D2Cとは?

D2C(Direct to Consumer)とは、自社で企画・製造した商品を、従来の流通ルートである商社や業者を介さず、消費者に直接販売する手法です。

最大の特徴は、デジタルを最大限活用し、情報発信、広告、顧客獲得・管理から購入まで、すべてウェブ上で完結する点にあります。

そこで主戦場になるのが、SNSを活用したデジタルマーケティングです。

TwitterやInstagramなどを通して消費者に対し、商品の世界観をダイレクトにアピールしたり、コミュニケーションを重ねたりして、ブランドロイヤリティを高めるのです。

ブランドロイヤリティとは、消費者のブランドに対する愛着を意味します。

消費者とのコミュニケーションにより、大量生産・販売を前提としたマスマーケティングでは拾えないニッチなニーズの収集も可能になるため、嗜好の多様化・細分化が進む消費者ニーズを捉えられます。

また近年では、収集した顧客データを軸に、期間限定のポップアップストアやフラッグシップストアなど、実店舗を展開するD2Cブランドも増加しています。

D2Cが生まれた背景

D2Cが生まれた背景には、市場における2つの変化があります。

SNSユーザーの急激な増加
ひとつは、2014年頃の「スマホシフト」により、消費者の情報との接点がウェブ上のメディアやSNSに変化したことです。

特に、主要なSNSのユーザー数は飛躍的に成長しており、情報収集や、コミュニケーションの主軸を担っているといっても過言ではありません。

このように、消費者行動においてデジタルが前提になりつつあることが、D2Cブランドの広まりを後押ししました。

情緒的価値の向上
もうひとつの変化は、消費者が商品に対して、「機能的価値」よりも「情緒的価値」を求めるようになったことです。

「情緒的価値」とは、商品によって得られる感覚や感情のことを意味します。

市場に商品が溢れ、機能や価格の平準化が起こったことで、消費者は、商品やサービスの背景や作り手の熱量に注目するようになったのです。

これにあわせて、機能性の高い商品やトレンド商品を効率良く配給するのではなく、ストーリーや顧客体験を重要視するビジネスモデルとして、D2Cが登場しました。

D2Cのメリット

D2のメリットとしては、次の3つが挙げられます。

メリット①:ブランドロイヤリティの強化

上述の通り、D2Cは業者を介さず商品企画・製造・販売をすべて自社行うため、顧客と直接対話する機会が増えます。

SNSでの宣伝から問い合わせへのオペレーション、発送中のやりとりなどを通して、商品のストーリーやビジョン、作り手の熱量を伝えやすく、ブランドロイヤリティを高めることができます。

メリット②:顧客データの収集

SNSやEコマースを利用して宣伝・販売を自ら行うため、顧客の年齢・性別・職業・趣味など、細分化した顧客データの収集が可能です。

メリット③:商品・サービスのパーソナライズ

収集した顧客データから、顧客一人ひとりの属性や購買・行動履歴に合わせたサービス・商品の提供が可能です。

顧客が望む情報や商品を先回りして提供できるため、購買意欲を高められます。

関連記事:「パーソナライゼーションとは?顧客一人ひとりに最適化マーケティング手法」

D2Cの市場規模

D2Cが活発なのアメリカでは、D2Cブランドのユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場で、設立10年以内のベンチャー企業)が次々と誕生しています。

しかしその市場規模については、次の2つの理由により、今のところ正確な統計データが存在しません。

  • 登場から日が浅く新しいビジネスモデルである
  • どこまでをD2Cと定義し計測するかの線引きが難しい

国内に目を向けると、日本のEC業界は急速な成長を続け、市場規模は、2010年の7兆7,880億円から、2018年には17 兆 9,845 億円となりました。[注1]

市場規模が拡大するEC業界のなかで、既存のECからD2Cに移行する企業も増加しています。

D2Cというビジネルモデルが成熟していく過程を見守りつつ、今度の動きに注目しましょう。

国内外のD2Cの事例

ここでは、国内外のD2C成功事例をご紹介します。

Warby Parker(ワービー・パーカー)

Warby Parker は、JAND Inc.の運営するD2Cアイウェアブランドです。

Warby Parkerは、2015年、アメリカのメディアFast Company発表の「世界で最もイノベーティブな50社」に選ばれ、GoogleやAppleといった世界的トップ企業を抑え1位の評価を獲得しました。[注2]

