中国で拡大する高級品リユース市場の展望

拡大する中国消費市場の中、リユースに注目が集まっている。リユース市場のビジネスモデルの発展と課題について、ラグジュアリー(高級)品を中心に考える。

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2025年には世界最大の高級品市場予測

2025年には世界最大の高級品市場予測

コロナ禍からいち早く経済回復したと見られた2020年後半、筆者は中国ラグジュアリー市場について執筆した(「爆買い」渡航減少 中国国内で増加する高級ブランド販売)。 

中国のラグジュアリー品購買拡大の一因は海外渡航人口の増加であった。その後、ゼロコロナ政策により渡航者が減少する中、中国国内でのラグジュアリー品拡販に繋がり、オフラインのリアル店舗のみならずオンラインでの販売と、日用品のニューリテールと類似した消費形態へ広がっている。

中国国内消費額は2021年4,710億元(約9.4兆円)であり、この先5年のCAGR(年平均成長率)は13%、2025年には世界最大のラグジュアリー市場になると予測される(ベイン 2021年中国奢侈品市場報告より)。

高級品リユース 市場拡大へ高まる期待

高級品リユース 市場拡大へ高まる期待

日本語の「中古」は英語で「second-hand」 、中国語では「二手(ershou)」と言う。本文ではリユース市場とする。ラグジュアリーリユース品市場が成立したのは新しく、2001年香港のMilan Station(米蘭站)の開業からと言われる。元来存在していた個人取引から企業が参入し、ほかの商品同様に2010年前後からオンライン販売が始まった。

ラグジュアリーリユース品市場の2021年の市場規模は約200億元(約4,000億円)。2016-2020年の5年間平均CAGRは31.2%、2020年以降5年間のCAGRは15%と予想されている。しかし、中国のラグジュアリー品市場全体の5%前後であり、米国31%、日本28%、英国26%、フランス22%とは大きな差があり、市場拡大への期待がより高まっている。

政府もリユース推進計画

政府もリユース推進計画

2021年から始まった14期五ヵ年計画(十四五)の重大戦略の一つに循環経済の発展がある。資源の節約とリサイクルを主とし、環境保護、CO₂排出制限を目的としている。

この循環経済の発展項目に「二手商品市場基準」がある。ラグジュアリー品のみならず自動車、家電、スマホなどを含めて回収と販売の推進のため、①二手商品の鑑定、評価、分類基準の策定②EC+二手のビジネスモデルの推進③ECプラットフォームの管理責任、売買行為の管理監督強化による二手商品取引の効率化、の3点を提起している。

大黒屋、コメ兵 日本企業も相次ぎ進出

大黒屋、コメ兵 日本企業も相次ぎ進出

大黒屋、コメ兵が中国で会社を設立したのは2016-2017年であった。2017年時点でラグジュアリーリユース品市場は98億元(約1,960億円)であり、大小含め取り扱い企業数は3,100社あった。さらにこの年はECプラットフォーム企業 「寺庫」(SECO)が米国ナスダックに上場した年でもあり、従来の店舗型以上にECへの投資マネーが動いた時期であった。

その後も市場は拡大する中、両社は2021年までに北京の各合弁企業を清算した。合弁パートナーとの方向性、リアル店舗での運営面の課題、地域性などが推測されるが、両社とも中国からの撤退ではなく地域を移して独資として新たな活動に移行している。

大黒屋の2021年発表の5ヵ年計画では、新規事業の一つに「中国現地小売売上」があり、2022年3月期の24億円から2026年度には266億円とし、全売り上げの中国比率は54.6%と成長ドライバーとすることを示している(中国現地小売売上=中国現地小売売上とネット売上(自社越境EC)の合計値、出所:大黒屋ホールディングス株式会社HP)。

大黒屋の中国事業の取り組みは、①オンライン事業では日本からの越境EC=T-MALL、KAOLA(考拉海購)などとの提携、中国国内EC、ライブコマース=Taobao、TikTok、Kwai(快手)との提携 ②オフライン事業ではアリババグループによるニューリテール・スーパーチェーン「フ―マー(盒馬鮮生)」との提携による同店内店での商品買い取り、販売を中心としている。

プラットフォームへの投資熱続く

プラットフォームへの投資熱続く

ラグジュアリーリユース品プラットフォームの寺庫(SECO)、大手のTaobaoから分離された閑魚(Idle Fish)や転転(ZhuanZhuan)以外にも、同業プラットフォームへの投資熱は続いており、コロナ前後の各社の資金調達は下図の通りである。日本では知名度は高くない企業群となるが、ラグジュアリー以外のリユース品を取り扱うプラットフォームも含まれる。

