パーソナライゼーションとは?顧客一人ひとりに最適化マーケティング手法

インターネットの検索結果や、ECサイトの「おすすめ商品」など、身の回りのあらゆるものは、消費者の好みに合わせてパーソナライズされています。 このように、企業がユーザーの購入履歴や閲覧履歴を分析し、自社の製品やサービスをレコメンドするマーケティング手法が「パーソナライゼーション」です。 しかし個人情報ついては欧米を中心に、その取り扱いが問題となっています。本稿ではパーソナライゼーションの仕組みや注意点、カスタマイゼーションとの違いについて、導入事例を挙げながら解説します。

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パーソナライゼーションとは?ユーザー・エクスペリエンスを最大化するマーケティング手法

パーソナライゼーション(Personalization)とは、顧客の属性をあらかじめ分析し、その興味・関心・嗜好に合わせて自社のサービスを最適化していくマーケティング手法です。ユーザー・エクスペリエンス(UX)やカスタマー・エクスペリエンス(CX)を最大化するための施策と言い換えることもできます。

カスタマイゼーションとの違いは、顧客と企業のどちらが「主体」か

パーソナライゼーションとよく似た言葉として、カスタマイゼーション(Customization)があります。カスタマイゼーションでは、ユーザー自身が自分の好みに合わせて直接行動します。一方、パーソナライゼーションでは、ユーザーに見えないバックエンドの部分で、企業側が顧客のニーズを汲み取ろうとします。

パーソナライゼーションの目的は、ユーザー・企業双方に利をもたらすエクスペリエンスの構築にある

パーソナライゼーションの狙いは、ユーザーの興味・関心・嗜好を理解し、製品やサービスのユーザー・エクスペリエンスを最大化することです。しかし、ただ購入意欲を刺激することだけがゴールではありません。ユーザーがレコメンドされた製品やサービスに満足し、企業のブランドに対して肯定的な評価をくだすことで、顧客と企業が長期的な関係を構築することが最大の目的です。

なぜパーソナライゼーションが注目されているのか?

パーソナライゼーションが注目を集める理由は、大きく分けて2つあります。

理由1.マスマーケティングに消費者が反応しなくなった

従来のマーケティングの主流は、マスメディアを活用した「マスマーケティング」でした。その代表的なものが、テレビ・コマーシャル(CM)です。

しかし、1990年代後半からコンピューターなどのデバイスが広く普及し、ひとり1台スマホを持つようになった現在ではSNSやECサイトなどの重要性が増しました。

現代の消費者の興味関心の範囲は著しく広がっており、不特定多数の消費者に一方的な広告宣伝を行う従来のマスマーケティングだけでは、商品やサービスが売れにくくなっています。

理由2.消費者が購入プロセスの主導権を握るようになった

消費者行動が変化し、ユーザーが購入プロセスの主導権を握るようになったのも、マーケティングの大きな変化です。

消費者はSNSやWebサイトを利用して、興味・関心・嗜好に合った商品やサービスを能動的に選ぶようになりました。大量のモノがあふれる消費社会において、今日の消費者には多くの選択肢が存在します。

そこで、パーソナライゼーションにより、顧客に訴えかける商品・サービスを提供することが、マーケティングにおける必須事項になっています。

パーソナライゼーションの3つの実践例

パーソナライゼーションを導入するうえで、次の3つの事例が参考になります。

ビッグデータを活用したAmazonのレコメンド機能

Amazonはビッグデータを分析し、ユーザーに「あなたへのおすすめ」を表示するレコメンド機能を提供しています。

ユーザーの過去の購入履歴や閲覧履歴などのデータを学習し、好みや嗜好を分析することで、ユーザー1人ひとりのニーズにパーソナライズした商品を提案しています。

買い物が便利になるだけでなく、ユーザーのAmazonブランドに対する信頼感が上がり、多数のロイヤルカスタマー(忠誠心の高い顧客)を生み出すことに成功しています。

Googleの検索エンジンのパーソナライズド検索

Googleの検索エンジンも、実は身近なパーソナライゼーションの例です。Googleの検索結果は、ユーザーによって異なります。ユーザーの過去の検索履歴をもとに、興味関心を持ちそうなWebページを優先的に表示するアルゴリズムが存在するためです。

この仕組みを「パーソナライズド検索」と呼びます。Googleが買収したYoutubeにおいても、同様の仕組みが使われており、ユーザーのニーズに合った動画コンテンツが優先的に表示されるようになっています。

