変革のための人材を育てよ

変革のための人材を育てよ

フロンティア・マネジメント 大西正一郎代表取締役(以下、大西)
コロナ禍でビジネスモデルを変革しなければならない、という会社が増えています。変革のためには、やはり変革のための人材をどうつくるか、という事が重要だと思います。

我々コンサルタントがお手伝いすることもありますが、重要なのは各企業において、しっかりとした経営者人材を育成し、その人が企業を変えていく、これがやはり理想だと思います。

スコラ・コンサルトさんは「プロセスデザイン」という独自の手法で企業の風土改革、それを通じた企業価値向上をずっと務められてきた会社です。

我々フロンティア・マネジメントは2月9日にスコラさんと業務提携をしまして、まさにその、次世代の人材育成を今後の1つの柱としてやっていきたいという思いから、今日の対談を企画いたしました。

スコラ・コンサルト 柴田昌治(以下、柴田)
変革のための人材を育てよ

スコラ・コンサルトは、最近盛んに言われるようになってきている「組織開発」を、30年以上も前からやっています。

私たちが大事にしているのは「日本オリジナル」ということ。組織開発というのは国によってやっていることが、全くといっていいほど違うんです。海外のものを単純に輸入しても、日本ではほとんど効果がない。そう考えて、日本で実績を積み重ねてきたことの意味は、非常に大きいのではないかと思っています。

大西:我々のフロンティア・マネジメントは「コンサルティング」「M&A」「企業再生」と、どちらかというと既に顕在化した課題をどう解決していくか、というところを得意として参りました。

スコラさんのように、経営課題を企業自身で見つけていくのをお手伝いしていく。こういうアプローチを我々はやったことが無かったんです。

そのため、スコラさんとタッグを組んで頑張りたいと思っています。

社会の変化と変われない大企業

社会の変化と変われない大企業

大西:どうして変革のための人材が必要かというと、やはり世の中が変化している、というのがあります。

コロナが、働き方や、人々の行動を変えている。いわゆるDX、AI、IT、自動化。企業としてそういったものを駆使して、グローバルに戦っていくことが求められてきている。

環境分野においても「2050年カーボンゼロ」を菅首相が宣言されました。

世界の脱炭素の動きに、企業として従っていかなくてはいけない。

経営環境の変化によって、企業の行動を変革せざるを得ない状況だと思います。

そこで、変革しようと思ってすぐ変革できますか?というとこれなかなか難しい。

特に企業は、過去の成功モデルがあって、その中で組織も縦系列で分かれている。

そういう状況で臨機応変に、環境の変化に応じた企業の変革ができていないという声を聞くことが多いです。

企業の変革を促進するには、今の経営陣にプラスして、変革の価値観を持った次代の経営人材を育てていく、こういったことが非常に重要ですね。

経営者育成のニーズは?

経営者育成のニーズは?

柴田:いろいろな経営課題を持つ経営者の方とお仕事をされる中で、実際に、次世代の経営者育成のニーズを感じている経営者の割合は、どれくらいだと思われますか?

大西:育成は短期的にはできないので、中長期的にやっていかなくちゃいけない。感覚的には経営者の8割以上が、次世代の経営者育成に課題感を持たれているような気がします。

社会の変化と変われない大企業

柴田:次世代経営者の育成に関する悩みについて、もう少し具体的に聞かせていただけますか?

大西:1つは、ある程度大手の企業さんだと社員教育は皆さんやられていらっしゃいますが、きっちり人材を育成していくところまでやるのは難しい。

もう1つは、例えば営業の専門家であれば営業に長けていく一方で、財務とか経営の計数の知識が抜けていたりする。人事は、バランスよくローテーションしていかなくてはいけません。

「専門性」と「ゼネラル」(総合的)な力を、どういうバランスで身に付けさせるのか、迷っている企業さんも多いです。

求められる経営者像

求められる経営者像

大西:求められる経営者像について、お聞かせください。

柴田:日本企業の中では、なかなか自然には経営者が育ってこない。「縦割り組織」ですから、自分の担当する部署、経験の範囲に関しては強いのですが、その外側にはアンテナが立っていないことが多いですね。

一つは、自分の担当する範囲以外にもアンテナを立て、広い視野で全体を見られる人材であることが大事です。

もう一つは、ビジネスに必要な知識や情報、経営技術をもつ外部の専門家を活用する能力を持っていることでしょうか。

今は、企業が従来のビジネスモデルの大変革を迫られている時期です。自分たちだけで本当の意味での「答え」を見つけるのは困難な環境下では、自分たちにない情報、知識、経験を持つ人材、外部の経営技術を持った人たちの力を有効に活用することが大事になってきます。

でも、そういうこと(外部人材の活用)を全く経験していないと、最終的に決断するのは自分であっても、理解が追いつかなくてお任せ状態になってしまいます。ですから、「外部の経営人材、経営技術を持った人材とその情報をうまく活用できる人材」を育てることが非常に重要だと思います。

大西:広い視野を持った人材は大事だと思うのですが、一方で専門チームがそれぞれのことを極めていくというのが大事とも思います。

視野の広い人間を、具体的にどうやって育てていくのがいいのか教えていただけますか?

