クラウドキッチンとは?

クラウドキッチンとは、飲食スペースを持たないデリバリー専業の業態・ビジネスモデルのことです。

一般的なレストランビジネスは、実店舗を構え、厨房で調理したものを飲食スペースで提供します。

これに対し、クラウドキッチンは実店舗を構えずネットで注文を受け、借りたキッチンで調理したものを消費者の自宅などにデリバリーします。

Uber Eatsや楽天デリバリー、出前館などのデリバリーアプリの一般化とともに、クラウドキッチンを活用して料理を提供する飲食店・シェフが増えつつあります。

クラウドキッチンは実店舗を持たず、存在が見えにくいことから「ダークキッチン」や「シャドーキッチン」とも呼ばれます。

また、クラウドキッチンというビジネスモデルを導入している飲食店を「ゴーストレストラン」や「バーチャルレストラン」と呼ぶこともあります。

フードデリバリーの市場規模

スマホの普及によってデリバリー・出前サービスが進化し、飲食店・ユーザー双方の利便性が高まったことから、フードデリバリーの市場規模は右肩上がりで推移しています。

NPD Japanが2019年4月に発行したレポートによると、国内フードデリバリーの市場規模は2015年が3,564億円であったのに対し、2018年は4,084億円と堅調に拡大しています(※)。

※出典:NPD Japan「<外食・中食 調査レポート>成長する出前市場、2018年は4,084億円で5.9%増」

2020年は新型コロナウイルスの流行によって中食ニーズが高まり、デリバリーの利用者が急増しています。

コロナショックが終息を迎えても消費者がレストランに戻ってくる保証はなく、むしろ外食を避けるのではないかという見方も多く、フードデリバリー市場は今後も大きく成長していくことが見込まれています。

クラウドキッチンの特徴と活用するメリット

従来のレストランビジネスとの比較をまじえながら、クラウドキッチンの特徴やクラウドキッチンを活用するメリットを解説していきます。

実店舗不要=開業コストの大幅削減

従来のレストランビジネスはいわゆる「箱ビジネス」で、実店舗を構えるのが大前提です。

家賃や内装費、インフラ整備や厨房設備など、開業コストは1,000万円超とも言われます。

好立地に出店するほど賃料は高くなりますが、売上が立地に大きく左右されることから莫大な初期投資をして開業するのが通常でした。

一方、クラウドキッチンは店舗を構える必要がなく、テーブル・椅子、内装も不要です。キッチンスペースの賃料だけで済むので、開業コストは大幅に下がります。

後述するKitchen BASEのようなシェア型のクラウドキッチンを利用すれば、初期投資はほとんどかからないでしょう。

立地の影響を受けにくいのもポイントで、リスクを抑えて飲食ビジネスを展開できます。

接客スタッフ不要=人件費の大幅削減

レストランビジネスは毎月の家賃や光熱費のほか、接客スタッフの人件費が負担になります。外食産業は従業員の離職率が高く、採用コスト・教育コストの負担も大きくなりがちです。

クラウドキッチンは、接客の必要がないので人件費を抑えられ、毎月の固定費を大幅に削減できます。

その代わり、料理の配送はUber Eatsなどのデリバリーアプリに外注する必要がありますが、実店舗を持つ飲食店に比べればランニングコストの負担は大きく軽減できるはずです。

オンラインデリバリー利用者数の増加=販売チャネルの拡大

近年、可処分所得の減少により外食を控える傾向にあり、共働き世帯の増加もあって中食を利用する人が増えています。

いつでもどこでも様々なジャンルのメニューを選び、専門店の料理を手軽に楽しむことができるオンラインデリバリーは、現代の消費者ニーズにマッチしたサービスだと言えます。

新型コロナウイルスの流行も影響し、2020年は中食ニーズが急増しています。

クラウドキッチンを活用したオンラインデリバリーは今後、飲食店の主要な販売チャネルになっていくでしょう。

クラウドキッチンの事例

クラウドキッチンの事例を、日本と海外で一つずつ紹介します。

日本の事例:Kitchen BASE(キッチンベース)

Kitchen BASE(キッチンベース)は、2019年に東京・中目黒にオープンしたシェア型のクラウドキッチンです。株式会社SENTOENが運営しています。

約20坪のシェアキッチンには4つの独立した厨房設備があり、デリバリー向け店舗や宅配弁当など、複数の入店者に月額制で提供しています。

キッチンを貸し出すだけでなく、入店者のマーケティング支援をおこなうのがKitchen BASEの大きな特徴です。

デリバリーの注文は基本的にオンラインでおこなわれるため、売上や客単価、リピート率などのデータが日々蓄積されていきます。

このようなデータを分析して入店者にフィードバックしているため、入店者はデータに基づいて客観的に経営を見直すことができ、メニューの改善など販促強化につなげることができます。

海外の事例:Rebel Foods

Rebel Foodsは、インドでクラウドキッチンを展開するスタートアップ企業です。

世界的に見てもインドはクラウドキッチンの成長が著しく、数多くのフードテックベンチャーが参入するほか、Amazonもインドのクラウドキッチンに参入し、競争が激化しています。

