コロナ「耐性」、最も強い企業は…

小売・外食のストレス耐性
ストレス耐性の評価には、以下の数式を用いた。
(太字)収益耐性指数=(100%-①損益分岐点比率)÷(②所得弾力性)
の「損益分岐点比率」とは、各企業が固定費を吸収するために必要な「損益分岐点売上高」を算出し、現在の売上高で割ったものだ。固定費の抑制などで高い営業利益率を達成している勝ち組企業は、損益分岐点比率が「低く」なる傾向がある。
一方、②の「所得弾力性」とは、消費者所得が1%変動した場合に各商品への支出額が何%変動するかという「感応度」を指す。所得弾力性が1を超える品目は「選択的支出」、1以下は「基礎的支出」とも呼ばれる。前者は不要不急の贅沢品で、後者は簡単には削れない必需品だ。
 これら2指標を以下の計算式で組み合わせ、コロナウイルスなど外生ショックに対する各社の「収益耐性指数」を算出した。計算式左の括弧内(100%-損益分岐点比率)は「何%の減収で赤字になるか」を示しており、所得弾力性で割ることで「何%の所得減少で赤字になる(リスクがある)か」を大まかに試算できる。
この耐性指数の値が大きいほど、外生ショックに対するストレス耐性が高いと捉えることができる。

耐性強い医薬・必需品、弱い外食・百貨店

外食・小売のストレス耐性2
結果は、上記の表の通りだ。ストレス耐性(収益耐性指数)が高いのは、損益分岐点比率が低く、生活必需品を取り揃えるニトリHDやセブン&アイHDなど。ドラッグストア各社のストレス耐性の高さも目立つ。かたや、必ずしもストレス耐性が高いと言えないのは、損益分岐点比率、所得弾力性がともに高めとなっている外食、百貨店、アパレル等だ。
皮肉なことに、4月以降の外出自粛や集団感染防止のために店舗休業等を強いられているのは、ストレス耐性が高いコンビニやドラッグストアではなく、ストレス耐性が低い外食や百貨店である。
収益構造や商品特性で決まる「ストレス耐性」が低いということはすなわち、赤字転落リスクが高いということだ。それらの業種の店舗が休業せざるを得ないという事態は極めて深刻であり、なんらかのセーフティネットの整備が焦眉の急である。
mitsukoshiyasumi

もちろん、ストレス耐性の高い会社が普遍的に良好な会社というわけではない。“ポストコロナ”を想起してみよう。どこかの段階で、個人消費は小さいながらも自律的反転を見せるであろう。
政府による景気刺激策が奏功することも考えらえる。個人消費の回復局面においては、表中の下位企業の方が売上や利益が急回復する可能性さえある。

まとめ

ストレス耐性にかかわらず、コロナ禍を契機とした消費者行動の構造変化に正しく対応することが、景気回復の恩恵を受けるための必要条件となるだろう。例えば、コロナ禍によってフードデリバリーが一段と普及していくと、コンビニ業界の中食商品への影響が徐々に効いてくるかもしれない。かたや、外食業は短期的なストレス耐性こそ低いが、中長期的にはフードデリバリーを活用・協働していくことが可能だ。ポストコロナの消費者行動を見据えて、ストレス耐性の高い企業こそ、危機感を持ってビジネスモデルを磨き込んでいく必要がある。

出所:各社直近決算資料および総務省家計調査年報(2019年)よりフロンティア・マネジメント試算

関連記事

排出権取引とは? 世界・日本の現状も解説

地球温暖化問題への取り組みをはじめとして地球環境に配慮する機運は年々高まっています。ESGやSDGsなど近年こうした言葉を目にする機会も増えたのではないでしょうか。こうした取り組みはいずれも環境問題を解決し持続性のある社会活動を目指すものですが、ビジネスにおいても例外ではありません。その中に「排出権取引」というものがあります。排出権取引は地球温暖化の直接的な原因とされている二酸化炭素の排出に係る企業や団体間の商取引です。本記事ではその概要について解説していきます。

フィジカルインターネットとは?物流業界変革の構造や業界動向を解説

ECの普及により物流量が増加している今、物流業界は人手不足や労働環境の悪化、トラックの積載率の低下(注1)など深刻な課題を抱えています。 この課題を解決する方法として注目されているのが「フィジカルインターネット」です。 フィジカルインターネットは、インターネットの網の目のような通信網をフィジカル(物理的)な物流業界で応用する考え方です。 本記事では、フィジカルインターネットの構造を解説し、実現へ向けた企業各社の動きを紹介します。

EVは本当に最適か?⑤ 基幹産業=自動車を守る為に

ゼロカーボン社会に向け、EV(電気自動車)は本当に最適なのだろうか?シリーズ最終回は、日本が技術的優位に立つ「Hy-CAFE」(Hy:水素/C:Cold fusion/A:Ammonia/F:Fuel cell/燃料電池/E:e-fuel」を生かした、自動車の次世代エネルギー革命についてまとめた。

ランキング記事

1

EVは本当に最適か?⑤ 基幹産業=自動車を守る為に

ゼロカーボン社会に向け、EV(電気自動車)は本当に最適なのだろうか?シリーズ最終回は、日本が技術的優位に立つ「Hy-CAFE」(Hy:水素/C:Cold fusion/A:Ammonia/F:Fuel cell/燃料電池/E:e-fuel」を生かした、自動車の次世代エネルギー革命についてまとめた。

2

村上春樹さんから学ぶ経営⑯「文章はいい、論旨も明確、だがテーマがない」

前回のテーマは「変えてはならないことがある」でした。そこで今回は、本田宗一郎氏――「社の連中に技術的な話をしたことがない。話すことは、みな技術の基礎になっている思想についてである」「技術はテンポが早く、すぐ陳腐化してしまう。技術はあくまでも末端のことであり、思想こそ技術を生む母体だ」(『起業家の本質』プレジデント社)――のようなお話です。それでは今月の文章です。

3

「安すぎる日本」で国民は苦しむか? 最低賃金引上げの合理性を問う

最低賃金引上げが叫ばれている。日本の賃金は国際的に見て安いらしい。一般消費財でも、スターバックスコーヒーやマクドナルドなどグローバルブランドの商品が日本では先進国中で最低価格となっており、「安すぎる日本」として話題になっている。最低賃金引き上げは、本当に筋のよい政策なのだろうか。

4

相続登記義務化のインパクトとは?

不動産を相続した場合、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する必要があり、この手続きを「相続登記」と呼ぶ。従来相続登記は任意であったが、2021年6月の法改正により2024年を目途に義務化されることになった。相続登記義務化の背景と、そのインパクトは何かを考察する。

5

プロスポーツチームの戦略オプション②~スタジアム・アミューズメント化経営の要所

コロナ禍において、プロスポーツチームが取り得る戦略オプションは、どのようなものがあるだろうか。今回は取り組みが活性化してきている「スタジアム・アミューズメント化」経営について、その提供価値と実現スキームに焦点を当てて解説していく。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中