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経営コンサルティング業界 100年の歴史と変容
経営戦略の策定やITシステムの導入時に、外部のコンサルティングファームを起用することは珍しくなくなった。
日本でも市民権を得た経営コンサルティング業であるが、ビジネスとして始まったのは今から100年以上前にさかのぼり、現在までに大きく変容を遂げながら裾野を広げ続けている。
本稿では、経営コンサルティング業界の歴史をひも解くとともに、様々に派生した業務を体系的に整理したい。
はじまりは1人の米国人
世界で初めての経営コンサルタントはアメリカ・フィラデルフィア出身のフレデリック・テイラー(1856~1915)と言われている。
テイラー氏は、製鋼会社の技術者として、工場での作業に科学的管理法を取り入れることで業績拡大に寄与した。
その後、独立して様々な企業の立て直しを図ったのが経営コンサルティングの起源とされている。テイラー氏の生み出した科学的管理法とは、
- 課業管理(ノルマの設定、段階的賃金制度)
- 作業の標準化(ムリ・ムダ・ムラの排除)
- 作業管理のために最適な組織形態(管理部署の設置、職能別組織)
からなり、現代におけるマネジメント手法の基礎の一つとなっている。
1886年、世界初のコンサルティングファーム誕生
19世紀後半には、テイラー氏の確立した科学的管理法に触発された学者やコンサルタントにより、現在に続くコンサルティング業界が形成される。
1886年に世界で初めてのコンサルティングファームであるアーサー・D・リトルが誕生。マサチューセッツ工科大学のアーサー・D・リトル博士によって設立された同社は、当初は技術開発の委託研究を中心に活動していた。
20世紀初頭、上野陽一が日本で導入
日本における経営コンサルティングの誕生は20世紀初頭、上野陽一(1883~1957)によるテイラー氏の科学的管理法の導入であると言われている。
上野氏は1925年に日本産業能率研究所を設立し、企業の経営指導を行うとともに、社会人・学生への教育に尽力した。
1966年、外資系戦略ファームであるボストン・コンサルティング・グループが日本支社を設立したことを皮切りに、数々の外資ファームが日本に進出する。
アメリカの先進事例や斬新な分析アプローチは日本の経営者に次第に受けいれられ、経営コンサルティング業界の認知が広まっていった。
IT、ERPパッケージ……多様化する業務
1980年代に入ると、コンピューター市場の拡大を背景に、業務・IT領域のコンサルティングニーズが生まれる。
当時、業務・ITコンサルティングを先導したのは会計事務所であった。会計監査を通じた業務プロセス理解と顧客基盤を武器に、ITを活用した業務改善を行うことで業態を拡大していった。
その後もバブル崩壊による不景気を背景に、事業ポートフォリオの見直し、ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)、ERPパッケージの導入といった新たなコンサルティング業務のニーズが高まっていった。
2003年にはバブル崩壊後の不良債権の処理と産業再生を目的に、時限立法の特殊会社である産業再生機構が発足。事業再生手法を確立し、2007年に解散するまでの4年間で41件の事業再生を支援。清算時には433億円を国庫に納付するなどの功績を残した。
なお、フロンティア・マネジメントは産業再生機構の出身者が中心となって2007年に設立されたファームである。
産業再生機構時代に獲得した経営コンサルティング、事業再生及びM&Aのノウハウを活用し、幅広いコンサルティングサービスを提供している。
巨額の不正会計 エンロン事件が及ぼした業界再編のうねり
2000年代初頭のエンロン事件を引き金に、経営コンサルティング業界に大きなうねりが生まれる。
エンロン事件とは、アメリカの大手エネルギー会社エンロン(Enron Corporation)が起こした巨額の不正会計事件である。
同社を担当していた監査法人アーサー・アンダーセンも不正に関与していたとして解散に追い込まれることとなった。当該事件を契機として、株主保護の観点から監査業務とコンサルティング業務の兼業が禁止されることになる。
多くの会計事務所系ファームは再編を余儀なくされた。
業界再編により独立した会計事務所系ファームであったが、近年では外資戦略ファームの買収などM&Aによる領域拡大を進めている。デロイトによるモニターグループの買収、PwCとブーズ&カンパニーとの経営統合などが代表例である。
かつては外資戦略ファームが担っていた経営戦略の領域に会計事務所系ファームが侵食し、外資戦略ファームも収益規模拡大のためにITシステム導入などの業務・IT領域に業態を拡大しており、ファーム毎の明確な線引きが難しくなっている。
代表的な業務体系
本稿の最終章では、経営コンサルティングファームが提供している代表的な業務を紹介したい。
時代に合わせて経営コンサルタントの提供業務は拡大・多様化してきた。
戦略策定に留まらず、業務への落とし込みまでを含めた実行支援のニーズ、つまり戦略実現へのコミットが求められているとも言える。
昨今では、事業会社に資本参画し、ボードメンバーとして戦略実現へのコミットを高めているファームも存在する。
企業価値を高めるという点においては、経営コンサルティングファームとPEファームの本質は共通であり、今後、その垣根を超えたビジネスを提供するファームが増えていくのかもしれない。
これからも、クライアント企業が対峙するであろう新たな経営課題の解決のために経営コンサルタントは進化を続けていく。
参考文献
琴坂 将広『経営戦略原論』東洋経済新報社(2018)
並木 裕太『コンサル100年史』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2015)
三谷 宏治『経営戦略全史』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2013)
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