回復見込まれる中国、影響甚大な日本国内

感染拡大

中国消費財市場の現況は、デパートやショッピングモールはもちろんのことドラッグストアなどの小売流通は、最悪期を脱したとはいえ多くの店舗で閉店や時短営業が続いている。

製品供給面では、消費財においては春節前の在庫積み増しに加えて、生産はフル稼働ではないまでも徐々に正常化に向かっており、むしろ物流と小売の稼働状況が販売正常化の律速となっている状況である。

消費財各カテゴリーの製品に対する需要は、国内・越境を問わず各社ともECチャネルでの順調な受注が続いているとのことからも底堅いと見られ、中国事業については物流遅延などが終息すれば比較的早い回復が見込まれると判断している。

一方の日本だが、新型コロナは日本が感染当事国となった点でSARSやMARSの発生時とは日本企業に及ぼす影響レベルが明らかに異なる。2009年の新型インフルエンザ流行と比較しても、感染から発症までの潜伏期が長い。その上、未発症感染者からの感染が確認されている点で、消費者の不安感や社会活動全般への影響の大きさは顕著である。

全国的なイベント・会合の自粛や休校、出張自粛や在宅勤務の推奨といった行動制限要請に加え、感染への不安による「ひきこもり」の風潮が高まる中で、全国的な消費減退への懸念は大きい。

化粧品の販売が大幅に悪化

化粧品

足元の国内市場では、特に化粧品の販売状況が悪化している。上場百貨店各社の2月売上速報は軒並み二桁減少となっており、インバウンドの大幅な減少に加えて日本人来店客の外出自粛による減少が理由として挙げられている。

また化粧品各社が感染防止のために店頭カウンセリングでの顧客との接触を自粛していることも、特に高価格帯製品の需要を抑える要因となっている。一方で、洗剤・衛生用品、健康関連製品などを扱うトイレタリーやOTC医薬品では一部の特需発生もあり売上の極端な落ち込みは認識されていない。

各企業では、従業員の感染予防のために出張見合わせ、テレワークの推進やフレキシブル勤務の拡大を進めており、目先では企業活動のためのリソースやコストが変動する可能性も高い。営業面でも、会議やイベントの自粛を受けて、春夏の新製品を対象としたプロモーションの多くが中止となっており、仮に感染が早期に終息しても少なくとも4-6月期までは国内消費財市場への影響は避けられないと考える。

リーマン、東日本大震災と比較して

感染拡大の終息が見通せない中でマクロ経済への悪影響が無視できないこと、感染封じ込めのためにグローバルレベルでの移動抑制がより拡大する可能性が高いことを鑑みると、新型コロナによる長期的な企業活動への影響の考察にあたっては、リーマンショックや東日本大震災後の状況も参考にする必要があると考える。

リーマンショック及び東日本大震災後の各社の業績前年比
図表:リーマンショック及び東日本大震災後の各社の業績前年比

消費財業界及び企業業績に与えるより長期的な影響は、が終息に向かうタイミングに大きく左右される。その中でも、日用品やヘルスケアを含むトイレタリー関連業界では他産業と比較すると業績へのダメージは限定され、事態の終息後には早期の回復が見込めると見ている。

これは上記の図表からも見て取れることだが、この第一の理由としては、当該業界の製品の多くは消費者にとって日々の使用を必要とするものであり、景気動向や社会的な自粛ムードの影響を実需面で受けにくいことである。

収益のボトムラインが維持しやすいことは国内消費財メーカーの強靭な財務体質につながり、市場環境が回復するタイミングでの反転戦略の自由度を高めている。第二の理由は、トイレタリー製品の製造過程では自動車や半導体のようなグローバルレベルでのサプライチェーン分業がほとんどなされていないことである。

生産拠点は消費地の想定市場規模や物流コストの見合いで決定されることが一般的であり、製品の特性上、原材料について全社レベルで特定の供給元に依存することもまれである。このため、特定の外的要因によって極端な供給リスクを招く可能性は低い。

影響は化粧品>日用品

マスク

化粧品については、メークアップ製品や高価格ブランドなど、消費自粛の影響を避けられない製品カテゴリーも多い。そのため、トイレタリー業種と比較すると社会的なネガティブイベント発生時に、売上下押し圧力が大きくなることは避けられない。

特に限界利益率の高い化粧品事業では、消費者の情緒的ニーズにも配慮したマーケティングコミュニケーションの成否が、特に感染終息期以降の業績回復のスピードを大きく左右することになろう。

