株式会社と合同会社の違いは出資者(株主)

日本の会社法では株式会社・合同会社・合弁会社・合資会社の4つが規定されています。その中でも企業数が多いのが前者2つです。法務局の統計では、2018年時点で株式会社(本店)の総数は1,228,742社、合同会社(本店)の総数は68,300社でした。

会社の4種類についての詳細な解説は以下の記事をご覧ください。

関連記事:会社の事業形態は4種類。株式会社以外を設立するメリットは?

株式会社とは?経営者と出資者が分かれた会社形態

株式会社とは、経営者と出資者(株主)が分離した会社形態です。会社の経営方針を左右する重要事項の決定権は、出資者が開く株主総会にあります。

一方、代表取締役の選定などの会社業務に関わる問題は、取締役会が決定します。株式会社は現存する会社のおよそ9割を占めています。

合同会社とは?経営者が出資者でもある会社形態

合同会社は持分会社の一種で、経営者と出資者が分離してしない会社形態です。株主が出資者となる株式会社と違い、社員自身が出資者となるのが最大の特徴です。

2006年に施行された新会社法によって認められ、個人経営や家族経営の会社を中心に採用されています。

株式会社と合同会社のメリットをそれぞれ解説

続いて、株式会社と合同会社のメリットをそれぞれ解説します。

株式会社を設立する2つのメリット

認知度が高く対外的な信用を得やすい

株式会社は合同会社と比較すると社会的な信用度が高く、会社業務のうえで有利に働きます。

たとえば、取引先の信用を得やすいのがメリットです。顧客の新規獲得や、大手企業との取引で、歴史ある株式会社という形態が強みになります。

資金調達を行う手段が豊富

株式会社は、新株発行や投資家による株式購入、株式と交換可能な「新株予約権付社債(CB)」の発行など資金調達の手段が豊富です。

事業が成長すると、さらなるリターンを求めて株式上場も可能です。未上場の場合は、ベンチャーキャピタル(VC)など、ファンドの利用が考えられます。

合同会社を設立する3つのメリット

合同会社を設立するメリットは3つあります。

会社設立時のイニシャルコストが少ない

合同会社の設立コストは株式会社よりも少額です。会社の登記にかかる登録免許税は6万円~で、株式会社の半額以下で済みます。

また、合同会社は、定款を作成してから公証役場での定款認証が必は必要ありません。自己資金が乏しくても、スモールスタートが可能です。

会社組織を自由に編成できる

合同会社は社員総会を開き、会社の定款を変更すれば、会社組織を自由に編成できます。これを「定款自治」と呼びます。

株式会社では、取締役や監査役の選任に株主総会の承認を必要としますが、合同会社では出資者である社員自らが選任できます。また、取締役や監査役の任期もありません。

株式会社よりも会社の意思決定が早い

合同会社の最高意思決定機関は社員総会です。会社の経営方針にかかわる事柄でも、出資者である社員自らが決定できます。

株主総会が最高意思決定機関である株式会社と違い、財務管理や組織運営において、より迅速な意思決定が可能です。

ただし、重要事項を変更した場合、株式会社と同様に定款の変更が必要です。
株式会社と合同会社のデメリット
一方、株式会社、合同会社にはそれぞれデメリットも存在します。

株式会社を作る3つのデメリット

会社設立の際に数十万円の初期コストが必要

株式会社を新しく設立する際の初期コストに注意が必要です。会社を登記する際の登録免許税に15万円〜が必要になり、会社の定款を公証役場で認証してもらう手数料も5万円~かかります。

そのほか、定款の写しを作成する手数料や、会社の実印の作成費用をふくめると、初期コストの支払いのために数十万円ほどの自己資金を用意しなければなりません。

原則として利益配分は持ち株数によって決まる

株式会社では、会社が得た利益を自由に配分することができません。株式会社の場合、利益配分は出資者の拠出金の金額、すなわち株主の持ち株比率に応じて配分をしなければならないためです。

一方、合同会社は利益配分の制限がなく、出資額だけでなく会社への貢献や勤続年数などに応じ、自由に配分することが可能です。この利益配分の自由度は、株式会社と合同会社の大きな違いの1つです。

事業を運営するうえで法的な規制が多い

株式会社は様々な法的義務を負っています。会社の重要事項を決めるための株主総会の開催をはじめ、取締役会を開催する頻度や、運営方法についても会社法で、細かく定められています。

また、決算の際は株主をふくめたステークホルダーに向けて、官報などに報告を行う「公告」も必要です。合同会社と違い、会社法などの様々な規制に配慮しながら会社運営をする必要があります。

合同会社の2つのデメリット

合同会社のデメリットを紹介します。

株式を利用した資金調達ができない

合同会社は、株式会社と比較すると資金調達の選択肢が多くありません。

株式を利用した資金調達ができず、株の値上がりや株式上場のリターンを狙うファンドからの投資を受けることもできません。

合同会社の資金調達は、社員自らの出資を除くと、民間の銀行や政府系金融機関からの融資に頼ることになります。

社会的な信用度では株式会社に劣る

合同会社は2006年施行の新会社によって生まれた新しい会社形態です。そのため、会社全体の9割近くを占める株式会社と比べ、社会的な認知度がそれほど高くありません。

たとえば、合同会社の代表者は「代表社員」ですが、名刺を渡してもぴんとこない方もいます。顧客の新規獲得や、大手企業との取引において、長い歴史を持つ株式会社の方が信頼されやすい傾向にあります。

GAFAが合同会社を選択した理由は「パススルー課税」と柔軟で迅速な組織運営

世界を代表するIT企業であるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の日本法人は、Facebook社を除き、すべてが合同会社へ移行しています。

合同会社には先述したメリット以外にも本社がアメリカにある場合は、法人の利益が課税されず、構成員の所得のみが課税対象となる「パススルー課税」が利用可能です。

合同会社の最大のメリットの1つである、社員=出資者自らによる迅速な意思決定が可能な点もGAFAを惹き付けています。

株式会社と違い、出資比率(持ち株数)にかかわらず自由に利益配分を行えるため、柔軟かつ大胆な組織運営が可能です。

会社設立なら株式会社と合同会社のメリット・デメリットを比較検討

株式会社には、資金調達の容易さといったメリットがあります。

一方、合同会社はコスト面に優れ、組織運営の自由度が高く、経営方針を左右する重要事項も迅速に決定することが可能です。

参照
登記統計 商業・法人 年次 2018年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

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