  • 社内にデザイナーを抱える
  • 仲介業者の排除
  • 実店舗を持たずオンラインのみで販売をスタート

といった手法で、高品質なメガネを当時の相場のおよそ1/4、95ドルというロープライスで提供しました。

同社は、SNSを活用したブランド戦略で、3週間で初年度の年間販売目標を達成し、4週間後には20,000人の待機顧客を作ったのです。

また、「見る権利は全ての人にある」というミッションのもと、メガネを購入するごとに発展途上国に寄付されるという仕組みは、顧客のロイヤリティを向上させている一因でしょう。

CoCo Gourmet(ココグルメ)

「ペットは家族」という価値観が浸透し、ペットの健康面を考慮したドッグフードの需要が高まっています。

株式会社バイオフィリアは、このようなニーズを受け、獣医監修の手作りドッグフードを提供するサービス「CoCo Gourmet(ココグルメ)」を展開しています。[注3]

1箱1.6kg(3kgの小型犬で約10日分)のフードが冷凍状態で定期配送されるサブスクモデルが好評で、販売開始から2ヵ月で5万食を完売しました。

徹底した品質管理にこだわり、レシピ改善や販売方法のマイナーチェンジを繰り返すなど、顧客の声を細部まで汲み取る姿勢がブランドロイヤリティを高めています。

消費者ニーズにうまく対応したD2Cの好事例といえるでしょう。

Factelier(ファクトリエ)

Factelierは、「職人の情熱とこだわりがつまった語れる商品を適正価格で」というブランドコンセプトを掲げる、D2Cアパレルブランドです。

工場と消費者を直接結びつけることで、店舗を持たず、中間マージンを徹底的にカット。高品質な商品を一般流通価格より低価格で提供できる仕組みを実現しています。

Factelierでは、経費削減のため、広告宣伝などを一切行っていません。

しかし、ブランドの信念と高品質な日本製商品にこだわる強い姿勢が、顧客のロイヤリティを高め、ブランドのファンを増やしています。

結果として、創業4年で年商10億円を達成しており、この数字からも、ブランドストーリーに共感するファンの増加が伺えます。[注4]

これからのD2C戦略

新型コロナウイルス感染症の影響で、企業やブランドにとって、顧客との関係構築は今まで以上に重要になりました。

また、デジタルへの移行が喫緊の課題になり、D2Cの考え方を導入する企業も増えてくるでしょう。

アフターコロナにおけるD2C戦略においては、次の2点が重要です。

D2CにおけるOEMやODM

D2Cにおいて、重要な戦略のひとつとしてOEM/ODMの活用があります。

OEMやODMとは、製品の生産や製造、ときには企画・設計の段階から外部に委託する仕組みのことです。

これまで、米国企業を中心とした世界のOEM・ODMトレンドといえば、中国の深センでした。

しかし、中国から拡大したコロナウィルス騒動により、深センをはじめ中国各地に移動制限やサプライチェーンの供給制約が敷かれ、製造工場がストップ。

規制緩和後も、長期間にわたり大きな影響を与えています。

新型コロナウイルスとの共存が求められるコロナ時代には、不測の事態にも最低限の部品調達や商品供給ができる体制への切り替えが求められます。

生産拠点としての中国依存を脱却し、国内生産を増加させることや、新たな生産拠点の開拓などが必要です。

関連記事:「OEMとODMの違いとは?それぞれのメリット・デメリットや契約時の注意点を解説」

コロナ時代のブランド設計

コロナの影響で、人々の価値観やライフスタイルが急激に変化しつつあります。

したがって、既存のビジネスを拡張するだけのD2C化では、成功を得るのは難しいでしょう。

アフターコロナのD2Cビジネスにおいて重要なのは、徹底的に生活者視点に立ったブランド設計です。

企業側が生活者の立場、または仲間になり、今生活者に何が起きているか、何を求めているかを繊細に汲み取り、生活者が感動・共感するサービス・商品の提供が求められます。

D2Cを単なる販売方法と捉えるのではなく、ブランドの価値観をより真摯に伝える手法であると考えると良いかもしれません。

Frontier Eyes Onlineでは、ビジネス・経済に関する情報を発信しています。

よろしければ、メルマガのご登録をお願いします。

参照
[注1]総務省:平成 30 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)
[注2] The World’s 50 Most Innovative Companies of 2015 | Fast Grow
[注3] CoCo Gourmetとは | 獣医師監修の手作りドッグフード【公式】ココグルメ
[注4] 「語れるもので、日々を豊かに。」ファクトリエ4年程度で売上10億円を達成:Social Good な企業とその取り組み #18|コラム|メンバーズ

