ステージゲート法とは?進める流れや導入・運用時のポイントを解説

ビジネスにおける新規事業開発は、スタートアップ企業であっても複数の事業を抱える大企業であっても決して簡単ではありません。 0を1にするアイデアの着想からはじまり、そこから1を100にするような膨大なプロセスを経て、最終的に採算のとれる事業へと成長させる必要があるのです。 そこで、0から100までの一連の流れを管理する手法「ステージゲート法」に着目します。 本記事では、ステージゲート法の特徴や進める際の流れ、メリットから導入・運用時のポイントまでを解説します。

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ステージゲート法とは?アイデアから事業化までを管理する手法

ステージゲート法とは、1980年代にカナダのロバート・クーパー教授が開発した、新規事業開発などにおけるアイデア創出から事業化までを管理する国際標準的な手法です。

この手法では、事業開発における各プロセスをステージ(段階)と呼び、次のステージへ進む前に一定の検証項目についてレビューする機会をゲート(関門)と呼びます。

各ゲートでは、プロジェクト内部の人材や外部の有識者などを巻き込み、各ステージの粒度に合ったレビューが行われます。

そして各ステージでは、マーケティングや技術、生産などさまざまな視点で調査・検証を行い、プロセス全体を通じて継続的に市場からのフィードバックや評価を得ながら開発を進めるのが前提です。

ゲートを経る度に開発テーマのスクリーニング(選別)が繰り返され、最終的に残ったものが製品として市場へ投入される流れとなります。

ステージゲート法とデザインレビューとの違い

デザインレビューは、ものづくりにおける各フェーズで挙がった成果物を検証し、次フェーズへ進むか判定する手法です。

フェーズ毎にレビューの機会を設ける点ではステージゲート法と似ていますが、両者は「目的」に大きな違いがあります。

まずデザインレビューの目的は、設計の完成度を向上させ、技術や品質を確実に担保することです。

一方ステージゲート法の目的は、見込みの薄いプロジェクトは切り捨て、特定のテーマを事業化・商業化の面で成功させることです。

すなわち、デザインレビューでは「問題ない設計(デザイン)かどうか」を、ステージゲート法では「市場に出したときに成功するテーマかどうか」をレビューします。

以上の比較から、ステージゲート法はより市場志向であり、経営の意思決定をサポートする性質が強いといえるでしょう。

ステージゲート法の流れと検証ポイント

ステージやゲートの設定に決まった形式はありませんが、新規事業開発の着手から事業化が行われるまでにどのようなステージとゲートが設定されるのでしょうか。

次の5つのステージを例に、一般的な各ゲートにおける検証ポイントについてご紹介します。

  1. アイデア企画
     ⇒ゲート1
  2. 実現可能性検証
     ⇒ゲート2
  3. 開発・テスト
     ⇒ゲート3
  4. 事業化トライアル
     ⇒ゲート4
  5. 事業化
     ⇒ゲート5

ゲート1の検証ポイント

ステージ1(アイデア企画)はアイデアの発見から企画を立案する段階のため、事業環境の分析や簡易的なユーザーヒヤリング、アイデア発想などを実施します。

ゲートを通過するうえでは、収集・分析した情報やアイデアに対し、自社が重視する戦略やターゲット市場との整合性、関連する技術や市場の将来性などが検証ポイントとなるでしょう。

ゲート2の検証ポイント

ステージ2(実現可能性検証)は本格的に事業化を実施するかを決定する段階のため、技術の確立・権利化や、プロトタイピング、実証実験、市場調査などを実施します。

そのため、ゲートではビジョンやコンセプトが明確かどうか、市場からのニーズは十分かどうか、使用する技術の競争力と実現可能性などが検証ポイントとなります。

ゲート3の検証ポイント

ステージ3(開発・テスト)は事業化へ向けた製品・サービスの開発とテストを実施し、市場を投入する商品を作りこむ段階です。

ここでは、品質管理のために具体的な成果物に対するデザインレビューも重要な役割を持ちます。

ステージゲート法の観点では、市場ニーズを満たす目標仕様を備えているか、社内外へ向けた技術成果のプロモーションが十分か、などの検証が可能です。

ゲート4の検証ポイント

ステージ4(事業化トライアル)は事業体制を構築し、消費者の反応を実験するテストマーケティングなどのフレームワークを通じて、事業を採算が取れる形に磨き上げる段階です。