柴田:我々が長年お付き合いしている売上百数十億の企業では、開発部門のトップに技術系ではない人を充てるなどして、人材の流動性を高めていました。さらに最近では、各部門に「本部長」を置かないことにして、役員全員が「経営チーム」として本部長の役割を担うという体制に変えています。それぞれの部門にいるのは、実務判断をする副本部長だけです。

このようにして、縦割り組織の壁を越え、広い視野での経験を積み重ねていくことが、社長を本当の意味でサポートするチームづくりに繋がっています。

縦割り組織の問題点

縦割り組織の問題点

大西:縦割り組織自体は、効率性を追求する意味では悪いわけではないんです。でも、人材をうまくローテーションして育てていく、体系的な人事制度をとっている起業は、多くないです。

また、マネージャーと(変革の)リーダーの違いも、よく言われることはありますね。

例えば今までの成功モデルをベースに計画を立ててそれを実行していって、いわゆるPDCAを回していく、こういう人っていうのは普通の組織で育ってマネジメント経験を積んでいく。こういう方はたくさんいらっしゃる。

しかし、変革のリーダー育成のため、30代後半、40代ぐらいのエース級の人間を、新規事業の責任者として経験を積ませる。子会社の社長として経験を積むなど、そういう人事の配置をしている企業は必ずしも多くない。企業に変革していくリーダーを作る経験値が少ないのが問題ではないでしょうか。

柴田:そうですね。「管理職」の延長線上で、「役員」になる人が多いように思います。

ビジネスモデルが安定していた時代はそれでよかったのかもしれませんが、これからは、事業の新陳代謝が企業の命運を左右する時代です。いろいろな専門家と協力しつつ自ら決断していく、管理職の延長線上ではない役員が必要だと考えています。

大西:次世代経営者の育成に必要な、重要なポイントはありますか?

柴田:言い古されたことですが「考える力を持つ」ということですね。

私は教育の専門家ですが、日本の教育で一番問題なのは「答えが一つ」であること。そこに求められるのは、正解を選び出す能力です。だから、公教育では「答えが一つではない問いと向き合って考える」ことをほとんどしてこなかったんですね。欧米の教育では、そういうことを徹底的にやっている。

この違いは非常に大きいと思います。本質的に考える力が育ってないことが、経営者育成においても大きな障害になっていると感じます。

「閉じる場」「開く場」

「閉じる場」「開く場」

柴田:私は、“答えが一つ”の正解を求める場を「閉じる場」。“答えが一つではない“問いと向き合う場を「開く場」と言っています。大事なのは、「開く場」をできるだけ多く体験することなんです。

でも、日本では、すぐに答えが出てこないような問いに向き合って考えることを「時間の無駄」だと思ってしまう。考えることこそが大事だという基本認識が欠けていることが大きな問題だと思っています。

大西:企業の中で、「開く場」を意識的に設けて経営人材を育てる、具体的なアイディアがあれば是非教えてください。

柴田様イメージ

柴田:例えば、「社員満足度を調査する」というテーマがあるとします。通常は、そのためのチームが作られ、「いかにすれば社員満足が調査できるか」ということから考え始めるわけです。

でも、必要なのは、「そもそも社員満足とは何か」というところから考えてみることです。
私が長い間おつき合いしている会社では、そういう「そもそも」みたいなことを、調査前にチームで2年間も議論していました。

中心になるメンバーが社長に「申し訳ありません。こんなに時間をかけて」と報告したら、社長は「それが大事なんですよ。それが必要なんです」と言っていました。

もう10年以上前の話ですが、当時30代半ばぐらいのいろんな部署から来ている人たちがそうやって育ち、50代になった今では、部長や役員になっています。

かつては本当に縦割りの会社だったのですが、今は協力して仕事をするのが当たり前の文化になっている。

本質的なことを話し合うのが当たり前になっている環境が、お互いの信頼関係、協力関係を作り、同時に「考える力」を身につけることにも繋がっています。

大西:私の場合、企業再生が本格的にスタートする際、「そもそも再生って何?」「この企業は何のためにあるんですか?」とか、そういう本質的な価値についてディスカッションします。

