都市化(アーバナイゼーション)の流れと環境変化に見る地方の活路

都市化(アーバナイゼーション)とは、農村部から都市部への人口移動による都市部への人口集中を指す。地方はこの潮流の中で如何にして生き残ることができるのであろうか。生活・労働環境の変化を切り口に、事例を交えながら地方の活路を考察する。

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都市化進行の背景

世界的に都市化が進行している。

国連によれば、1950年に30%だった都市部人口割合は、2018年時点で55%まで高まっており、2050年までに68%に達すると予測されている。

各国で都市部人口割合の定義が異なるため単純比較はできないが、日本においては1950年の53%から2018年時点で92%という水準まで都市化が進行している。
東京圏(一都三県)は人口3,700万人を擁する世界最大の都市だ。

都市化進行の背景には急速な経済成長に伴う地域間の所得格差の拡大がある。
我が国における戦後の高度経済成長期が一例である。

一度地域間格差が生まれると、利便性や娯楽性、就業機会といった生活の質の向上を求めて、人々は都市部へと移動を始める。

生活・労働の環境変化による都市化への影響

人々は長い時間をかけて、都市部でのみ享受し得る「生活・労働の質」の向上を目指して都市に移動してきた。

一方で、テクノロジーの進化は日進月歩で人々の生活・労働環境を変化させる。追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染症がその変化を加速させた。

買い物は、オンライン上の無数のアイテムから自由に選択し、翌日受け取ることが一般的だ。生鮮食品を扱うネットスーパーも地方へと提供範囲を拡げている。
娯楽についてもオンラインストリーミングサービスにより自宅に居ながら無数の映像コンテンツを堪能できる。

労働環境についても、リモートワーク・オンライン会議の一般化により、職場と自宅の空間的な制約はなくなった。

今後、遠隔診療やメタバースに代表されるテクノロジーの一般普及により、より生活者としての地域間格差は縮小していくだろう。

地方の活路

地方においても都市と同等の生活・労働の質が担保できるのであれば、地価・物価の高い都市から地方へ選択的に移住する流れが加速する可能性がある。

では、「移住者に選ばれる地方」に求められることは何であろうか。

2014年に「まち・ひと・しごと創生法」が施行されて以降、各自治体は地方創生に向けた各種の取組みを推進している。
しかし、先行事例の模倣や一過性のキャンペーンに留まる事例が多く、成功事例は多くないというのが現実であろう。

都市から移住したいと思わせる「選ばれる理由」を作る必要がある。
そのためには、地域固有の歴史・文化・自然といった伝統的な地域資源を発掘し、現代の感覚で再定義して発信するといった取組みにより、他地域との差別化を図ることが肝要である。

北海道の東川町は数少ない成功事例の一つである。
東川町は旭川市から車で20分、日本最大の自然公園「大雪山国立公園」の区域内に位置する自然豊かな町である。

驚くべきことに1993年に6,973人だった人口が2020年12月末時点で8,437人と21.5%もの人口増となっている。

東川町の取組みを時系列で紹介しよう。

1985年、その雄大な自然や美しい風景と「写真」を組み合わせて町の魅力としようと「写真の町」を宣言。モノや産業ではなく、文化を軸にした町おこしが始まった。
1994年。「写真甲子園」を開催。現在では全国から毎年500校以上が参加する一大イベントになっている。

2009年からは短期滞在の日本語学習者の受入事業を開始。2015年には全国初となる公立日本語学校も誕生するなど、積極的に異文化を取り込む取組みを行っている。

2015年からはふるさと納税を活用した「ひがしかわ株主制度」を開始。
地域産品を返礼するのではなく、寄付者を「特別町民」に認定し、滞在時の宿泊優待等を提供するという変わった返礼を行っている。既に5万人超が特別町民に認定され、まちづくりに参加している。

これらの取組みは、移住するうえで欠かせない「町を知ってもらい、滞在してもらう」きっかけとなっている。

移住者のための公営住宅、子育て施設、医療施設などのインフラ整備も抜かりない。

東川町は「写真の町」という文化を軸に町おこしを進めてきたが、現状に甘んじることなく変化を続けることで移住者から選ばれ続けているのである。

東川町からもう一つ学ぶべきことは、これらの取組みを自治体主導で行ってきたということである。
東町役場は、「予算がない、前例がない、他でやっていない」という「3つの“ない”はない」という指針を掲げている。
国の補助金ありきで考えるのではなく、町をより良くする方策を主体的に立案・実行しているのである。

総務省「第三セクター等の状況に関する調査結果の概要(2021年3月31日時点)」によれば、全国の第三セクターの40%超が赤字で運営しているのが現実だ。さらに、その補助金受給率は50%近く、補助金で生かされている状態といえる。

補助金や行政主体の取組みは、開始時のハードルを下げるが、地域の主体性なくして持続的な成長は見込めないのである。

まとめ

都市化の潮流は避けられない。変化の兆候を見逃さず、他社との差別化策を主体的に実行できたものが生き残る。これは企業であっても地域であっても同様である。

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