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ボディオン支援とは 概要から事例まで解説
近年、PEファンドによる買収やM&Aの件数が増加傾向にある。PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)において、外部の専門家を活用し、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)を運営する際、その人材のコミットメントは重要な要因となる。組織改革においても、戦略の提案のみならず、実行支援まで担うコンサルティングファームは増加しており、その需要は高まっている。いずれにせよ、プロジェクト成功のためには、強力なコミットメントを前提にした支援が必要となる。そこで今回は、従来の「ハンズオン支援」より、一層深くプロジェクトへ関与する「ボディオン支援」について紹介する。
ボディオン支援とは
ボディオン支援とは、専門人材が支援先企業に出向し、役員・社員として改革を推進する取り組みである。専門人材が自ら意思決定に参画することで、早期の結果創出を目的としている。
ハンズオン支援との違い
ハンズオン支援では、支援先企業に入り込み、生の声を聴きながら“アドバイザリー”として自立支援を実施する。常駐するケースもあり、ただ戦略を立てるだけではなく、実行フェーズにおいてクライアントと並走することで、クライアントが自走できるように支援する取り組みとなる。支援先の経営に直接参画し、共に課題解決をする手法である点は、ボディオン支援と同じである。
しかし、ハンズオン支援には課題が存在する。それは、プロジェクトのコミットメントや、支援スコープが限定される点である。
直接参画するとはいえ、あくまで社外の人間としての関与である。そのため、意思決定がクライアントの経営・メンバーに委ねられてしまい、(無論コンサルタントとして一定のスタンスを取るものの)基本的にはクライアントが判断するための材料を揃えることにフォーカスすることになる。そのため、成果の効果測定として書面のアウトプットが求められ、スコープを切った支援になりやすい。
また、自ら意思決定しないため、結果に対するコミットメントも限定的になる。ネガティブな言い方をすると、意思決定を自ら行わないため、結果責任はクライアントに押し付ける形になり、多くのクライアントにとってのゴールである「企業価値の向上」に対する貢献は限定的になりやすい。
これらの課題を解決するのがボディオン支援である。
ボディオン支援においては、支援先の役職や名刺、場合によっては部下を配置してもらう。それによって、プロパーメンバーと同様、責任をもって自ら実行する(取締役の場合は、名実ともに経営責任をもって実行する)点がハンズオン支援と大きく異なる点といえる。
特に「経営者」として支援する場合は、基本的に経営結果に対する責任を負うため、財務指標としての結果が問われる。そのため、例えば「社内協議用」として使われるような内向きのペーパーワークが省かれ、より結果に直結する活動にフォーカスできる。
実際には、「経営チーム」として「経営者」をサポートする人材がセットで派遣されるケースが多い。いわゆる“プロ経営者”を単独で採用することとの違いは、改革成功の確度が向上し、改革のスピードも早められる点である。なぜなら、改革の肝となるクライアントのプロパー人材に経験・スキルが不足する場合においても、経験豊富なチームメンバーで補填することが可能となるからだ。さらに、ファーム側の経営経験豊富なシニアスタッフが派遣された経営チームをモニターすることにより、経営チームメンバーの経験・スキルに属人化しない体制を敷けることも、成功確度を高める要因になる。
具体的なボディオンの取り組み
それでは、ボディオン支援には具体的にどのような取り組みがあるのだろうか。対象会社の規模やステージ、課題によっても異なるが、一部の例を紹介する。
企業価値向上支援においてCFO、COOとして出向資本構成変更
PEファンド傘下の数百億円規模の企業支援において、当社メンバーが経営者(CFO、COO)として出向した事例である。
予算策定・予実管理体制の構築に終わらず、それを実行するために役職をクライアントからいただき、ボディオン支援を行った。対象会社のCEOをはじめとした経営陣と合議の上、「経営者」目線で優先的にやるべきことを判断した結果、主に以下の取り組みについて現場を指揮しながらスピーディに実施し、企業価値の向上に直接的に寄与した。
- 経営課題の抽出
- 重要施策を検討・実行するための分科会の体制構築・運営管理、及び各分科会を自らリードし効果創出(マーケティング面、営業面、組織体制面等)
- 経営モニタリングの仕組構築・運営
- 資金繰り管理の仕組構築・改善施策の実行(運転資本の改善、追加借り入れのリードなど)
企業支援において経営企画部長として出向
次に、同じくPEファンドが買収した1000億円強企業のPMIに参画した事例である。
大きな改革を迫られる状況下で経営陣が入れ替わり、改革の旗頭が不在となる中、経営企画部長を含むチームで出向した。100日プランの策定、実行体制を構築した後、当社メンバーが経営企画部長というポジションをクライアントからいただき、対象会社の経営陣と共に自ら実行を推進した。
具体的には、経営企画部での定常的な業務としての予算策定、月次会議体の整備・運営に加え、コスト削減等の合理化施策を実行。さらに、改革につながる重要施策別ユニットとして各分科会を構築した。共に出向したメンバーが個別にリード・サポートしつつ、経営企画部でモニタリングし、その進捗や結果に対してコミットした。
CxOとしての支援ではないものの、対象会社において経営の中枢機能を担う経営企画部に出向し、改革を文字通り「自分事」として推進した。
共に汗をかき成果を出すボディオン支援
昨今、ChatGPTに代表される生成AIが世界的に注目を集めており、今後ビジネスの場での活用もますます進んでいくと予測される。
実際に、ソフトバンクグループの代表取締役会長兼社長である孫正義氏は、ディベート相手としてChatGPTを使用していると発言している。こうした動きが加速していけば、コンサルティングサービスのような、人間が考えて論理的に正しい答えを導くことの価値が希薄化していくことも想定されよう。
とはいえ、このような時代においても、アドバイザリーではなく、自ら意思決定に関与し、強いコミットメントで結果を追求するボディオン支援の価値は揺るがないのではないだろうか。
当社の経営執行支援部門では、ボディオン支援を提供しています。当部門のメンバーは様々なバックグラウンドを有しており、事業会社(総合商社他)、金融機関、会計士、コンサルタントなど、複数の領域にまたがる経験を持つ人材が多く在籍しています。
また、自前に拘らず、社内外のエコシステムをフル活用して、企業価値向上に適切な人材を参画させてご支援することが可能です。
また、ボディオン支援のコミットメントを体現すべく、成功報酬型や共同投資を含む多様な報酬体系、柔軟なスコープ設計に対応しています。ご興味がある場合はご相談ください。
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