FSPとは

FSPとは「フリークエント・ショッパーズ・プログラム」の頭文字を取った名称です。フリークエントは「頻繁」、ショッパーズは「買い物客」という意味なので、FSPは「自店で頻繁に買い物をしてくれる優良顧客を優遇するプログラム(施策)」となります。

優良顧客をその他の一般顧客よりも優遇することで、自店に対する顧客からの信頼や愛着――すなわち「顧客ロイヤリティ」を高められます。顧客ロイヤリティが高まると、顧客はその後も継続的に自店を選んで買い物をしてくれるようになります。

具体的なFSP施策例

具体的にどのような施策がFSPになるのでしょうか。実は皆さんがよく利用する多くの店舗でFSPは導入されています。

例えばポイントカードもFSPの一種です。その店舗で何度も買い物をするとポイントがたまり、たまったポイントを使って割引やノベルティのプレゼントといった特典が受けられます。ポイントカードはもっともポピュラーなFSPといえるでしょう。昨今はポイントカードをアプリで提供している企業も増えています。

FSP導入のメリット

FSPを導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、「顧客の囲い込み」と「顧客情報の収集」という2つの視点でメリットを解説します。

「80:20の法則」で顧客を囲い込み、リピートを促す

イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した「パレートの法則」は、「ある事象の8割を生み出すのは全体を構成する2割である」という法則です。「80:20の法則」とも呼ばれます。

これをビジネスに置き換えると、「売上の8割は全顧客の2割が生み出している」ことになります。例えば100人の顧客がいて合計10,000円の売上があった場合、100人が100円ずつ支払っているわけではなく、400円を支払う20人と、25円しか支払わない80人に分かれるということです。もちろん、現実的にはこれほど明確に線引できるわけではなく、優良顧客と一般顧客の境界はグラデーションがありが、いずれにせよビジネスでは顧客によって生み出す売上に大きな偏りがあるのです。

では、事業者(店舗)側としては、80%の一般顧客と20%の優良顧客のどちらを優先すべきでしょうか。言うまでもなく20%の優良顧客です。この20%の顧客の満足度を上げることで、今後も自店のリピーターとして売上に貢献してくれるためです。

顧客情報の収集

もう一つのメリットは「顧客情報の収集」です。優良顧客がポイントカードやアプリを購入時に提示することにより、事業者は「どの顧客が何をいつどれくらい購入したのか」という情報を取得・蓄積できます。この購入データは今後のビジネスの展開を考える上で非常に重要な役割を果たします。また、顧客から商品について相談や質問があった場合、他の顧客の購買データを知っておくと適切なアドバイスが行えるでしょう。この顧客情報の収集を比較的低コストで行える点がFSPの優れた点です。

FSPを導入している事例

FSPを導入している事業者は数多く存在します。ここでは、その中でも代表的な3つの事例を紹介します。

楽天PointClubは4つのランクで特典を提供

FSPをもっとも効果的に活用している企業の代表ともいえるのが楽天です。楽天はECサイト、銀行、証券、電子書籍、旅行予約、キャッシュレス決済など多種多様なサービスを展開しており、それらすべてのサービスを会員制で提供しています。

楽天会員は楽天のサービスを利用することで楽天スーパーポイントをためることができ、たまったポイントはどのサービスでも利用が可能です。

さらに楽天は会員に4段階のランクを設けており、一定期間により多くポイントをためたユーザーに様々な特典を提供するなど優遇しています。まさにFSPの考え方です。

ランク最上位の「ダイヤモンド」になるためには、楽天カードを保有し、過去6ヶ月間に規定以上のポイントを貯める必要があるなど、厳しい条件が設定されています。その分、セールへの特別招待や誕生日ポイントの付与など多数の優待キャンペーンが用意されており、ヘビーユーザーをがっちりと囲い込んでいます。

また、これらの魅力的な優待キャンペーンを提示することで、ランクの低い会員に対しても「ランクを上げたい」と思わせる効果も期待できます。

三越伊勢丹グループのエムアイカードは購入額でポイント付与率変動

クレジットカードの最大の魅力ともいえるのが、買い物時に付与されるポイントです。三越伊勢丹グループが提供するクレジットカード「エムアイカード」は、通常の使用時にポイントが貯まるのはもちろん、三越伊勢丹グループ百貨店での買い物時はポイントが一気にアップする特典を提供しています。

例えばベーシックなエムアイカードプラスの場合、基本ポイントは0.5%ですが、三越伊勢丹グループ百貨店での買い物なら5%が還元されます。さらにユニークなのは、前年の年間買物額に応じて、ポイント付与率が変動すること。前年の購入額が30万円以上なら8%、100万円以上ならなんと10%ものポイント還元が受けられます。買い物するほどお得度が上がっていくFSPのお手本のような施策です。

ルーツはFFP(フリークエント・フライヤーズ・プログラム)

最後に少し違う視点での事例を紹介します。FSPのルーツともいえるのが、FFP(フリークエント・フライヤーズ・プログラム)です。搭乗距離に応じて「マイル」をため、たまったマイルをフライトやアップグレード、その他のサービスなどに使用できるという施策です。

世界初のFFPは、アメリカン航空が1981年に始めた「アドバンテージ・プログラム」でした。この施策の成功により、世界各国の航空会社はこぞってFFPに取り組むようになります。

現在、全日本空輸や日本航空でもFFPを実施しており、搭乗距離の多い上級会員にはラウンジの利用や座席のアップグレードといった特典を提供しています。FFPで優遇された顧客は、その後も同じ航空会社を使い続けてくれるため、航空会社にとっては提供する特典以上の見返りがあるのです。

FSPの購買データを活用、LTV最大化

FSPには「顧客情報の収集」というメリットがあることを前段でお伝えしました。では具体的に得られたデータをどのように活用すればいいのでしょうか。ここではFSPによるデータ活用について解説します。

「RFM分析」でデータを分析

FSPで得られるデータの中で、Recency(最新購入日)やFrequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3種類を用いて行うのが「RFM分析」です。これらのデータを顧客ごとに見ていくことで、顧客の特性を分析できます。

顧客の特性に応じたアプローチを行うことで、売上を効率的に伸ばせるでしょう。

分析結果から最適のアプローチを

顧客に応じた最適なアプローチとはどのようなものでしょうか。一例を挙げます。

例えば「最新購入日が近く、購入頻度も高く、購入金額も多い顧客」は、文句なしに優良顧客といえるでしょう。この層に対しては、先行販売の案内を送るなど特別扱いすることで、さらなる購買につなげられるでしょう。

一方で、最新購入日が1年以上など長期間購入に至っていない顧客は「休眠顧客」と分析できます。購入頻度や購入金額が大きかったのに休眠してしまっている顧客については、メルマガ等でアプローチすることで再び優良顧客になってくれることもあります。

このように、顧客の情報からその心理や行動を分析し、適切なアプローチを行うことが重要です。

FPSはデータ分析が重要

価値観が多様化し、ビジネスのスピードが加速している現代では、しっかりと顧客一人ひとりを見極めてロイヤリティを醸成することが重要です。どうすれば優良顧客になってくれるのかを考え、囲い込みを行わなければなりません。

優良顧客を優遇するFSPは囲い込みに有効な施策ではありますが、しっかりとデータを分析して戦略的に取り組まなければ、単なる割引システムになってしまう可能性もあります。

FSPから得られた情報を分析し、仮説を立てて顧客の行動を読み解くことが大切なのです。

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