サービスドミナントロジックとは?新しい顧客価値の捉え方や体現する企業例を紹介

近年、IoT(モノのインターネット)やスマートフォンなどのデバイスを通したWebサービスが普及し、商品だけでなく形のないサービスもセットで売るビジネスモデルが増えています。 こうした時代の変化とともに、顧客は商品・サービスそのもの以上に、それによって得られる価値を重視する考え方が主流となっています。 ここでの「価値」について、企業がどう創出するか考えるうえで重要なフレームワークが「サービスドミナントロジック」です。 当記事では、サービスドミナントロジックの特徴や対照となるグッズドミナントロジックとの違い、サービスドミナントロジックを体現する企業事例について解説します。

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サービスドミナントロジックとは?価値は企業と顧客が共創する

「サービスドミナントロジック(Service Dominant Logic:サービス中心論理)」は、すべての経済・経営活動を「サービス」として包括的にとらえる考え方です。

2004年にアメリカのマーケティング研究者であるロバート・F・ラッシュとスティーブン・L・バーゴによって提唱されました。

「すべての経済・経営活動」とは、サブスクリプションや宅配サービスといった無形財である事業(コト)、あるいは自動車や家電製品といった有形財である商品・製品(モノ)を売る行為を指します。

つまりコトとモノの区別にかかわらず、「企業は何らかの形で顧客に価値を提供する」と考えるのがサービスドミナントロジックです。

そして、その価値が一方的に提供されるのではなく、顧客の手に渡った後に得られる体験や経験を重視するのが最大の特徴とされます。

そのため、企業は価値を提案する役割を担い、顧客が主体的に判断することで、企業と顧客が共同で価値を創造する関係性があるのです。

対照となるグッズドミナントロジックとの違い

サービスドミナントロジックと対をなす価値観として、「グッズドミナントロジック(Goods Dominant Logic:物財中心論理)」が挙げられます。

サービスドミナントロジックがコトとモノを包括するのに対し、グッズドミナントロジックはモノを中心として経済活動をとらえる価値観です。

この価値観では、まず売り手となる企業が商品の価値をあらかじめ価格という形で決定・提供します。

そして顧客はその価格に合意して対価を支払うことで、「価値交換(所有権の移転)」が行われるのです。

つまり価値を創出する主体は企業であり、顧客の手に渡った後の価値については考慮されていません。

こうした企業と顧客の関係性は、従来のマーケティングやビジネスの多くに当てはまるでしょう。

一方のサービスドミナントロジックは、インターネットやSNSの普及により顧客が企業よりも多くの情報を持つようになり、ニーズの多様化によって注目されました。

顧客の使用価値を重視する考え方は昨今より必要となっているため、今後はサービスドミナントロジックが主流となっていくとみられます。

サービスドミナントロジックを体現する企業例

サービスドミナントロジックの価値観を事業へ落とし込む企業は世界的に数多くみられます。

以下に紹介する4つの企業例から、顧客と価値を共創する具体的な方法について理解してみましょう。

コマツの「KOMTRAX」

重機メーカーの株式会社小松製作所(以下、「コマツ」)は、販売するすべてのダンプカーやショベルカーなどの重機にGPSとコンピュータを搭載し、稼働状況を管理するシステム「KOMTRAX」を展開しています。

KOMTRAXは収集したデータをもとに建設現場の生産性を分析し、顧客となる建設会社の作業効率の改善やコスト削減を可能にします。

つまり、コマツは重機というモノを売るだけでなく、その後の生産性管理や車両維持業務といったコトを提供し、顧客が重機を利用してはじめて価値が生まれる構図を実現しているのです。

参考:コマツ産機 稼働管理システム「KOMTRAX」

ナイキ社の「Nike Run Clue(ナイキ・ラン・クラブ)」

スポーツ用品のグローバルメーカーであるナイキ社が展開する「Nike Run Clue(ナイキ・ラン・クラブ)」は、アプリを使ってランニング記録を手軽に計測管理したり、ツイッターやインスタグラムなどソーシャルメディアに投稿できるサービスです。

スマホに搭載されるGPSによって走行距離やルートを記録できるため、自分の走行履歴を分析してランニングの質を向上させたり、SNSで他人と共有すれば走行記録の競争ができるなど、利用者にとってスポーツの価値を高める結果が期待されます。

また、アプリには「マイシューズ」機能が用意され、自分が今履いているナイキ社のシューズを登録し、シューズ毎の走行距離と寿命が管理できます。

利用者がメンテナンスしやすい情報を提供し、古いシューズの使用で怪我をしないよう安全面にまで手が行き届いているのです。

ナイキは、シューズの販売にとどまらず、シューズの目的であるランニングに主軸を置いた価値を創出するプラットフォームづくりに成功しているといえるでしょう。

参考:Nike Run Clubアプリ. Nike 日本

Airbnb(エアビーアンドビー)

Airbnb(エアビーアンドビー)は、空き部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を借りたい旅人(ゲスト)とをつなぐWebサービスです。

ホストは自身が所有する物件を有効活用でき、ゲストは安く柔軟に宿泊施設を手配できるため、双方にメリットが生まれます。

そしてサービスを運営するAirbnb社は、掲載された貸物件を一切所有せず、顧客の空室状況を管理しながら、予約ごとの仲介料を受け取るビジネスモデルを成立させているのです。

この事例では、企業と顧客の価値共創という点だけでなく、顧客同士でも価値創造が可能なビジネスエコシステムが構築されています。

参考:Airbnb

関連記事:ビジネスエコシステムとは?DXとの関連や構築のポイントについて解説

レゴ社の「LEGO IDEAS(レゴ・アイデアズ)」

デンマークの玩具メーカーであるレゴ社は、世界中のユーザーからレゴブロックの新商品アイデアを集めてネット上で公開し、一定数を超える投票があったものを商品化する「LEGO IDEAS(レゴ・アイデアズ)」というプラットフォームを2014年から世界展開しています。

このしくみは全世界のレゴファンが持つスキルやセンスを活用できるだけでなく、得票が高いアイデアを製品化するため購買数もはじめから確保できるのが主なメリットです。

企業が販売する商品が顧客の創作意欲を刺激し、さらにそれが次なる商品としてフィードバックされる構図は、企業と顧客による価値共創を体現しているといえるでしょう。

参考:LEGO Ideas

サービスドミナントロジックで価値を想像し、創造する

サービスドミナントロジックは単なるマーケティングの手法ではなく、社会やビジネスを捉えるうえでの見方のひとつです。

グッズドミナントロジックのように顧客に良い商品を提供するまでのプロセスのみを捉えるのではなく、その後に利用する顧客の姿を想像する必要があります。

シューズを購入した顧客がランニングに利用するのは特別な行為ではないでしょう。

しかし重要なのは、顧客が日常的に取っている行動やそこで生まれている思考や感情をとらえることです。

顧客が抱える課題をよく理解し、本当の価値とは何なのかを考えてみると、新しいビジネスモデルのヒントが生まれるかもしれません。

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