ラグジュアリーリユース品ECプラットフォーム企業の資金調達状況

これだけ活況を呈している業界であるが、次にラグジュアリーリユース品のユーザー動向についてみてみる。

ヴィンテージの高級ブランド品が人気

ヴィンテージの高級ブランド品が人気

2022年の取り引き商品群をみると、革製バッグ類が58.6%、腕時計28.3%、衣類・靴・帽子8.2%、宝飾・アクセサリー4.7%の順となっている。

売買に参加している年齢層は16-25歳が54.8%、26-30歳が32.6%で全体の87.487.4%を占める。昨年までの別の資料を見ても30歳以下が過半数を占める。

地域別では華東地区が33% 華北19%、華南15%で、沿岸部や一線都市が中心。性別では男性比率が上昇傾向にあるが、女性63% 男性37%となっている。

ブランドを見ると、トップラグジュアリ―ブランドの選択が73-76%を占めた。新作は今年に入り値上がりがあったことから30%を超えているが、ヴィンテージとして以前販売された商品の購買者が大半となっている(優奢商学院 Idle Luxury Development Report for the first half of 2022ほか)。

また、オンラインでの購入比率は約25%となるが、Z世代(1996-2012年生まれ)では32%に上がる。さらに各プラットフォーム企業はKOLの起用でライブコマースの実施のほか、Tiktokや小紅薯(Red)との提携を行って集客を進めている。

ここから読み取れるユーザー動向は、値下がり率の低いヴィンテージのラグジュアリーブランド、バッグ類を好み、今後オンライン比率がほかの小売商品同様に上昇する傾向にあると考える。

目立つコピー品 求められる鑑定の効率化

目立つコピー品 求められる鑑定の効率化

市場拡大とともに購入時に品質保証を求める声は拡大しているが、販売企業側の対応で必要な点を挙げてみたい。

目立つのがコピー品の販売である。鑑定報告では正品率は33%前後とも言われ、オンライン、オフラインともにこの保証体制を構築するために、消費者からの買い取り時の鑑定と評価基準の明示が必要となる。

この点、大手の紅布林(Plum)などは数年前から鑑定士の養成以外に、政府機関の中国検験認証集団(CCIC、輸出入の商品検査機関)傘下の中検集団(中検中奢中心)との提携で鑑定精度、標準化を進めている。また、閑魚(Idle Fish)などは昨年来、AI鑑定を進めており、いずれも増加する商品の鑑定対応が販売量を左右することになる。

企業側は販売する上で商品在庫が必要となる。商品名が同じであってもリユース品の品質は必ずしも均一ではなく、消費者は明示された内容を確認・理解した上で購買に至る。

逆に商品をそろえても販売が進まなければ資金ショートを起こしやすいモデルであり、回転率も求められる。一般に30-45日以内の商品回転率が必要とされる中、企業側はどれだけ多くの商品提示ができるか、そして商品の販売効率を消費者にアピールする必要がある。

日本企業参入のカギは現地での商品調達と認知度

日本企業参入のカギは現地での商品調達と認知度

日本からは、正品のラグジュアリーリユース品の輸出がある。日本のリユース品販売企業であれば鑑定保証の商品輸出は可能であろうし、越境EC販売の方法は以前よりある。しかし、それほど成功しないのは量的な問題と、現地での認知度にあるのではないか。

また現地での輸入時の関税を含めたコスト増が現地との価格差を生んでいることも考えられる。中国での商品調達と販売が成功の大きな要因となる。

日本国内のラグジュアリー品購買額に比較してリユース品販売額が低いのは調達資源(消費者保有の退蔵品)が多いとも言える。買い取り価格の標準化だけでなく、日本での出張サービス(鑑定と集荷、決済)の活用は人材、費用面での課題となるなら、将来はAI鑑定と決済をオンラインで完了し、商品の集荷を行うことが求められる。

販売は配送も行える小規模多店舗化によりオンとオフ両面対応を実施する。多店舗化には集客が見込めるショッピングセンターなどとの協業は一策で、すでに発表、実施している大黒屋とフーマや、コメ兵とららぽーと上海の取り組みの動向は注目される。

まとめ

以上のことから、ラグジュアリーリユース品市場はZ世代を中心に拡大を続けており、価値が下がりにくいブランドや商品への購買志向が高いこと、さらに中国経済スローダウンからリユース品の売買がさらに進む可能性がある。コピー品への対応で海外からの輸入はあるが、継続性を考えると中国国内での調達方法の確立が求められるほか、O2O(Online to Offline)対応のためにAIを含めた鑑定のさらなる効率化が必要となっている。

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