機会の変化(拡張又は縮小)が生じるかを予め想像して行動することが重要だ。

 

 

地方銀行は、2019年3月期までの過去5年間でコア業務純益(本業のもうけを示す、一般企業の営業利益に近い)が縮小傾向をとなり、それに加えて2017年度以降信用コストの増加もみられるため、地方銀行の苦境は年々厳しい状況となっている。近時、各地の地方銀行の経営統合や再編が進んでいるのは、そうしたことが背景にある。

 

(金融庁令和1年8月「利用者を中心とした新時代のサービス~金融行政のこれまでの実践と今後の方針」参照)

 

 

マイナス金利の影響と経営責任

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このような状況となった大きな要因には人口減少等もあるが、直接的な要因は「マイナス金利」だ。金利がゼロからマイナスになったことにより、銀行預金による資金調達原価はゼロ以下にならない上、地方銀行は店舗などの維持に必要な諸経費の負担をしている。

 

その一方で、本業である融資の約定金利がゼロに向かって低下していくので、本業収益が減益傾向にある地方銀行は多い。その融資業務における利益の減少は、従来の考え方では、金利低下に伴う保有債券の価格上昇による売却益と、投資信託及び各種アドバイザリー手数料等による顧客向けサービス業務の収益で賄う必要がある。

 

しかしながら、前者(債権売却益)は将来的に持続できるような性質の収益ではない上、後者の顧客向けサービス業務は、収益が連続赤字になっている地方銀行が105行中45行(2018年度)も存在していることからも分かる通り、十分に利益を生み出している状況にはない。

 

「マイナス金利」は、日本銀行の政策に基づくものであり、これは、銀行にとって重要なルールの変更であることから、これによって事業利益が縮小すること自体は地方銀行の経営者にとってやむを得ない部分がある。

 

かといって、経済環境は常に変わりうるものであり、それにきちんと対応していくことが「経営」である以上、地方銀行がこのような苦境から脱出できずにいる場合には経営者の責任となる。

 

地方銀行のM&A仲介、コンサルなど顧客向けサービス 十分な売上確保は難しい

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①投資信託

 

個人顧客向けの投資信託などの販売手数料は、金融庁からも顧客本位の原則の徹底が求められる中、短期的な販売手数料の稼得ではない残高の積上げに伴う信託報酬の収受へ転換させる必要がある。よって、目先においてはその部分の減収の可能性はあるが、今後とも一定の収益を得られる重要な柱の一つであることは確かだ。 

 

②コンサルティング業務

 

次に、法人顧客向けの話だが、法人向けサービスであるコンサルティング業務を内製化する地方銀行も何行か存在している。しかしながら、顧客の利益を向上させるためのコンサルティングで十分な収益を上げようとするなら、事業性融資の延長線上でのノウハウでは難しく、それ相応のコンサルティングのノウハウと経験が必要だ。一部の先行している地方銀行を除き、短期的にはこれを地方銀行の人材だけでノウハウを高めることは難しい。

 

また、地方銀行は、通常において融資先企業に対するコンサルティングを行っているため、手数料単価の高いコンサルティング業務を行うことは顧客との関係上も難しい面がある。

このため、地方銀行にとってコンサルティング業務は重要であるが、コンサルティング業務だけで収益を上げることは容易ではない。後述するM&Aの仲介又はアドバイザリー業務や投資業務との連携の中で、顧客に対する提案力を身に付けるという位置づけでコンサルティング業務を捉えることが正解のように感じる。

 

③地銀によるM&Aアドバイザリー

 

事業承継を中心としたM&Aの仲介又はアドバイザリー業務は、案件発掘と相手先探しができる限り、コンサルティングに比して収益性は高い業務である。このため、当該業務には地方銀行の経営資源を投入すべきである。

ただし、後述するように、新型コロナショック後は、単なる事業承継によってM&Aの仲介を行うというよりは、事業再生を要する企業のM&A支援や、顧客企業の経営の安定のために業界再編支援等のニーズの増加が予想される。よって、単なるマッチングを行うだけの仲介ではない方式、即ち、顧客企業の企業価値向上のために行う片側当事者(売り手・買い手)に対するM&A助言業務(ファイナンシャル・アドバイザリー業務)への対応も必要となる。

 

労働集約型サービスの限界

 

以上が、顧客向けサービス業務についてのコメントだが、当該業務はあくまで手数料等を収受する方式のフロービジネスだ。それに基づく手数料収益は、労働集約的な工数に比例する部分が大きい。このため、預金量が数兆円にもなる地方銀行に必要な利益を稼ぐために十分なロットを稼ぐことは難しい面がある。

もし、このサービスを拡充するなら、人材の量と質の面での補強が必要となるが、全体的な地方における人口減少や景気動向を考えると、このような労働集約的なサービス人員を大きく増加させることは、地方銀行の戦略として非効率であり疑問が残る。

 

続く

 

㊦「戦略編」では、経営統合の可能性も含め、より実践的な生き残り戦略を検討します。

 

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