商業施設やホテルは既に大幅な賃料の減収

人いない

コロナの影響で、様々な産業、直近では特に小売業、飲食業、宿泊業、サービス業等の業績に、営業自粛や営業時間の短縮による売上の大幅な減少を通じて、大きな負の影響を及ぼしている。

もともと商業施設やホテルの賃料は、テナントの売上に応じて決まる歩合賃料の割合が大きいため、テナントの売上の減少は即賃料収入の減少につながる。それ以上に今回の場合、テナントの売上は一定期間ゼロ、もしくは限りなくゼロに近いのであるから、歩合賃料どころか固定賃料も払えない。

賃料減免の動きも

多くのテナントが賃料負担に耐え切れずに退店したり契約解除するような事態になれば、ショッピングセンターやホテルの中・長期的な運営に支障をきたす。そこで商業施設やホテルを保有する大手不動産会社やREITの中で、商業系のテナントに対して賃料を減免する動きが出ている。

商業施設からの賃料が賃料収入全体の約4割を占める三井不動産は、商業施設の休館やテナントに対する賃料減免が主因で、2021年3月期の賃貸収入が前期と比べて約360億円減少する見込みだと発表した(2020年5月12日 会社資料)。

一方ホテルを主要な保有資産とするREITのインヴィンシブル投資法人は、保有するホテルの運営会社に対しての賃料免除を主因に、2020年6月期(6カ月)の投資家に対する分配金が2019年12月期(6カ月)の1,725円から98.3%減少して30円になる見通しだと発表した(2020年5月11日 会社資料)。

オフィス賃貸への影響は今のところ軽微

ビル群

商業施設やホテルに比べると、コロナのオフィス賃貸への影響は今のところ比較的軽微だ。オフィスビルを主要資産とするREITのジャパンリアルエステートは、2020年9月期(6カ月)の投資家に対する分配金が2020年3月期(6カ月)の10,610円から1.8%増の10,800円になる見通しだと発表した(2020年5月15日 会社資料)。

オフィス賃貸の場合、例外的なケースを除き、賃貸借契約は2年以上の固定賃料が一般的だ。即ち足元でコロナによる景気の急落があっても、それが賃料収入に反映されるまでにはタイムラグがある。仮に中小テナントを中心に貸倒れが発生したとしても、オフィスビルの場合商業施設やホテルとは違い使い方に汎用性があるので、後継テナントを確保するのにさほど時間はかからない。

不動産需給はタイトな状態が続く

大手町

もちろんコロナ後も景気回復の見通しが鈍ければ、テナントの賃料支払い能力にも余裕が失われていき、いずれビルオーナーに対して賃料減額を求めることになる。しかしこれも市場でのオフィス床の需給次第だ。現在の需給を現す空室率は4月現在1.56%(東京主要5区:三鬼商事)でほぼ満室であり、需給は極めてタイトだ。

一方、来年2021年と再来年2022年は新規の供給量も多くはない。森ビルの虎ノ門・麻布台プロジェクト等の大型プロジェクトが竣工して供給圧力が強まるのは2023年だ。そこで、オフィスビルへのコロナの経済的な影響は、今後しばらくは限定的である可能性が高い。

まとめ

オフィス賃貸は中・長期的にも他の種類の不動産と比べて高目かつ安定的なキャッシュフローを維持出来るのだろうか?この点に関して、オフィス需要の構造的な転機がコロナによってもたらせている可能性があることを念頭におく必要がある。即ち、コロナによる人々の働き方や生活態様の変化がきっかけとなり、中・長期的なオフィス床に対する需要の量や質が変化する潜在性がある。

