コンサルタントスキルの中での「考え方・行動特性」の位置付け


ここで言う「考え方」とは、仕事の判断基準を自分の中に作ることである。

前回の繰り返しになるが、コンサルタントは決まった業務フローやマニュアルがないため、常にどこにプライオリティを置いて仕事を進める必要があるかを理解しておくことが特に重要だからである。

続いて、必要な「行動特性」とは、先を読む習慣である。これも前回の繰り返しになるが、コンサルの仕事は、

  • 相手ありき
  • 時間が限られている
  • 常に結果が求められる

であるため、常時5手先を想像し具体的なアウトプットや段取りを考え続けること、そしてそれを日々のタスクに落として込んでいくことが重要となる。

この土台がしっかりしていなければ、上位のスキルを正しく使えない、使いどころを間違えることになる。

著者が「考え方・行動特性」の重要性に気づいた瞬間


詳細の説明に入る前に、前回と同様に著者の実体験を紹介しておきたい。

前回、考え方の一つに、「コンサルタントの仕事は、基本的に商品や答えのないものであり、基本的に仕事のゴールが相手にある点を認識しておく必要がある」と述べた。

著者が事業会社からコンサルタントへ転職してある程度期間が経ったころ、なんとなくこの考え方に気づき始め、相手が何を考えているか、相手が何を望んでいるか、そのために自分は何をすれば良いか、という視点に立ち行動することで徐々に上司・クライアントに評価されるようになっていった。

しかし、その中で新たな課題が見えてきた。1つのアウトプットに集中すると他のアウトプットのクオリティが下がる。少しでも上司の思考を読み違えるとキャッチアップに時間がかかり過剰労働になる。その結果、思考が鈍くなりまたミスをするという負の連鎖に陥るようになったのである。

そこで上司から言われたことが、「セルフマネジメント(自己管理)ができていない」であった。著者はこの言葉の真意を理解するのに時間がかかったが、相手の期待値に寄り添うだけで自分の意思がなくなっていることに気づいた。悪い言い方をすれば、クライアントや上司の奴隷のようなスタンスとなってしまっており、自分の意思を持って自分のタスク及び自分が関与するプロジェクトの進行をコントロールする意識が欠如してしまっていたということだった。どちらかというと相手があることだからと言って初めからコントロールできないことだと決めつけていた。

そこに気づいてからは著者の行動やアウトプットは大きく変わった。仕事のゴールが相手にあるにしても、自分としてどうしたいかを意思表示するようになった。これにより、自分の方向性が仮に間違っていても軌道修正が格段に早くなったし、自らプロジェクトの進行をコントロールするためにプロジェクトの先を読んで行動するようになり仕事の段取り力が格段に上がった。

ここでの著者の学びは、正しいマインドセット(考え方)を持っていないといくらロジカルシンキングや仮説思考を学んでも事態は好転しないということだった。

どうだろう。「考え方・行動特性」の重要性が理解頂けただろうか。では今回の本題に入り著者が考えるコンサルタントの「考え方・行動特性」について紹介していきたい。

コンサルタントに必要な「考え方」

重要なのは、まず仕事をどう理解するか(「仕事の捉え方」)、次にその仕事にどう向き合うか(「成果への責任」と「自我の維持」)、その中で自分はどのように動けば良いか(自己行動の制御)、この一連の思考の流れを自分の中に確立することである。これによって、立ち戻れる自分なりの仕事の判断基準ができる。

仕事の捉え方

まず、起点となるのは「仕事の捉え方」である。

繰り返しになるが、コンサルタントという仕事(事業会社であれば企画系の仕事も当てはまる)は、すべては相手ありきであり、論点やゴールは基本的に相手の中にあると述べた。

この背景にあるのは、いくら自分で良いと思う提案を行っても相手が納得・満足いく提案でなければ価値はないということである。更に言えば、相手が自分の提案を聞いて実際にアクションを起こさなければ本当の意味での価値に繋がらない。