プロジェクトの中でお互いを知る。何をやりたいか、その場で結論が出るかどうかは別として、非常に重要だなと思ったことがありました。

柴田:企業再生の業務に携わることは、正解がはっきりしない問いと向き合う非常にシビアな経験です。考える力が引き出され、ものすごく成長するチャンスになると私は思いますね。

プロセスデザインの手法について

プロセスデザインの手法について

大西:スコラ・コンサルトさんがやられているプロセスデザインという手法が、経営者育成にどういう有効性があるのか教えていただきたいなと思います。

柴田:一言でいうのは難しいですが、自分事として主体的に考えて、仮説を作りながら試行錯誤を繰り返す、そういう経験が身につくことかなと。「上」から提示された答えは正解になり、受け取る側はどうしても受身的になる。そうではなく、「これは仮説です、一緒に考えていきましょう」というプロセスの中でこそ、みんなの思考は活発になるし、積極的に参加する人が多くなる。

おそらく、そういうことは企業再生の仕事の中でも経験されていると思います。

大西:企業再生の場合、危機感が顕在化しているケースです。「みんなこのままじゃいけないよね」と、危機感によってディスカッションが進んだり、エネルギーが湧いてくる。それが再生の必勝パターンなんです。

でも、そこまで至ってない企業。長期的な、潜在的な危機感をベースに変革をしていくのは結構難しいかと思うんです。

柴田:30年くらい前にこの仕事を始めた頃は、危機的な状況に陥っている企業さんが多かったですね。

それが2000年ぐらいからでしょうか、業績は非常に良くても、現状に問題意識を持っている部門のトップや経営者の方が相談に来られることが増えました。

大きな企業だと、言われた仕事はこなすけども、会社にはものを言ってもしょうがない、どうせ変わらないから、と「あきらめている」人が圧倒的に多い。潜在的危機といえる状況です。

その「あきらめ感」を払しょくし、「当事者」になれるような環境を作る。

「当事者」として、自分でミッションを持って動く人を評価することによって、その比率を増やしていく。そうではない「あきらめ人材」も与えられた職務はきちんとこなしますから、企業としては回っていくんです。

これが中小企業で、問題意識を持って発意発言する人が必要だというニーズを経営トップが持っている場合は、めざましい変化を見せる。

大企業だと、部分的には変化するのですが、トップとその周辺の変化が条件になるために、企業全体の変化となると容易ではない、というのが実感です。

今回の提携の意図

今回の提携の意図

大西:次世代経営者人材の育成支援事業というのをスコラさんと一緒にやりたいということを冒頭でも言いましたが、コンサルのやるような事を、会社の中の経営人材の方が自らできるというのが理想だと思うんですよね。

我々がやるような経営分析だったりロジカルな考え方だったりを、風土として根付かせることが大事なのかなともいます。

変革型リーダーがいろんなところに出て、環境変化が起こっても、自らどんどん変化していく企業になる、これがやっぱり理想なのかな、と思います。

例えば人材育成のプログラムをスコラさんと共同で考案しているところですが、それをベースに、例えば依頼を受けたときに依頼を受けた企業さんの経営課題を会社の人間がまさにコンサルティングのメンバーと同じように討議しながら解決していく。当然その前提として、スコラさんがやられているようにお互いに「開く場」を設けて、自分の価値観をぶつけ合う場を作り、経営者人材を育成する。

そんなお仕事を一緒にできたらいいなあ、というふうに考えています。

柴田:私はもともと、働く喜びと業績の両立をしたい、という思いでこの仕事を始めました。

日本の現状は、生産性が非常に低い。本来はもっと生産性を高めていく必要があると思います。

そのためにも重要なのは、経営者人材の育成です。フロンティア・マネジメントさんがお持ちの多様な情報やノウハウがもっと企業経営に生かされていくような、そういう環境を一緒に作れたらと思っています。

第1回目のまとめ

  • 多くの日本企業がビジネスモデルの転換を求められており、そこでは経営者(リーダー)の果たす役割が大きい
  • 優秀な管理職と、経営者では、求められる能力が異なる
  • 縦割りが浸透した日本の大組織では、経営人材は自然には育たない
  • 「意図された経営人材を育てる場」が必要
  • 「開く場」を通じて「正解のない問い」と向き合う機会を提供することが重要

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