遅れてとどいた決算、見えない今期の見通し

電機大手8社(日立製作所、東芝、三菱電機、富士通、パナソニック、シャープ、ソニー、キヤノン)の決算は、コロナ問題の影響もあって通常より遅い4月末~6月初旬にかけ発表された。

2020年度業績予想に関して、明確な数値を出したのは、8社中3社(日立製作所、東芝、三菱電機)にとどまる。3社はコロナの影響に一定の前提を置いて発表したが、その前提自体が不確実性が高く、実際に短期業績を正確に予測するのは困難だ。

一方、Withコロナの経営環境下、現行の中期計画に関して、経営の方向性やのスタンスに対するコメントは、中期計画や経営方針に対するコメントを聞くに、基本変わっていない。

時間軸的にコロナの短期的影響や対策が優先されることは納得できるが、秋以降の経営方針や今後新規作成・修正が行われる中期計画には、メガトレンド・環境認識を再定義した上での戦略を策定し、ステークホルダーと共有していく必要があるだろう。

規模縮小の中、営業利益率は改善

リーマン・ショック前の2007年度電機大手8社の業績は、売上高54兆円強・営業利益3兆円弱(営業利益率5.5%)・EBITDA6.2兆円(EBITDAマージン11.5%)・自己資本16.5兆円・ネットデット2.2兆円・従業員数150万人・時価総額24.7兆円(2008年3月末)だった。
これに対し、2019年度は、売上高42兆円強・営業利益2.6兆円(営業利益率6.2%)・EBITDA4.8兆円(EBITDAマージン11.5%)・自己資本16.9兆円・ネットデット1.8兆円・従業員数132万人・時価総額26.4兆円(2020年3月末)、である。
過去12年間で売上高▲12兆円・営業利益▲3700億円・EBITDA▲1兆3600億円・従業員数▲17.7万人と、大きく減少する一方、営業利益率は0.7%ポイント上昇し、ネットデットは4000億円弱減少・時価総額は1.7兆円増加した。

この期間、特に2012年度までは、明らかな構造改革ステージだった。不採算事業の撤退や人員削減、設備投資抑制などが業績などの絶対額のマイナスに影響。その後、経営効率の改善がなされ、ようやくリーマンショック前の姿に戻ったのが2018-2019年度の姿といえる。

ただし、2018→2019年度は国内外の経済環境変化に加え、期末にかけてのコロナ影響が加わり、減収減益となっている。

コロナで二極化する業績

コロナ問題の影響で成長する領域は、デジタル化・ネットワーク化がB2B・B2C市場両方で加速し、不足するインフラの整備(5Gインフラやデータセンターなど)と新しいインターフェイスの普及拡大(エッジ・コンピューティングパワーの増強、メモリ容量拡大、VR/ARなど)、さらに収益獲得機会のサブスクリクション化、サービス領域におけるエコシステムの形成(金融、EC、コンテンツ提供、他)などが挙げられる。
未だ時間軸を含め明白ではないものの、上記のコンセンサスが形成されつつある。

こうした環境変化の想定を前提に、米国・中国などのネットワーク・ジャイアントと言われる企業群のうち多くは、株価上でコロナ前の水準を既に上回っている。

一方、オールドファッション化したといわれる金融・自動車・素材などは、業績的にも株価的にも厳しい状況で業績以上に二極分化が起こっている。

Withコロナと言われる事業環境下、大手8社の2020/1-3月期や短期収益の状況を見ると、コロナ影響以外のインパクトを含め、最も厳しいのが自動車・エレクトロニクスの部品・デバイス関連事業が大きい企業。またMFPなどオフィスでの従来型機器やそれをベースとしたビジネスや製造設備関連を主力とする会社も厳しい。

一方で新たなネットワーク社会を形成するためのインフラやそのサービスを行う会社は好調で、サブスクリプションを含むネットワークサービス事業も好調だ。各社とも事業ポートフォリオ転換影響が一定規模あるため表面上の数字で判断が難しいものの、現時点で8社のWithコロナにおける中長期成長ポテンシャルが高いとは言えない。