ユーザーの行動履歴を活用したスターバックスのレコメンド機能

スターバックスがリリースしたアプリには、過去の顧客データだけでなく、ユーザーの生きた行動履歴を使ったレコメンド機能が搭載されています。

例えば、ユーザーの近くにある店舗の在庫状況、今一番売れている人気セレクション、過去の注文履歴、さらにその日の天候・気温・時間帯といったリアルタイムの情報を活用し、より精度の高いレコメンドを実現しています。

パーソナライゼーションを可能とする3つの情報

企業がパーソナライゼーションを行う際、次の3つの情報を活用しています。

情報1. デモグラフィック:年齢・性別などのユーザーの属性

デモグラフィック(人口統計学的属性)とは、年齢、性別、興味関心などユーザーの属性となる情報のことです。

デモグラフィックを得るには、アプリのインストール時や、ショッピングサイトの会員登録時に、ユーザー自身で個人情報を入力してもらう方法が一般的です。

また、近年はTwitter、Facebook、LINEなどのSNSと連携して、間接的に情報を得る手法も広く使われています。パーソナライゼーションに使われているオーソドックスな情報です。

情報2. コンテキスト:消費者行動の背景

コンテキスト(背景情報)とは、消費者行動の背景となる情報のことです。たとえば、ユーザーがサービスを利用する時間帯、アクセスするデバイスの種類、住んでいる地域などが、コンテキストの代表例です。

背景情報を取得することで、ユーザーの行動に間接的な影響を与えられます。例えば、ユーザーの行動圏が分かれば、近隣の店舗の情報をピックアップし、アプリ上にレコメンドすることができます。

また、使っているデバイスの種類が分かれば、スマートフォンの通知機能を利用し、興味関心に合ったコンテンツを送り届けられます。

情報3. ビヘイビアー:ユーザーの過去の行動履歴

もっともパーソナライゼーションの効果が高いのが、ビヘイビアーと呼ばれるユーザーの過去の行動履歴です。

例えば、ECサイトの特定の商品ばかりタップするユーザーの行動傾向をキャッチできれば、その商品に関連したコンテンツを優先的に表示することで、購買意欲を刺激できます。

また、金融機関が運営するカードローンでは、カードローンに関連するWebサイトの閲覧履歴や、銀行口座のお金の動き方などのデータを使い、顧客にパーソナライズドしたカードローンのマーケティングを行っています。

ビヘイビアー情報を読み解くのは困難ですが、非常に精度の高いパーソナライゼーションを実現可能です。

パーソナライゼーションの2つの注意点

パーソナライゼーションにはリスクも存在します。それが、ユーザーの個人情報の取り扱いです。

EUやアメリカでは企業のデータ活用への規制が始まった

2019年12月19日、フェイスブックの2億6700万人分のユーザー情報が、オンラインで閲覧可能な状態になっていたことが発覚しており、企業による個人情報の取り扱いに対する目が日に日に厳しくなっています。

EU圏やアメリカでは、企業のパーソナライゼーションの増加を受け、次のような規制を施行しました。

地域 規制
2018年5月 EU圏 GDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)を施行
2020年1月 アメリカ・カリフォルニア州 >CCPA(California Consumer Privacy Act、カリフォルニア州消費者プライバシー法)を施行

GDPRは企業が個人情報を取得する際にユーザーの同意を義務付けた規則です。一方、CCPAはカリフォルニア州の消費者に対し、事業者が収集した個人情報の利用方法について知る権利や、個人情報の削除を求める権利を認めたものです。

EUやカリフォルニアの企業は、パーソナライゼーションの際にGDPRもCCPAを念頭に置き、消費者の個人情報の取り扱いに注意を払う必要が出てきました。

日本企業も消費者のプライバシーには細心の注意を

日本国内でも個人情報保護法において、消費者のプライバシーが守られています。日本の個人情報の範囲は、実はCCPAよりも広く、個人を識別できる情報だけでなく、それに関連した情報も含まれています。

日本の企業も、パーソナライゼーションのために収集した個人情報を管理し、消費者から開示請求を受けた際にいつでも対応できる組織体制をつくる必要があります。また、消費者の個人情報が外部に漏洩しないよう、情報セキュリティ対策を実施しましょう。

パーソナライゼーションで世界中のユーザーと1対1のエンゲージメントを構築

インターネットの台頭により、従来のマスマーケティングではなく、顧客の属性にパーソナライズした新たなマーケティング手法が求められるようになりました。

近年ではAIやディープラーニングを使い、収集したビッグデータを解析することで、消費者1人ひとりの興味・関心・嗜好に合わせた商品・サービスの提供が可能になりつつあります。

このような情報をキャッチアップ、事業に反映することが、企業の規模を拡大する上で重要になってくるでしょう。

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