BIMとは?コンピュータ上で建設する仕組み

BIM (Building Information Modeling)とは、コンピュータ上の専用ソフトウェアを用いて建材や家具などのオブジェクトを組み合わせ、建造物の3Dモデルを再現する仕組みです。

オブジェクトは、それぞれが幅・高さ・奥行きなどの寸法データや、木材か金属かといった素材データなどの細かい情報を持っており、現実に近い形で仮想的な建設作業を可能にします。

BIMでの作業の流れ

BIMの機能が備わったソフトウェアを用いて、実際に作業する場合の流れをおおまかに紹介します。

1.3Dモデルの構築

まずは、オブジェクトを組み合わせて3Dモデルを構築します。オブジェクトは、寸法や素材データのほかにも、品番やメーカー、材料単価などの情報を保有するため、設計だけでなくメンテナンスや施工管理にも役立ちます。

2.ビューおよび集計表の作成

構築した3Dモデルから、平面図・立体図・断面図などのビューや、面積表や数量表などの集計表を作成します。それぞれ3Dモデルと連動するため、オリジナルである3Dモデルを修正すれば、ビューと集計表はすべて自動修正され、手戻りが起きにくくなります。

3.設計ドキュメントの作成

ビューや集計表を用いて、今後の業務フローで使用する正式な設計ドキュメントを作成します。例えば、専門家が理解するための平面図や仕上表であったり、専門家でない人でも完成予想がイメージできるパースなどが挙げられます。

早期にクライアントと合意形成したり、あらゆる関係部門との共通認識を保つため、対外的なドキュメントは必ず作成しましょう。

BIMを導入するメリットは4つ

BIMを使用することで得られるメリットは、主に次の4つが考えられます。

正確な企画・設計が可能

BIMでは、建造物のどの部分にどのような素材・強度・色の建材を使うのか、内外装はどういったイメージになるのか、といった施工時や完成後を想定した設計を行います。

また、ビューや集計表といった形で設計内容をアウトプットして検証し、3Dモデルを再調整するサイクルを繰り返すことで、クライアントと建築士の合意形成がスムーズに進みやすくなります。

結果として、クライアントが求める完成形に限りなく近づくための正確な企画・設計が可能となるのです。

業務フロー全体で情報の統合・共有が可能

BIMは、設計から施工、維持管理までの情報を可視化し、管理を一貫して行うことができます。つまり、従来は設計や施工といった工程ごとに分断されていた情報が統合されるのです。

これにより、クライアントや建築士、建設会社や設備専門会社といった関係者が建設に関する情報を共有でき、生産性の高い業務の実現が期待されます。

コストの低減が可能

BIMによって、正確な企画・設計が可能となり、手戻りに伴うコストが削減できる点も副次的なメリットですも。

また、業務フローがスムーズに進めば工程の短縮、ひいてはプロジェクト全体のコスト削減にも寄与します。

施工現場におけるリスク低減が可能

BIMを使ったシミュレーションは、建造物単体だけでなく、施工現場全体を対象としたモデリングも可能です。

つまり、施工が始まる前段階から現場作業に潜む労災リスクを分析し、作業員への研修や指導に活かすことができます。

BIMと3DCADとの違い

3DCADは、BIMと同様にコンピュータ上で建造物の3Dモデルを作成し、立体的な図面設計を行うためのツールです。概要が似ているため混同しがちですが、BIMと3DCADには主に次のような違いがあります。

BIMは2次元の図面が作成不要

3DCADでは、最初に線で描かれた2次元図面を作成する必要があります。その図面情報を元に3Dモデルを作成し、視覚的に見やすい設計にしていきます。

つまり、3Dモデルの完成後に設計に変更があると、関連するすべての2次元図面と3Dモデルにも影響が出てしまいます。

一方、BIMの場合は最初に3Dモデルを作り、それを元に2次元図面を作成します。設計に変更があったとしても、3Dモデルのみを修正すれば済み、迅速な対応が可能です。

例えば、BIMの3Dモデルを見ながらクライアントと打ち合わせをする場面で、「やはりこの部分はこうしたい」という要望を受けたとき、リアルタイムで3Dモデルを修正することができます。

BIMはパーツ単位で情報を持っている

3DCADとBIMは、それぞれ建材や家具などのパーツを組み合わせて建造物の3Dモデルを作る点では共通しています。

しかし3DCADの場合、パーツは形状や寸法といった基本的な情報を持つのみで、具体的な材料や仕上げの情報は注釈として図面に改めて記載する必要があります。つまり、3Dモデルの設計情報と、そこに付加する情報を別々に管理しなければなりません。