この考え方を理解していないと、自分がどこを目指して仕事をすればいいのか、どこまでやれば良いのか、そのために何をやれば良いのかが分からなくなる。

言われると当たり前のように聞こえるが、この視点が持てずに苦労するコンサルタントは多い。例えば、大企業で完成度の高い定型業務を長くやってきた中途の方などである。

なぜなら、長年、組織に決められた規則や手順に従って仕事をしていると、答えのない仕事へのアプローチが全く分からなくなるからである。事務的な業務に限らず、企画の仕事においてもこの状態に陥る可能性は高い。例えば、経営企画などでも毎年決まった予算組みや管理など定型の仕事である。当然仕事を標準化するのは大切なのだが、常にこれは誰をどう動かすための仕事なのか常にその背景を問いたい。

成果への責任

次は成果へどう向き合うか、「成果への責任」である。

コンサルタントは高いフィーをもらい、サービスを提供する。したがって、プロフェッショナルとして、その価値に見合うだけの成果(アウトプット)にコミットすることが必要である。

その際、他業界から転職した中途のコンサルタントが意識した方が良いのが、「自己成長よりアウトプットを優先する」ことである。

業界未経験入社のコンサルティングが陥りがちなのは、自身のアウトプットの質を高める手段が「勉強して自分の能力を引き上げること」1択になる点である。成果を出す手段は以下のようにたくさん存在する。

  • 先輩コンサルに聞く
  • 他の事例や資料を借りる(自分の理解はあとで勉強して引き上げる)
  • プロジェクトマネージャーに何度も見てもらってクオリティを上げる

事業会社で長い期間過ごしていると、基本的に能力を大幅に超える仕事は与えられない。長期で基礎固めをしていく中で能力に見合った仕事を徐々に割り振られる。そうなれば、どうしても能力を上げてからアウトプットの質を上げようという思考になってしまうのだ。

また、加えて重要な視点は、プロジェクトに対する自分の貢献を考えることである。

自己成長よりアウトプットを優先はするものの、付加価値を出していなければ自分がプロジェクトにアサインされる意味はない。

よくあるのは自分の実力を客観的に理解できず、求められてもいない、できもしない作業に時間を浪費するケースである。コンサルタントとして大切なのは、クライアントの成果を第1に考え、自分に何が求められているか、自分が何で貢献できるかを考え行動することである。

自我の維持

そして、「成果への責任」と同時に考えなければならないのが、「自我の維持」である。

著者の経験でも述べたように、相手が期待する成果へ過度に傾注し過ぎると単なる作業者、便利屋になり、クライアントや上司の要望に振り回されるだけになる。

そうならないために重要なことは、自分の意思を明確に示すことである。冒頭、仕事の捉え方では「すべては相手ありきであり、論点や答えは基本的に相手が納得するかが最終的なゴールである」と述べたが、まずは先に自分の意思を示さなければならない。

よくあるのは、プロジェクトマネージャーが言ったことを実現しようとして自分の意思がなくなるケースである。そうなってしまうと自発的に動くことができなくなるし、自分の中に軸がないので、相手の意見の理解度も低くなる。

ただ、自分の意思を示すと言っても、最初は筋の良い意見を出せなかったり、自信がなかったりするだろう。

しかし、最初は精度を気にせず自分勝手に考えれば良いと筆者は考えている。なぜなら、そこから仮説や自発的な動きが生まれていくからである。

自己行動の制御

最後は自分としてどう動くか、「自己行動の制御」である。

プロジェクトの目的に照らして、自分の役割を正しく認識し、やるべきことをプロアクティブに実施すること(自分の行動を制御すること)が必要である。

この考え方がないコンサルタントが陥りがちなのは、自分のやりたいことや、成果を出しやすいことへ傾注し、クライアントや上司から「やって欲しかったことはそんなことではない」と言われることである。

プロジェクトはチームで動いている。チームで成果を出すために、まずは最低限自分が何をすべきか、を考えて動くことが重要である。大きなことをしなくても、貢献できることはたくさんある。その精神が大切である。

コンサルタントに必要な「行動特性」


考え方と同時に身に着けたいのが、普段の行動習慣(行動特性)である。

私は、コンサルタントの基礎的な行動習慣として身に着けなければならないのは「少し先の未来予測」であると考える。要は先を見通した、段取り力である。

①2週間後のアウトプットや発生イベントを妄想する

まず最低でも常に2週間先において提出する報告資料や会議資料、また発生すると予想されるイベント等、起こりえる様々な未来の事象を考えてみる。これについては「経験がないと、想像自体が不可能なのでは」と考える新人も多いが、まずは経験がない中で色々と考えてみる姿勢が大切である。

