会社法とは?なぜ制定されたのか?

会社法は、会社にまつわるあらゆる規則を管理する法律を指します。会社の設立や組織、運営、管理について定めたもので、会社の経営に関わる重要な法律です。

「会社法という言葉を初めて聞いた」「どんな法律なのかイメージが湧かない」という方もいるかもしれません。しかし、会社法はどのような小さな会社でも全てが対象となります。会社を経営される方は理解をしておくべき法律でしょう。

ここでは、会社法の概要と会社法が制定された背景について簡単に説明します。
1.1 会社法の概要
会社法は、以下のように第一編~第八編から成ります。株式会社と持分会社、外国会社について規定されています。

     

  • 第一編 総則
  •  

  • 第二編 株式会社
  •  

  • 第三編 持分会社
  •  

  • 第四編 社債
  •  

  • 第五編 組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転
  •  

  • 第六編 外国会社
  •  

  • 第七編 雑則(解散命令、訴訟、非訟、登記、公告)
  •  

  • 第八編 罰則
  •  

  • 附則

(注1)

任意規定の多い民法とは異なり、会社法は「強行法規」であるのも大きな特徴です。強行法規とは、当事者の意思に関わらず強制的に適用される法規のことで、別名「強行規定」とも呼ばれます。

つまり、企業が強行法規に反する契約や約束などをした場合には、契約や約束が「無効」となり、法規の適用を免れることができません。致命的なミスを防ぐためにも、会社法を正確に把握しておく必要があります。

会社法制定の背景

会社法が施行される前は、会社の経営に関する法律は「商法」の第二編、「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)」「有限会社法」という3つに分かれて存在していました。

そこで、これら3つの法律を分かりやすく一本化した「会社法」が定められ、施行されたのです。

「会社法」の施行時は、各法律の文体も統一されました。従来の「商法」と「有限会社法」はカタカナによる文語体で書かれていました。しかし、現場では「分かりにくい」「使いにくい」という声も多く挙がっていたため、ひらがなの口語体での表記になりました。

会社法改正の履歴を紹介

2005年に制定された会社法は、2014年に第一次改正が行われ、そこで設けられた附則を受けて2019年に改正会社法が成立しました。その間に細かい改正は行われていますが、大きな改正が行われたのは、2014年と2019年の2回になります。

2005年の制定以来、会社法が改正されてきた履歴について詳細を確認しましょう。

2005年制定され、2014年初めての大型改正

会社法が成立したのは、2005年6月。その後2006年5月1日から一部が施行され、2007年5月1日には全面施行されています。

その後も細かい修正がたびたび行われていましたが、2014年6月に会社法の一部を改正する法律(会社法改正)が国会で成立。会社法の制定後初めて、大幅に改正されることになりました。この一度目の改正は「第一次改正」とも呼ばれます。

第一次改正では、「社外取締役や社外監査役の社外性要件厳格化」といったコーポレート・ガバナンスの強化を図りました。また、親子会社・グループ会社に関する規律整備も行われています。

2019年改正会社法の成立

2014年の第一次改正で設けられた附則には「施行後2年を経過した場合において,企業統治に係る制度の在り方について検討する(注2)」とあります。

政府は必要性に応じて、社外取締役を置くことの義務付けなど、適切な措置を行うこととされていました。しかし、2014年の改正後も、会社法の更なる見直しを各方面から指摘を受けることに。

こうした背景をから、2019年10月に会社法の改正案・整備法案が閣議決定され、同年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」が成立しました。

【2021年3月施行】改正会社法の施行日と目的

2019年に成立した会社法は、「改正会社法」として2021年に施行されます。新しく施行される会社法も例外なく、すべての会社が対象となる法律です。

会社を経営されている方は、改正会社法の施行日と改正の目的を正しく把握し、しかるべき対応の準備が必要となるでしょう。2度目の大きな改正となる改正会社法の施行日と、その主な目的を解説します。

施行日

改正会社法は、会社法の一部を改正する法律が成立した後、2019年12月11日に公布されました。そして2020年11月20日に、一部の規定を除いて「その施行日を2021年3月1日にする」という政令が公布されました。

改正の目的

法務省のパンフレットによれば(注3)、会社法の改正の目的は「会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株式運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図ること」とされています。

