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どうして?息の長い「擬人化ブーム」を読み解く
軍艦から動物、細胞にいたるまで、何でもキャラクターにしてしまう「擬人化」ブームが続いている。2013年に軍艦を擬人化したゲーム「艦隊これくしょん」の登場以来、既存の有力IPに頼らず、オリジナルキャラクターを「量産」する手段として「擬人化」は広く認知されるに至った。
何でも「擬人化」 スマホゲームとの相性抜群
擬人化は、古くは鳥獣戯画(平安時代末期〜鎌倉時代書記)から、アンパンマンなど幼児向け作品まで、幅広くつかわれてきた手法だ。2010年代に入ると先述の「艦隊これくしょん」、2016年に日本刀をイケメンに擬人化したゲーム「刀剣乱舞」など、ヒット作が相次いだ。
アニメにおいても「はたらく細胞」「けものフレンズ」などのヒットコンテンツが生まれたり、企業が自社製品を擬人化したりするなど、何でも「擬人化ブーム」とも言いうる状況が生み出された。
「擬人化」は、ライセンス負担なし、もしくは軽微で、特徴のあるキャラクターを量産しうる。大量のキャラクターを登場させる必要のある、スマホゲームとの相性が極めて良い。
直近のヒット作は「ウマ娘」
現状では、何でも擬人化すればヒットに結び付くという風潮は廃れたものの、連綿と「擬人化コンテンツ」創出の試みは続いており、直近のスマホゲームでも「擬人化ゲーム」の大ヒットタイトルが見られる。
サイバーエージェント傘下のCygamesが2021年2月にリリースした、競走馬を美少女に擬人化したスマホゲーム「ウマ娘」は、2021年3月上旬には、App Store、Google Playの売上ランキング首位をキープしており、新規タイトルとしては瞠目すべき滑り出しとなっている。
同タイトルは、擬人化されて登場キャラクターとなる過去の有力競走馬の、実際の戦歴をベースとしたストーリーを背景に持ち、ゲーム配信とは別にアニメ放送でも世界観を浸透させるというメディアミックス展開が行われている。
過去の擬人化ゲームとの対比では、先行アニメ放送と、現実のドラマをモチーフにしたストーリー展開が、特筆される。前者に関しては、通常、オリジナルスマホゲームのアニメ化の場合は、ゲームが先行してヒットしてからアニメ化となるケースが多いものの、「ウマ娘」は、ゲーム開発遅延の影響もあり、アニメ先行によるメディアミックス展開となった。
ゲーム開発遅延への対応や、先行アニメ放送という資金負担を要するオリジナルタイトルのリリースを成功させたことは、ヒットタイトルを複数抱え強力な資金力を有するスマホゲーム大手Cygames社ならではと言えるだろう。
後者に関しては、単なる対象物の「擬人化」ではなく対象物に関わるドラマを包含した「擬人化」、すなわち、世界観やキャラ背景の深化が、従来の「擬人化ゲーム」との差異と言えるだろう。
総括すれば、先行アニメ放送も含め深化した世界観やキャラ背景を丁寧にプレーヤーに浸透させたことが、新しい擬人化ゲームである「ウマ娘」のヒットの一因と考えられる。
世界観を深化
このような世界観やキャラ背景を深化させてヒットした擬人化ゲームの成功例としては、2020年にアニプレックス社よりリリースされたスマホゲーム「ツイスティッドワンダーランド」も挙げられる。
同タイトルは、複数のディズニーアニメに登場するキャラクター群を、仮想世界観上にイケメンキャラとして擬人化させており、ディズニーアニメのストーリーをベースとしたキャラ設定が魅力の一つとなっている。このキャラ背景の深化は、App Store売上ランキングの上位キープに貢献しているようだ。
擬人化アニメに関しても、先ほど挙げた「はたらく細胞」は、人体内の数十兆個もの細胞の活動を背景にしたものであり、アニメが3期まで放送された「文豪ストレイドッグス」も、実際の文豪とそれにまつわるドラマを含めて擬人化されストーリー展開されたものと考えられ、「擬人化コンテンツ」の世界観やキャラ背景の深化が見られる。
しばらく続く擬人化ブーム
「擬人化」は、ライセンス負担を軽減しながら、特徴のあるキャラクターを量産できることから、ゲームとの相性が極めて良い。そのため、今後もオリジナルコンテンツ創出の手段として活用されていくと考えられる。どのような「擬人化コンテンツ」がヒットを生み出すか注目していきたい。
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