  • 自分なりにどんな資料を作るようになるのだろうか
  • どんな議論がなされるのか
  • 自分はそれまでに何をやっていく必要があるのか

など色々なことを妄想してみる。ここで重要なのは「正しく考えられるか」ではなく、「自分なり考えてみて、自分の意見を持っておくこと」である。そうすれば、上司やクライアントとの思考と、自分の思考の何が異なるのかを常に検証することができるため、思考の成長へ繋がる。

また、可能であれば2週間後とは言わず、その先のクライアントへの最終報告など一区切りつくタイミングまで(各マイルストーン)を日々妄想しておくとなお良い。

②次の会議の相手(クライアント・上司)の考えを読む・妄想する

その上で次のステップは、2週間後のアウトプットを前提に、次の会議の内容をより具体的に想像してみることである。ここで重要なのは、会議の相手を起点に考えることである。例えば、

  • 次の会議の出席者は誰なのか
  • 誰がキーパーソンなのか
  • 議論が必要なテーマに対して相手は興味関心を示すのか、逆に何に興味関心があるのか
  • 何を論点として気にしているか、その論点に対してその場で何を言ってくるのか

など、具体的な相手を思い描いて、考えを深く読むことが大切である。

③次の会議のテーマ・論点を絞り込みそれに対して何を言いたいか考える

相手の考えを深く読めたら、次は具体的に会議で討議するテーマ・論点を絞り込むことである。これで会議のアジェンダが決まる。

そして、アジェンダを更に小さな論点へ分解し、それに対して自分は何を言いたいのか、議論をどんな方向性へ持っていきたいかを考えることである。ここで重要なことは、自分として何を言いたいか、どんな方向性へ持っていきたいか、とまずは自分勝手に考えてみることである。

もう一つ重要なのは「何を言わないといけないか」など、あるべき論を連想させる問いを自分で立てないことだ。自分に「正しい答え」を求めてしまうと、自分が苦しくなり思考が止まってしまう。まずは自由な発想で考え、そこから筋道を立てていくことが大切である。

④次の会議までの段取り・ネクストアクションを設定する

そしてやっと最後に、次の会議までに必要な準備の段取り、ネクストアクションの設定である。ここで最も重要なのは、いかに筋の良いネクストアクションを設定してその日のタスクに落とし込むかである。①~③のステップを踏めば自ずと見えてくる。

行動特性を習得するためのポイント


以上が重要な行動特性(思考特性と呼んでもいいかもしれない)であったが、これを行う上で一貫して意識しておきたいポイントが二つある。

日常から思考を巡らせる

まず1つ目は、この思考サイクルを日々の空いた時間で妄想することである。歩いているとき、お風呂に入っているとき、寝る前布団に入ったとき、少しの隙間時間で常に妄想する。

陥りがちなパターンとして日々のタスク処理に追われて実際の作業を行うときに考えてしまうケースである。しかし、作業をやりながら1回の思考では考えは深まらない。普段から気楽に少しずつ考えていくことが思考の進歩に繋がる。

「トップダウンの思考」を意識する

2つ目は、「トップダウンの思考」を意識することである。具体的には、常に2週間後に何がしたいか、何を達成していないといけないか、誰のどんな論点に答える必要があるか、などゴールから逆算的に考えることである。

これは意識していないと(意識しても)、自分は今何を作業しないといけない、これをやるにはどれぐらい時間がかかるか、今自分がもっているデータや情報から何が言えるか、など「ボトムアップの思考」に陥ってしまう。

この2つの意識が大きな差に繋がるので、是非とも意識して欲しい。

最後に

以上がコンサルタントに必要な基本的な「考え方・行動特性」であった。これらの考え方は事業会社の企画系業務であっても同様であると考える。是非事業会社の方々も自分の業務と紐づけて理解を深めて頂きたい。そして次回は、いよいよ論理的思考を行うためのスキルを紹介していくのでこちらも楽しみしておいて頂きたい。

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