縮小均衡に陥らないために

現状が続けば、さらに企業間格差が拡大するが、全体としてはリーマン・ショック後の12年と同様、「事業は縮小均衡で収益性はリストラ等固定費削減でやや上昇」という結果に終わりかねない。
事業としては、本質的な成長や収益獲得機会から見てポテンシャルの高い、Withコロナ時代におけるネットワークインフラ構築、先端的インターフェイスを支えるデバイスとインターフェイス、コンテンツ創造、サブスクリプション型サービス、などへ移管。またメガトレンドから見ても、脱日本・脱製造業を加速して進めていく必要があるのではないか。

まとめ

新たな経営環境における自社ポジションの明白化を進め、成長領域への資源集中や収益獲得機会の転換などの経営方針・成長戦略を論理的に構築し、多くのステークホルダーとの共有をいち早く行う企業が、次の成長機会を手にする可能性が高いと考える。

関連記事

国による「中小企業いじめ」の社会的リスク

菅政権のブレーンとして中小企業の淘汰・再編を指摘するデービッド・アトキンソン氏。彼の出身である英国の中小企業事情を調べてみた。英国では、日本以上に中小企業数が多く、企業数の増加も続いている。米国と中国を除けば、日本は中小企業数が極端に多いわけではない。中小企業の淘汰・再編にフォーカスする経済政策が本当にマクロ経済の復活につながるのだろうか。

EVは本当に最適か?② ガソリン車はなくなるのか 次世代燃料「e-fuel」とは

日本の自動車産業にとって、EVは最適な手段なのであろうか。第2回では、次世代燃料「e-fuel」について紹介するとともに、それが将来のHEV(ハイブリッド車)とBEV(外部充電式電気自動車)の販売シェアに及ぼす影響などについて考察する。

任天堂は、新たな黄金期到来か?「サイクル」のピークか? 新体制下での最高益更新

任天堂はGW明けの2021年5月6日、過去最高益となる2021/3期決算を発表した。Wiiが大ヒットしていた2008/3期以来13年ぶりの更新となり、現在時価総額は8兆円を超えた。コロナ禍の「巣ごもり」による追い風はあったものの、40代で老舗企業を率いる古川俊太郎社長の下、若い力とシニア世代の力を融合させたガバナンス例として注目される。任天堂の好調は循環的な「波」によるものか、新たな成長トレンド入りなのか、検証した。

ランキング記事

1

プロスポーツチームの戦略オプション コロナ禍でとるべき選択とは

近年、国内においてサッカー、野球、バスケットボールを中心に各種競技でプロスポーツチームが多数誕生しており、スポーツ市場は拡大傾向にある。一方、経営状況が厳しいチームが多く、組織の維持・発展に向けては、地域・チーム特性を活かした独自戦略の構築が求められている。

2

中国で「食品ロス削減令」 農業振興の必要性高まる

農業国から先進国=工業国へ発展を進めてきた中国が、大食いや食料ロスを規制するとともに、農業拡大を強調している。背景には、都市化率上昇と共に、中国の食料課題が、世界にも大きな影響を与えている事情がある。

3

マスクの基準ない国、日本 JIS規格採用で生活の「質」改善を

マスク着用は、「生活習慣」として定着した。COVID-19(新型コロナウイルス)感染症の拡大から約1年半、性能や品質に基準のなかった日本で、業界団体によりJIS規格導入の動きが進む。本稿ではマスクの機能的な進化と課題、今後の方向性について考察した。

4

破壊的イノベーションと持続的イノベーションの違いは?メリットや事例を解説

破壊的イノベーションとは、既存事業のルールを破壊し、業界構造を劇的に変化させるイノベーションモデルです。 この概念は、ハーバード・ビジネススクールの教授であった故クレイトン・クリステンセン氏の著書『イノベーションのジレンマ』で提唱されました。それ以降、飽和状態となりつつある市場に必要なイノベーションとして注目されています。 本稿では、破壊的イノベーションの理論や企業の実践例から、破壊的イノベーションを起こすために必要となる戦略までを解説します。

5

任天堂は、新たな黄金期到来か?「サイクル」のピークか? 新体制下での最高益更新

任天堂はGW明けの2021年5月6日、過去最高益となる2021/3期決算を発表した。Wiiが大ヒットしていた2008/3期以来13年ぶりの更新となり、現在時価総額は8兆円を超えた。コロナ禍の「巣ごもり」による追い風はあったものの、40代で老舗企業を率いる古川俊太郎社長の下、若い力とシニア世代の力を融合させたガバナンス例として注目される。任天堂の好調は循環的な「波」によるものか、新たな成長トレンド入りなのか、検証した。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中