会社の事業形態は4種類。株式会社以外を設立するメリットは?

現行の会社法では、新しく設立できる会社は企業全体の9割近くを占める「株式会社」と、それ以外の「持分会社」の2つです。 この持分会社は、さらに「合名会社」「合資会社」「合同会社」の3つに分かれるため、合計4種類の会社形態となります。 2006年までは「有限会社」という会社形態も存在しましたが、会社法改正によって、新しく有限会社を作ることは不可能になりました。 これらの会社形態の違いは、大きく分けて「設立時のコスト」「出資者の責任」「内部自治が許容範囲」の3点で整理できます。 この記事では、新規設立可能な4種類の会社形態について、特徴やメリットを比較しながら解説します。

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株式会社とは? 出資者と経営者が分離した会社形態

株式会社とは、出資者(株主)と経営者(取締役など)が分かれ、それぞれ独自の責任を持つ会社形態です。

出資者によって構成される株主総会は、会社の経営方針を左右する重要事項の決定権を持っています。

たとえば、多額の融資や借り入れ、会社の財産の処分・譲渡などを行いたい場合は、株主総会の承認を得なければなりません。

一方、経営者によって構成される取締役会は、会社の代表である代表取締役の選任など、会社業務に関わる問題の決定権を持っています。この仕組みを「所有と経営の分離」と呼びます。

株式会社は日本でもっとも設立数が多い会社形態です。国税庁による平成29年度「会社標本調査」によると、株式会社の単体法人数は、2,523,470社となっており、全体の93.7%を占めています。

株式会社は設立が高コストだが出資者のリスクは少ない

株式会社の特徴を「設立時のコスト」「出資者の責任」「内部自治の許容範囲」の3つの観点で見てみましょう。

まず、株式会社を新規設立するための費用は、一般的に数十万円~程度と他の会社形態よりも高額です。

コストの内訳は、登記するための登録免許税に最低15万円、公証役場で定款を認証する際の手数料に最低5万円、そのほか会社実印を作る費用に約7,000円、会社側で保管する定款の写し(謄本)の発行手数料に約2,000円かかります。

また、株式会社の出資者責任は「有限責任」です。万が一、会社が倒産しても出資額を限度にした資金は失いますが、それ以上の責任は負いません(社長が個人保証している場合はその限りではありません)。

そのため、出資者側のリスクが少なく、株式の購入を通じて広く出資を募ることが可能です。

一方、株式会社の内部自治は制限されています。たとえば、事業から得られた利益の配分や、株主総会における権限などは、持ち株比率(=出資比率)によって決定されます。

株式会社ではない持分会社とは? 経営者が同時に出資者でもある会社形態

持分会社とは、出資者と経営者が分離しておらず、経営者が同時に出資者でもある会社形態のことです。株式会社のような「所有と経営の分離」は存在しません。

持分会社に出資した人は、原則として会社業務に参画する必要があり、「社員」と呼ばれます。これは従業員としての社員ではなく、持分会社の出資者という意味です。

2006年施行の新会社法では、持分会社は「合名会社」「合資会社」「合同会社」の3種類にわかれます。いずれも「出資者が同時に経営者でもある」という原則は変わりませんが、それぞれ特徴があります。

合名会社は社員1名から設立できるが「無限責任」を負う

合名会社は、社員が自分だけでも設立できる持分会社です。かつて、合名会社を設立するには2名以上の出資者が必要でしたが、2006年施行の新会社法により、社員1名から設立できるようになりました。

また、設立の際の手続きが株式会社よりも少なく、設立費用も法務局で登記する際の登録免許税(6万円~)のみです。定款は作成しますが、公証役場での認証は必要ありません。

合名会社は内部自治の自由度が高いのも特徴です。たとえば、事業の利益の配分や経営に関する権限なども、あらかじめ定款に定めていれば、出資比率にかかわらず自由に決められます。

ただし、社員全員が「無限責任」を負うため、もし会社が倒産したらその債務についても責任を負わねばなりません。会社の借金を返せない場合は、個人の資産から返済しなければなりません。どちらかといえば、複数の個人事業主が集まり、互いに協力しながら運営するケースを想定した会社形態です。

合名会社の設立件数は非常に少なく、単体法人全体の0.1%程度しか存在しません。

合資会社は「無限責任社員」と「有限責任社員」から構成される

合資会社は、合名会社とよく似た会社形態ですが、1名以上の無限責任社員と1名以上の有限責任社員の合計2名で構成される必要があり、両方の社員がいなければ、合資会社を設立することができません。

有限責任社員の場合は、会社が倒産したら出資した割合に応じて責任が発生します。たとえば、会社の債務が合計150万円だった場合、会社設立の際に100万円を出資していたら、この100万円を返済しなくてはいけません。

一方、無限責任社員は、出資額に関係なく負債をすべて完済しなくてはいけません。

合資会社という形態を選択しているのは、少人数経営や家族経営の会社がほとんどです。前述の「会社標本調査」によると、3,813社で全体の0.6%となります。

合同会社は「有限責任」でスモールスタートが可能な会社形態

合同会社はアメリカのLLC(有限責任会社)をモデルにして、2006年の新会社法から設立可能になった会社形態です。

合名会社と同様に出資者1名から設立でき、なおかつ株式会社と同様に有限責任のみ負うため、現代のビジネスシーンに適した合理的な会社形態です。

設立費用は登録免許税(6万円~)のみで、出資者と経営者が同一であるため内部自治の自由度も高く、合名会社や合資会社のデメリットを解消し、メリットのみを併せ持っています。

合同会社は株式会社の次に設立件数が多く、単体法人数は82,745社で全体の3.1%となっています。[注1]世界的なIT企業のGAFA(Google, Amazon、Facebook、Apple)のうち、Facebook社を除く3社の日本法人が、株式会社から合同会社へ乗り換えており、新規設立数も年々増えています。スモールスタートがしたいベンチャー企業やスタートアップ企業を中心に採用されています。

関連記事:合同会社と株式会社の違いを解説。GAFAの日本法人はなぜ移行しているのか

会社の種類の違いを理解して、最適な会社形態を

株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の違いをまとめると、次の通りです。

株式会社 合名会社 合資会社 合同会社
資本金の最低額 1円以上 0円から 0円から 0円から
設立コスト 高い 安い 安い 安い
出資者の人数 発起設立なら1名から 1名から 2名(1名+1名)から 1名から
出資者の名称 株主 社員 社員 社員
出資者の責任 有限責任 無限責任 有限責任+無限責任 有限責任
最高意思決定機関 株主総会 社員総会 社員総会 社員総会
代表者の名称 代表取締役 代表社員(業務執行社員) 代表社員(業務執行社員) 代表社員(業務執行社員)
内部自治 出資比率に応じる 定款自治 定款自治 <定款自治

現行の新会社法では、あえて合名会社や合資会社を選ぶメリットは少ないです。株式会社と合同会社がスタンダードな会社の形態だと言えるでしょう。

参照
標本調査結果|国税庁

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