㊦「在宅勤務の影響」に続く

関連記事

スーパーシティとは?定義やスマートシティとの違い、海外事例とともに解説

現在の日本では、少子高齢化や労働人口減少、地方の過疎化や空き家、都市部の交通渋滞やCO2排出など、様々な課題があります。これらの課題を、AIやIoT、5Gなどのテクノロジーを駆使して解決しようとするのが内閣府が推進する「スーパーシティ構想」です。また、最先端の技術で生活のスマート化を目指す「スマートシティ」は世界各国の都市で導入されている一方、様々な課題があります。 今回は、スーパーシティの概要や課題、スマートシティとの違いを解説するとともに、海外におけるスマートシティの事例を紹介していきます。

百貨店の進むべき道

百貨店の苦境が、加速している。日本百貨店協会によると、全国の百貨店の売上高は消費増税後の2019年10月から8カ月連続で下落。コロナ休業明けの6月も、大手3社の売上高は回復していない。この記事では、百貨店本来の提供価値が失われている現状に着目し、トランスフォームが求められる、百貨店の在り方について考えてみたい。

「新しい生活様式」(ニューノーマル) 化粧品業界に求められるDX対応

コロナウイルスによる影響が長期化し、化粧品の販売現場も、変化が迫られている。6月の商業施設の再開後も、美容部員による対面販売サービスや自由なテスター試用といった従来の販促活動が大幅に制限。デジタルトランスフォーメーション(DX)によるマーケティングの進化が欠かせない状況だ。

ランキング記事

1

「選択と集中」の誤算㊤ 大いなる誤訳

2020年3月1日、「経営の神様」と呼ばれたジャック・ウェルチ氏が死去しました。 1990年代後半、経済危機の最中にあった日本で、ウェルチ氏の存在はひときわ強い影響力を持ち、その言葉は「格言」として広まっていきました。しかし、最も有名な「選択と集中」という言葉に関しては、ウェルチ氏の意思が「誤訳」されて伝わっていました――。 フロンティア・マネジメントの代表取締役である松岡真宏が、機関誌「FRONTIER EYES vol.23」(2018年11月)に掲載した記事を再掲いたします。

2

ASEAN トピック「コロナ鎖国」に強いアセアン諸国 食料・エネルギー自給率を比較

コロナウイルスの猛威により、世界中が「巣ごもり状態」、いわば世界中が「鎖国状態」という前代未聞の状況となった。中国では他の地域に先行して生産活動に復調の兆しとの知らせも聞こえるが、地球規模の影響は長期化する可能性が高く、体力の弱い国の財政破綻の可能性すらありうる。一方、近隣ASEAN諸国に目を向けると、食料やエネルギーの自給率の面では、案外強いことに改めて気づかされる。

3

村上春樹さんから学ぶ経営②~作品に潜む成功へのヒント~

前回予告いたしましたように、「村上春樹さんから学ぶ経営」を、シリーズでお届けして参ります。今回のテーマは、「差異化」です。まずは次の一文をお読みください。

4

理想のコーポレートガバナンスを考える上で重要な「エージェンシー理論」とは?

多くの企業が、株主の利益を守るため企業経営を監視し、統制するコーポレートガバナンスを推進しています。 コーポレートガバナンスを考えるうえで有効なのが、ハーバード大学のM・C・ジャンセン氏らの論文で有名な「エージェンシー理論」(プリンシパル=エージェンシー理論)です。 コーポレートガバナンスの目的を達成するためには、まずエージェンシー理論の視点に立ち、経営者と株主の利害関係をとらえなおす必要があります。 本記事では、エージェンシー理論の意味やポイントを解説します。

5

「7割経済」時代の事業再生 Withコロナ ㊤バブル後30年の変化

コロナと共に生きるWithコロナ時代は、「7割経済」と言われている。これは、多くの産業で「コロナ前の水準に業績が回復することはない」ことを意味する。これまでの事業再生は、「経営改革を伴う再生計画を実行すれば、いずれ売上高も回復していく」という基本前提に立っているが、その前提が大きく崩れる。Withコロナ時代はこれまでとは異なる手法、事業再生の「ニューノーマル」が求められる。

人気のキーワード