一方のBIMでは、パーツが形状や寸法だけでなく、品番や単価などの情報を持っており、それらの情報を元に2次元図面や発注書、見積書などの資料を自動生成できます。

したがって、3Dモデルさえ正しい内容であれば、そこから生成する図面や資料も正しく、情報を一元的に管理することができます。

BIMを導入する上で立ちはだかる課題

BIMは設計の効率化だけでなく、受発注者それぞれの業務フローを改善する画期的なツールです。

しかし、BIMの技術習得や導入を検討する際には、次のような課題があることも覚えておきましょう。

  • 3DCADと比較して導入コストが高い
  • プロジェクト関係者全員が情報共有するための仕組みが必要
  • BIMモデルの著作権の取り扱いについてプロジェクトごとの協議が必要
  • BIMを扱える技術者の採用や教育が必要

BIMは専用のソフトウェアや高性能PC、BIMモデルデータを社内外で共有するシステムなどのイニシャルコストが大きくなります。

また、設計事務所や建設会社、設備専門会社など多数の組織が足並みを揃えるための制度も重要です。BIM導入後を想定した人員配置や組織体制、予算組みも重要となるでしょう。

BIMは建設業界の未来を切り開く

BIMの有用性は世界的に認められており、建設業界への導入は各国で積極的に推進されています。

BIM先進国とされるシンガポールでは、5000㎡を超える建物の意匠・構造・設備の確認申請をすべてBIMのデータで提出することを義務付けています。また、北欧フィンランドでは、2012年に国際レベルの共通BIMガイドライン「Common BIM Reuirements(COBIM)」が発表されました。

日本国内においては、国土交通省が2010年に「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクト」を開始し、2012年には公益社団法人日本建築家協会が「BIMガイドライン」を発行しています。

日本建築士事務所協会連合会が2019年9月に発表した「建築士事務所のBIMとIT活用実態にかかわる調査」によると、会員の30%がBIMを導入しているという結果が出ており、国内の建設業界でも着々と普及しつつあることがわかります。

新人研修や社内研修にBIMを導入する企業もあり、BIMを扱える人材の育成にも注目が集まっています。これからの建設業界を考える上で、BIMは必須の技術となるでしょう。

<参考>
『施⼯BIMのスタイル』
官庁営繕事業における BIM モデルの作成及び利用に関するガイドライン
建築士事務所のBIMとIT活用実態にかかわる調査結果について
シンガポールのBIM状況
フィンランドのBIM状況

ランキング記事

1

地銀再編とは? (予想される変化と今後の動向を解説)

地銀再編の言葉が使用されて久しいが、今後の再編に対する見方は様々だ。その場合に重要なことは、地方銀行の収益性向上の視点のみならず、地銀再編によって顧客(消費者・企業)に対してどのようなメリット・デメリットがあるかの視点である。本稿では、顧客視点からみた地銀再編の姿について解説する。

2

「前経営陣批判」の罠 現経営陣のネガティブ・バイアスを見分けよう

業績不振の企業経営者の多くは、前経営陣の負の遺産を(無意識的に)強調する傾向がある。歴史を紐解くと、新たな為政者は自らの正統性を主張するため、その前の時代を必要以上に貶めている。インタビューなどで経営陣と接する第三者として我々は、この精神構造を十分に割り引いて企業分析する必要がある。

3

世界でシェアの高いドローンメーカーは?国内メーカーの展望も解説

ドローンは、世界中の産業、工業など幅広い場面で活躍しています。無人で飛び回りさまざまな業務をこなすドローンは、使い方次第でビジネスを大きく変えられる先進技術です。 ドローンの有用性に注目が集まる中、ドローンのメーカー間のシェア争いも激化しています。ドローン市場はメーカーの新規参入や入れ替わりが激しいのが特徴です。日本のドローンメーカーも、より高度な技術開発を急いでいます。 そこでこの記事では、世界でシェアの高いドローンメーカーを解説。また世界でシェアを伸ばす国内ドローンメーカーについてもご紹介します。

4

白酒偏重、中国の酒造業を分析 「貴州茅台酒」時価総額トヨタ超え

中国の酒造業界で、蒸留酒「白酒」(báijiǔ)の割合が増加している。「貴州茅台酒」(Moutai,貴州省)のように、時価総額でトヨタ自動車を上回る企業も現れた。宴席の減少、健康志向、高齢化社会に向かう中でも、どうして拡大傾向を見せているのか。中国の酒造業の現状について考察する。

5

横浜市のIR(統合型リゾート)事業者有力候補 ゲンティン(Genting Singapore)とは

横浜市における統合型リゾート(IR)の事業者の選定が大詰めを迎えている。2021年6月11日に締め切った公募では、ゲンティン(Genting Singapore)とマカオでカジノを運営するメルコ(本社は香港)を中心にした2グループが応募したとみられる。この記事では最有力と目されるゲンティンを通じ、IRの方向性や他企業の参入機会を探る。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中