最終的に事業化へ移行する前に、見込み顧客の候補があるかどうか、顧客ニーズを満たす技術が完成しているかどうか、といったポイントで検証を行います。

ゲート5の検証ポイント

ステージ5(事業化)は採算ベースでの事業推進がスタートした後の段階です。

ここで設定されるゲートは事業の継続を決定するために設けられ、顧客からの評価や収益結果の是非、不具合発生率の高さやその改善方法の有無などのポイントで検証を行います。

ステージゲート法のメリットは「不確実性の低減」

ステージゲート法が事業開発におけるフレームワークとして有効な理由は、主に「不確実性を低減できる」メリットにあります。

ステージゲート法では、アイデアの段階から事業性を評価し、段階的な開発を進めるため、以下のようなリスクマネジメントが可能です。

  • 事業性の低いプロジェクトをはじめから弾く
  • 初期段階に設計を見直してコストを抑える
  • 開発途中で想定ターゲットとずれた際にプロジェクトを止める

最初は成功するかどうか不確実なアイデアが大量に放出され、ポテンシャルの高いものが厳選されていきます。

そして事業化へ向けて少しずつ振り返り、立ち止まりを繰り返すことで、不測の事態に対応するために莫大なコストがかかるような事態を回避できるのです。

ステージゲート法導入時のポイントは3つ

ステージゲート法を導入・運用する際は、リスクマネジメントや事業化の成功率を高めるために意識すべきポイントが3つあります。

以下にそれぞれのポイントについて解説します。

ステージごとの段階的投資

ステージゲート法は事業アイデアの多産多死を受け入れる思想に基づいています。

そのため、初期のステージでは大きな投資を避け、各プロジェクト毎に少額の予算で活動にあたることが重要です。

ステージが進むにつれて投資額を増やし、ポートフォリオを組むようにプロジェクトへの投資を分散するとよいでしょう。

レビューごとの段階的精緻化

プロジェクトを事業化するか不確実な初期段階のゲートでは、レビューするための情報が不足する場合があります。

そのため、アイデアや実現可能性などを検証する初期ステージでは抽象的・定性的な基準を用いて、ステージが進む度に具体的、定量的な基準に変えていくと効果的です。

たとえば、最初期に行うような事業環境分析では、PEST分析やVRIO分析などの定性的なフレームワークを活用します。

そして実現可能性が高まれば、市場調査で消費者アンケートの結果など数値に表れる情報を活用し、具体的な成果物の作りこみが始まったら実験計画法などの統計学的な手法を用いるのです。

ゲートにおける承認制度の明確化

ゲートは次のステージに進むか否かを判定する関門の役割を果たすため、これが形骸化しないようにする必要があります。

まずは各ステージでの検証項目と各ゲートでの承認者を明確にしてレビューに漏れが生じないようにしましょう。

ただし、事業化の失敗を極度におそれて承認基準を厳格にし過ぎるのはステージゲート法の本質に反します。

とりわけ初期段階では多産多死をいとわず、「迷ったら承認する」程度の基準が望ましいでしょう。

ステージゲート法で市場ニーズと開発の方向性の一致を目指す

昨今の激しい社会・経済情勢の変化、デジタル化に伴う顧客ニーズの流動性などにより、ビジネスを取り巻く環境は複雑で不確実なものになりつつあります。

このような時代で、新規事業をアイデアから事業化まで無事に送り出す可能性を高めるため、ステージゲート法が有用なのです。

市場・顧客との対話を欠かさず、研究開発や技術開発の方向性と売れる商品のコンセプトが一致するようなプロジェクトを推進しましょう。

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