そのなかでRebel Foodsは、インド国内15都市で1,100ヶ所以上のクラウドキッチンを展開。

2020年5月には5,000万ドル(約53億円)の資金調達をおこない、インドの次期ユニコーン企業になることが期待されています。

クラウドキッチンのこれから

日本でもクラウドキッチンに参入する企業が相次いでおり、飲食業界の活性化が期待されている一方で、クラウドキッチンに懸念がないわけではありません。

今後、クラウドキッチンが台頭し、店舗を持たないゴーストレストランが増えていけば、当然、競争が激化していきます。

そうなると、プラットフォームで露出するための広告コストが高騰する可能性があります。

また、現状ではUber Eatsなどのデリバリープラットフォームに集客を依存しているため、テイクレートの上昇によって利益が少なくなるといったデメリットも考えられます。

飲食業界に新しい風を吹き込むクラウドキッチン

ネット注文&デリバリーに特化したクラウドキッチンは、まさに現代の消費者ニーズに合致するビジネスモデルです。

ゴーストレストランの増加によって競争激化が予想されますが、ユーザーにも、シェフにも、新たな体験をもたらす存在として期待が寄せられています。

独立を考えるシェフにとってもクラウドキッチンは心強く、開業にともなうコストやリスクを大幅に下げることができます。

レシピと調理技術さえあれば、誰でも飲食ビジネスを始められる時代が到来しつつあるのです。

既存の飲食店も、近い将来はクラウドキッチンやオンラインデリバリーの仕組みを活用し、マルチチャネルで商品を提供することが必須になっていきそうです。

Frontier Eyes Onlineでは、ビジネス・経済に関する様々な情報を提供しています。

よろしければ、メルマガのご登録をお願いします。

関連記事

中国が席巻、スマホゲームの新潮流~中国の開発力と資金力の活用~

中国のゲームが、世界を席巻している。PCオンラインゲームやスマホゲームで世界一の市場に成長しているのに加え、開発力でも圧倒している。テンセント(騰訊)など中国大手は、豊富な資金を背景に各国のゲームメーカーに出資。日本のスマホゲーム市場でも、「荒野行動」(NetEase)など、中国開発タイトルが上位にランクインしている。

エッジAIとは?概要からクラウドAIとの違い、事例まで解説

カメラを使った「顔認証システム」や、無人での自律走行が可能な「ロボット農機」など、末端のデバイス(カメラ、農機)に直接学習モデルを実装するケースが増えてきました。システムの末端(エッジ)にAIを搭載しているため、この技術を「エッジAI(edge AI)」と呼びます。 エッジAIの市場規模は年々拡大をつづけ、多くの産業分野で注目を集めています。本記事では、エッジAIの概要やクラウドAIとの違いについて、実際の導入事例を紐解きつつ解説します。

「ベビーテック」とは?育児支援に役立つITの活用事例や市場動向を解説

核家族化の進行や、夫婦共働きの世帯の増加により、以前と比べて子育てにかけられるリソースが減少しています。そこで、テクノロジーを使って育児・保育の負担を減らす試みが、「ベビーテック(Baby Tech)」の推進です。 ITやIoTの活用によって、赤ちゃんの授乳や食事、知育、健康管理、安全対策は、以前よりも手軽で効率的なものになりつつあります。本記事では、ベビーテックの概要や、家庭や育児施設での活用事例、近年の市場動向の変化について解説します。

ランキング記事

1

新たな消費スタイル「トキ消費」とは?モノからコト、さらに次の消費行動へ

誰もがスマートフォンを持ち、SNSを通じてリアルタイムに情報や体験を共有する現代、「トキ消費」という新たな消費スタイルが生まれています。企業の経営者やマーケティング担当者は、最新の消費行動やニーズのトレンドを抑え、新たな戦略を立てなくてはいけません。本記事では、新たな消費スタイル「トキ消費」や「イミ消費」の特徴や、従来の「モノ消費」「コト消費」との違いについて、具体例を挙げながら解説します。

2

村上春樹さんから学ぶ経営①~作品に潜む成功へのヒント~

弊社のネットメディア立ち上げにあたり、できれば面白いことを書きたいと考えました。筆者の出自はハイテク産業の調査であり、ハイテク産業に関するあれこれを書くことが期待されていることでしょう。ただ、それではつまらない。なにせ私の著作の一つは『経営危機には給料を増やす ~ 世界一位企業をつくった天邪鬼経営』(日本経済新聞出版)。もちろん、時にはハイテクさんに関することも書くとして、変わった切り口で経営を議論していきたいと考えました。

3

ドローン宅配のメリット&課題を解説!物流に革命を起こすのはAmazonか?楽天か?

かねてから物流業界は、ドライバー不足や再配達の増加が課題とされていました。そこに、新型コロナウイルスの影響で宅配需要が急増し、物流業界はいまだかつてない窮地に陥っています。そんな物流業界の救世主として期待を一身に集めているのが「ドローン宅配」です。 今回は「空に革命を起こす」と言われるドローン宅配について、メリットや懸念点などを中心に解説していきましょう。

4

「PCR」で読み解くポストコロナのサービス業

「つながりたい」「つながりたくない」。ポストコロナの消費者は、矛盾する2つの欲求を抱える。サービス業は両立できないニーズにどう応えるのか。「PCR」(Place/Point,Content,Remote)をキーワードに読み解いた。

5

「池袋」サブカルの聖地への進化

池袋が、サブカルの聖地としての存在感を増している。女性のアニメファン層を取り込み、秋葉原と並びたつ存在に成長した。「消滅可能都市」に指定されるなど危機感を強める豊島区によって、積極的な施設整備が進められており、勢いはさらに加速しそうだ。

人気のキーワード