最後に、日本における感染拡大の終息時期に関わらない大きなリスクとして、国内生産拠点での感染発生が挙げられる。消費財は生産における地域依存度が低いと前に述べたが、例外といえるのが「Made in Japan」を高い付加価値とした製品である。

まとめ

国内市場が伸び悩む中で現在の消費財企業各社は、多かれ少なかれ成長をグローバル市場に求めている。その中で、特に化粧品やトイレタリー領域においては特にアジア地域で、「日本製品」であることを大きな付加価値として越境ECを含む輸出売上を拡大している企業が多く存在する。

このため、日本国内での製造能力を維持・拡大するとともに、万が一の感染発生に際してもブランド棄損のリスクを回避する対応を行うことが成長継続にむけた最重要課題といえる。その点で今回の新型コロナの発生は、BCPやコミュニケーションマネジメントを含む危機管理の確認と充実を従来以上に企業に迫るきっかけにもなるだろう。

関連記事

TSMC熊本進出の衝撃㊤:進出の短中期影響は1.3兆円

半導体の世界最古にして最大のファウンドリーメーカー、TSMCが熊本県に進出することを発表した。フロンティア・マネジメントの試算では、熊本県を中心に中短期で1.3兆円の経済効果を予想する。この記事では㊤㊦に分けて、熊本県を中心に九州ひいては日本の半導体産業発展に向けた提言をしたい。

エレクトロニクス大手の復活は本物か㊦長期トレンドと22/3月期の注目点

国内大手エレクトロニクス8社の収益性が、改善方向にある。現在の2022/3月期業績予想が達成されれば、売上高営業利益率は7%を突破し、ROEも2桁へと上昇する公算が大きい。過去20年間で最高水準となるが、エレクトロニクス大手の収益性回復→復活は本物だろうか?今回の記事㊦では、長期トレンドの分析、21/7-9月期業績と22/3月期の注目点について、言及したい。

鉄スクラップ考① 知られざる景気の先行指標

米国のFRB議長として活躍していたグリースパン氏がかつて、雑誌記者とのインタビューの中で、「もし離れ小島に流され、たった一つの経済指標しか手に入らない状態となったとしたら、何が欲しいか?」と問われ、「鉄スクラップの価格」と答えた。日本では米国などと比べると取り上げられる機会は多くないものの、鉄スクラップ価格は景気の先行きを占う、重要な経済指標なのである。同時に、鉄スクラップは今後の鉄鋼産業をみるうえでも重要なカギを握っていると筆者は考えている。 今回からシリーズで、鉄スクラップについて考えたい。

ランキング記事

1

アシックスの逆襲「箱根駅伝着用ゼロ」から復活

2022年の箱根駅伝は、青山学院大学が6度目の総合優勝を遂げた。記録は自らの大会記録を大幅に更新する10時間43分42秒。この記事では、レースの高速化を支えるランニングシューズを例に、21年の大会で「箱根駅伝着用ゼロ」に沈んだアシックスの巻き返し戦略に焦点を当てる。

2

バルミューダ事例に学ぶインサイダー取引対応

2021年11月中頃、洗練されたデザインが人気の家電メーカー「バルミューダ」が華々しくスマートフォン市場に参入といった話題に、冷や水を浴びせるようなニュースがメディアを賑わせた。社外取締役によるインサイダー取引に係る社内規程違反と関係者の処分についてだった。本件を題材にインサイダー取引対応について考えてみたい。

3

2022年展望 中国 急激な規制から安定的な政策へ

中国は2021年、経済や文化、教育など様々な方面で、規制や制限を強化した。前年の急激な政策の影響を和らげるため、2022年の中国の経済政策は「穏」(安定)に変化していくとみられる。

4

「社史」を読んでいますか?企業分析の基本の「キ」

企業分析をする場合、対象企業の最近の業績動向を分析することは基本だ。同様に、対象企業の「社史」を熟読することも忘れてはならない。我々個人が出自や育った環境から逃れられないように、企業も創業からの歴史的な環境要因から逃れることはできない。

5

2022年展望 不動産 住宅販売のリスクは、金利動向次第

2020年から2021年にかけて住宅の売行きが増加して、特に戸建住宅の売行きが好調だ。しかし、世界各国でインフレが進行しており、各国の利上げ次第では日本の長期金利にも影響し、高額物件の販売にブレーキがかかる可能性もある。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中