この改正により、日本企業のコーポレート・ガバナンスの更なる向上が見込まれます。また、日本企業の競争力、日本企業に対する内外の投資家からの信頼がさらに高まることも期待されています。その結果として、日本経済の大きな成長にもつながるのです。

改正会社法の概要

改正会社法の主な改正項目について、概要をわかりやすく説明します。改正により、会社側で新たな対応が必要なケースもあれば、対応が不要となりリソースが削減されるケースもあるでしょう。

会社法の改正は、会社にとってメリットが生じることを目的として行われています。どのようなメリットを得られるのか把握することが重要です。

主な改正項目

会社法の改正項目は「株主総会に関する規律の見直し」「取締役等に関する規律の見直し」「その他の改正」の大きく3つに分けられます。

全体的に上場企業や大企業に影響が大きい項目が多いものの、非上場企業や中小企業に関連するものも一部含まれています。

株主総会に関する規律の見直し

株主総会に関する規律の見直しでは、「株主総会資料の電子提供制度の創設」「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」が行われます。

まず、「株主総会資料の電子提供制度の創設」です。これは、株主総会の資料を自社のホームページなどに掲載して共有することができる制度を新設したものです。

この制度によって、会社側は印刷・郵送などに要する時間とコストを削減できます。株主側にとっても、資料を迅速に入手できるメリットがあります。インターネットの利用が困難な株主に対しては、書面での交付を請求することも可能です。

次に、「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」です。文字通り、株主提案権の濫用を防止するために整備されるものです。これにより、株主が一回の株主総会で提案できる議案の数の上限を10件までに制限します。

取締役等に関する規律の見直し

取締役の報酬に関する決定手続きを透明化するために、「取締役の報酬に関する規律の見直し」も定められます。

会社法では、「上場会社等の取締役会は、定款の定めや株主総会の決議により取締役の個人別の報酬等の内容が具体的に定められない場合には、その内容についての決定方針を定めなければならない」としています。

今回の改正で決定方針を定めることで、経営の透明性の向上を図ります。同時に、株式会社が取締役に対して業績に応じた報酬を与えることも期待されるでしょう。

また、取締役の報酬等として株式又は新株予約権を付与する場合には「定款又は株主総会の決議により、当該株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならない」としています。

次に、「会社補償及び役員等のために締結される保険契約に関する規律の整備」も改正点です。会社補償とは、役員等が行った業務が法令に違反したり責任の追及を受けたりした場合に支払う費用や責任を、株式会社が代わりに補償することです。

この補償が適切に運用されるために、補償契約に関わる手続きや補償の範囲の明確化などの規定を新設することとしています。会社役員賠償責任保険(D&O保険)に関しても同様です。

さらに、「社外取締役の活用等」も改正点です。日本の資本市場への信頼感を高めるために、上場企業等に対して社外取締役の選任が義務付けされます。

また、親会社と子会社が取引するケースなど利益が相反する状況において、取締役会の決議をもって、社外取締役に対して株式会社の業務を行うことを委託できるとしています。社外取締役は、業務の執行によりその資格を失うことはありません。

その他の改正

その他の改正項目は、「社債の管理に関する規律の見直し」「株式交付制度の創設」の大きく2つです。

「社債の管理に関する規律の見直し」では、「社債管理者補助者制度」が新設されます。これにより、社債を発行する場合に「社債管理補助者」を定めて社債管理者を補助をすることができるようになります。また、社債権者集会により社債に関する債務の免除も可能です。

次に、「株式交付制度の創設」により、株式会社が子会社を作る時に、他の会社を買収しようとする会社が自社の株式を、売却する側の株主へ交付できるようになります。

さらに、「議決権行使書面の閲覧謄写請求の拒絶事由の明文化」や「会社の支店の所在地における登記の廃止」「成年被後見人等についての取締役等の欠格条項の削除」なども改正されます。

改正会社法を確認して早期の対応を

2021年3月から施行される改正会社法は、会社の組織や経営に大きなインパクトを与える内容です。

「株主総会資料の電子提供制度の創設」や「取締役の報酬の決定方針の明確化」など、新しく整備が義務付けられたものもあります。会社法の改正項目をしっかりと確認し、早めに対応をするようにしましょう。

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引用(参考)
注1:会社法 | e-Gov法令検索
注2:会社法の一部を改正する法律について|法務省
注3:会社法が改正されます|法務省

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