関連記事

GDP2065年までに4割減予想 中小企業の生産性向上が不可欠

日本の生産年齢人口がこのまま減り続け、企業の生産性が向上しなければ、日本のGDPは現在より2065年には約4割減ることになる。そうならないためには、企業数の99%以上を占める中小企業の生産性向上が不可欠だ。中小企業再編の議論が高まる中、特に地方企業が何をするべきか、考察した。

テスラの躍進とESG/SDGs投資 GAFAに続くプラットフォーマー

イーロン・マスク氏が率いるテスラ社の時価総額が2020年中にトヨタ自動車を上回り、一時US$8000億を突破し、既に4倍近い差をつけた。20年中に7倍以上という株価上昇の背景は、ESG/SDGs投融資資金の拡大、同氏が率いる宇宙開発会社「スペースX」社(非上場)の企業価値急拡大などと推測される。この記事では、テスラの急伸長の背景にあるESG/SDGs投資の拡大と、エネルギー分野におけるプラットフォーマーを視野に入れた成長戦略について考察する。

工作機械受注に回復感 中期的なEVシフトのリスクとは

日本工作機械工業会が公表している工作機械受注は、5月をボトムに回復しており、11月(速報)は前年同月比8%増の882億円と2年2カ月振りの前年比プラスに転じた。一方で、国内外で電気自動車(EV)の普及を加速させる政策を打ち出すニュースも相次いでいる。EVシフトは金属部品の使用を減らすことにつながり、工作機械業界にとってネガティブファクターであり、中長期的なリスク要因となりそうだ。

ランキング記事

1

GDP2065年までに4割減予想 中小企業の生産性向上が不可欠

日本の生産年齢人口がこのまま減り続け、企業の生産性が向上しなければ、日本のGDPは現在より2065年には約4割減ることになる。そうならないためには、企業数の99%以上を占める中小企業の生産性向上が不可欠だ。中小企業再編の議論が高まる中、特に地方企業が何をするべきか、考察した。

2

2021年展望  化粧品業界 急回復もレッドオーシャン化する中国市場

国内化粧品市場は厳しい環境が続く中で、多くの化粧品企業が来期以降の業績回復の牽引役として、中国経済圏での売上拡大を掲げている。しかし、中国市場は欧米、中国、韓国メーカーの勢いが増しており、レッドオーシャン化しつつある。グローバル競合が激化する化粧品市場において、消費者に向き合ったコミュニケーションの進化が差別化のカギとなる。

3

コロナ禍に有効なアーンアウト条項とは シンガポール案件からの考察

コロナ状況下でもASEAN地域においてPEファンドによる売却が積極的に行われている。アーンアウト条項を通じ、コロナ状況下のリスクを買い手と売り手で分担している例もみられ、危機時の参考事例として紹介・考察したい。

4

パワー半導体の世界シェアは?注目市場の今後の動向を解説

パワー半導体(パワートランジスタ)は、家電や電気自動車をはじめとして、さまざまなデバイスの電源管理に使われています。 多くの分野で需要が伸びており、長期的な成長が期待できるマーケットです。 日本の企業や大学発ベンチャーが競争力を保っている分野でもあり、「パワー半導体強国」として世界市場でのシェアを獲得するべく、積極的に研究開発を行っています。 本記事では、世界規模で成長をつづけるパワー半導体の市場規模や、今後の展望を解説します。

5

村上春樹さんに学ぶ経営⑨どや、兄ちゃん、よかったやろ?クーっとくるやろ?

過去2回、「ニッチ」とは「すきま」ではなく、はるかに深い概念であることを見てきました。では、どんな状態になると真の「ニッチ企業」になったといえるのでしょうか?

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中