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【2026年の自動車業界】注目は輸入車市場、EV・日本車が牽引か
2026年は国内の輸入車市場が活性化しそうだ。日本では輸入車が年間30万台程度売れており、国内市場全体の約7%を占めている。輸入車といえば、BMWやメルセデス・ベンツなど欧州メーカーのイメージが強いが、2026年は中国メーカーも攻勢を強める。
日本メーカーが海外で生産して日本に輸出する「逆輸入車」も増えており、2026年はその傾向が鮮明になるだろう。2026年に発売が予定されている車種とともにその背景を探る。
中国EVメーカー、軽自動車市場で日本に攻勢
中国電気自動車(EV)メーカーのBYDが、2026年夏に軽自動車のEV「RACCO」を日本で発売する。生産は中国で行う。BYDは、高いコスト競争力を武器にして、中国だけでなく、東南アジアや欧州、南米に勢力を拡大しているが、RACCOは同社にとって初めての海外専用設計車だ。
日本の軽規格に対応し、車室空間が広いスーパーハイト(超背高、全高1,700mm以上)型で、スライドドアを採用するなど日本人好みの仕様を追求している。価格はまだ公式発表されていないが、競争力の高い価格設定が予想される。
BYDは2023年に日本市場に本格参入し、すでにスポーツ多目的車(SUV)などのEVを販売しているが、これまでの累計販売は7,000台超と少ない。日本の自動車市場で約4割を占める軽自動車市場に新規車種を投入し、巻き返しを図る。
中国勢ではこのほか、国有大手の広州汽車集団も2026年にEVで日本に参入する計画が明らかになっている。同社の中国国内での販売は競争激化で減少しており、海外に活路を求める中で日本を選んだようだ。
EV普及が遅れる日本、中国メーカーが成長余地に注目
日本はEVが普及していない。2024年のEV販売比率は、中国25%、欧州(英仏独)19%、米国8%に対し、日本はわずか1%。日本の自動車市場全体は縮小傾向にあるが、EVは伸びしろがあるとみて、中国メーカーがEV参入を決めている。
国産車志向が強い日本で中国車がどれほど受容されるかは見通しづらいが、中国メーカーの低価格攻勢で販売競争が激化する可能性がある。
インド製逆輸入車も2026年の注目はEV
インドからの逆輸入車が増えていることは、2024年の記事で取り上げた(ホンダ28年ぶり首位 逆輸入車から見るインド自動車産業の実力)。インドからの逆輸入車においても、2026年の注目はEVである。
スズキが2026年1月に発売するEV「eビターラ」はインド製だ。同社としては初めてのEVとなる。日本で人気の小型SUVセグメントに属し、価格は約399万円から。国の補助金を使えば約312万円からとなる。価格水準は米テスラ、トヨタ自動車、日産自動車などの同様の車格よりも低く設定した。インド製であることがその価格競争力を支えている。

eビターラ/画像提供:スズキ株式会社
インド製の逆輸入車ではスズキのSUV「フロンクス」、ホンダのSUV「WR-V」が一定の販売量を確保しており、輸入車に占める逆輸入車比率は急速に拡大している。インド製はすでに日本市場で受け入れられつつあり、eビターラも国内EV市場の拡大に寄与する可能性がある。

出所:日本自動車輸入組合、暦年、2025年は1-11月
米国からの逆輸入車の狙いはハイエンド層か
日米関税交渉では、米国で安全認証を受けた米国製自動車は追加試験をせずに日本で販売できるようにすることで合意した。米トランプ政権が日本の対米貿易黒字を問題視していることが背景にある。これを踏まえ、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車が米国からの逆輸入車投入を検討している。
トヨタは12月、米国で生産するセダン「カムリ」など3車種について、2026年からの日本市場投入を目指すと発表した。ホンダや日産自動車では米国仕様のSUVが取りざたされている。カムリは米国で年間約30万台も売れるトヨタの量販車種の一つだ。だが、日本では消費者の「セダン離れ」が進んでいるため、日本で売れ筋となることは考えにくい。世界的なSUVブームで米国でもセダン離れは起きているが、日本ではその傾向がより顕著と思われる。カムリはかつて日本でも販売していたがこうした市場環境を背景に2023年に日本での販売を終了した。

出典:Toyota Camry Brings Bold New Nightshade Edition to Lineup in 2026|Toyota USA Newsroom
また、カムリに限らずホンダや日産のSUVも含め、米国仕様車はサイズが大きく日本の狭い道路事情にそぐわない。インドや中国と比べて、米国製は高コスト体質であることに加え、輸送費、円安などを考えると価格を高く設定せざるを得ないだろう。したがって、米国からの逆輸入車はボリュームゾーンではなく、輸入車ファンや高級車ニーズに合わせたハイエンド市場を見据えた販売戦略となる公算が大きい。
国交省の認証体制が整い次第、新たな逆輸入車の販売が本格化か
国土交通省は書類審査のみで車両の安全性を認証する大臣特例制度の新設を検討している。2026年1月下旬にも関連法令が公布、施行される。ホンダと日産の逆輸入車も、2026年から発売される可能性がある。多くの販売量は期待できないが、日本の消費者からみれば選択肢が増えることは望ましいのではないか。
参考文献
日本自動車輸入組合
経済産業省「自動車をとりまく国内外の情勢と自動車政策の方向性」
日本専用に2年でゼロから開発した軽EV「BYDラッコ」の勝算は?軽自動車の常識を変えられるのか? | Motor-Fan
2025/11/05 時事通信ニュース 米車販売「要望あれば検討」
2025/11/08 日本経済新聞 朝刊 13ページ 軽EVで「ファーストカー」目指す BYDジャパン 劉学亮社長(Leader’s Voice)
2025/12/11 日本経済新聞 広州汽車、EVで日本参入 来夏に小型車やSUV販売 中国勢、競争激化懸念も
2025/12/11 朝日新聞 朝刊 6ページ 存在感狙う、トヨタの米戦略 今後5年間、最大1.5兆円投資へ
SUVs vs Sedans: The Data Behind America’s New Favorite Car – Autoblog
米国生産トヨタ車の26年からの日本導入を検討 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
2025/12/20 東京読売新聞 朝刊 6ページ トヨタ 米から逆輸入へ 「カムリ」など3車種



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