衝撃のニュースが相次ぐ

5月15日に発表された、2つのニュースは、衝撃だった。

1 台湾TSMCは米アリゾナ州にUS$120億(約1兆3千億円)を投資し
  新工場を建設
2 米商務省は中国ファーウェイ(華為)に対する輸出規制を強化

TSMC(台湾積体電路製造)は、半導体の受託製造最大手で、Appleとファーウェイ(華為)など世界中のテクノロジー企業を顧客に持つ。米国に1.3兆円の新工場へ投資することで、半導体微細加工量産領域におけるテクノロジーリーダーとしてのポジションを確立。ファンドリーとしてのトップポジションが揺るがないことを示す。同社は16日に4-6月期業績を発表したが、事前予想を上回り、過去最高益を大きく更新した。

一方、米国商務省は、ファーウェイに対する輸出規制をさらに強化。この措置を受け、TSMCは9月以降、にファーウェイへの半導体出荷を停止する。

TSMCは「中国<米国」の姿勢を鮮明にしている。これは、米国での雇用拡大に加え、間接的にハイテク産業における米国の安全保障上の懸念を和らげる狙いもあると思われる。
米中貿易戦争の中で、半導体の持つ意味の大きさを物語るニュースと言える。さらに、香港問題から派生する台湾問題など、多くの政治的問題も背景として考える必要がありそうだ。

半導体が、大きな力を持つ

GAFAのみならず、テクノロジー業界のジャイアント企業の多数が、半導体の自社開発を推進中だ。
Apple「Aシリーズ」(iPhone等に搭載)は代表例だが、Intel製を用いていたMacにも、自社チップの搭載を発表した。
AmazonやGoogleの機械学習用チップ、マイクロソフト、テスラ、などに加え、バイドゥ・アリババ・ファーウエイ等の中国系大手も半導体を自社開発中だ。

新しいハードウエアやインターフェイスによる新サービスを提供する上で、新たなロジック半導体は、他社との差別化を実現するための最重要技術の一つである。資金的に余裕のあるジャイアント企業が積極的に投資を行っているのも頷ける。先日、日本でもNECがNTT向けに第3者割当増資を行い、資金調達した目的の一つにもなっている。

半導体微細加工技術でも、激しい競争

今まで述べたのは設計技術の開発競争であり、製造技術の競争ではない。

もう一つの競争領域であった最先端の微細加工量産製技術の面では、勝敗が決まりつつある。

特にジャイアント各社が注力する高速高効率演算処理を主とするLogic ICは、2015年頃にTSMC・Samsung・Intelが先行していたがIntelが大きく遅れ、現在はTSMCとSamsungの2社に集約されつつある。
これからは5nm(nm=ナノメートル、10億分の1メートル)クラスの微細加工技術を使わないと、処理能力・消費電力など、基本的な特性要求を満たせない。

ただしこのレベルの微細加工が可能な工場建設には、多くの先端的製造措置の使いまわしノウハウや、それらをオペレーションしていく経験に加え、前述の通り1兆円以上の新規投資が必要となる。
またその莫大な投資を賄える稼働=営業力が必須となる。テクノロジー業界では、今でも有数の設計技術と製造技術をフルに用いて、イノベーションをリードすることが、現在~将来の圧倒的競争力を持つための必要条件だ。

米中貿易戦争の影響

米中間での貿易戦争・政治抗争が半導体産業に飛び火し、中国のハイテク系企業が台湾や韓国の先端的製造技術を用いた半導体を購入できなくなると、中国ハイテク企業は製品を作ることができず、競争力が大きく低下する可能性がある。
逆に中国企業以外は、自動車やスマホで世界最大市場である中国市場でのビジネスが難しくなる。

ハイテク業界において、本格的なこれら問題の影響が顕在化するのは、シンボルであるファーウェイがTSMCから仕入れているチップの在庫が枯渇し、スマホや基地局の生産ができなくなる時期(2021年中頃?)からと想像される。

まとめ

それまでに問題が解消されるであろうか?中国は国家半導体に関する大規模な投資を行うようだが、大半の製造装置が日米欧製だ。中国向け輸出規制対象になる可能性が高く、量産技術系でのキャッチアップは難しい。
またTSMCに続き、中国への輸出を躊躇する企業が出てくるであろうか?
これらを含め日米欧からは、中国への輸出を躊躇する企業が出てくる可能性もあり得よう。

半導体をめぐる米中の綱引きに関しては今後、特にSamsungや半導体製造措置メーカー(Applied Materials)に加え、日系でも東京エレクトロン・Sony(CMOSなどイメージセンサ)・村田製作所(通信モジュール)・信越化学など電子材料メーカーなどのスタンスも注目される。

関連記事

ヘルスケア事業に舵 花王、ライオン トイレタリー大手企業

コロナ禍で健康や衛生に対する意識が高まる中、花王やライオンなどトイレタリー(日用的な衛生商品、消費財)大手企業が、ヘルスケア事業の拡大を加速する方針を示している。消費者密着型のビジネスで蓄積したデータを活用し、消費者へのパーソナルサービス提供につなげることまでも視野に入っている。

世界でシェアの高いドローンメーカーは?国内メーカーの展望も解説

ドローンは、世界中の産業、工業など幅広い場面で活躍しています。無人で飛び回りさまざまな業務をこなすドローンは、使い方次第でビジネスを大きく変えられる先進技術です。 ドローンの有用性に注目が集まる中、ドローンのメーカー間のシェア争いも激化しています。ドローン市場はメーカーの新規参入や入れ替わりが激しいのが特徴です。日本のドローンメーカーも、より高度な技術開発を急いでいます。 そこでこの記事では、世界でシェアの高いドローンメーカーを解説。また世界でシェアを伸ばす国内ドローンメーカーについてもご紹介します。

どうして?息の長い「擬人化ブーム」を読み解く

軍艦から動物、細胞にいたるまで、何でもキャラクターにしてしまう「擬人化」ブームが続いている。2013年に軍艦を擬人化したゲーム「艦隊これくしょん」の登場以来、既存の有力IPに頼らず、オリジナルキャラクターを「量産」する手段として「擬人化」は広く認知されるに至った。

ランキング記事

1

「クララが立った!」を英訳せよ

「クララが立った!」の翻訳は容易ではない。『アルプスの少女ハイジ』を知らない国の人に、「Clara stood up !」や「克拉拉站着!」と直訳しても意味を成さない。言葉には様々な意味や記号が埋められている。それは、年代、国、民族、言語で大きく異なるからだ。

2

閉店相次ぐ銀座 コロナ禍で商業施設苦境に

東京の代表的な商業地である銀座で、店舗の閉店が増えつつある。メインストリートの「中央通り」から中に入った通りでは、閉店した店舗が目立ち、中央通りに立地するビルでも空室が散見される。

3

リカーリングビジネスはサブスクリプションとどう違う? 新しい収益モデルを解説

従来の商品やサービスを売ったら終わりの「買い切り型」モデルとは異なるビジネスモデルが目立ちます。 そのなかのひとつが「リカーリング」です。リカーリング型のビジネスには様々なメリットやデメリットがあります。 本記事では、リカーリングのメリット・デメリットや、サブスクリプションとの違いについて、具体例を挙げながら解説します。

4

内部統制報告制度「J-SOX法」とは? なぜできたのか?

企業における内部統制は、様々な業務が適正に行われ、組織が適切にコントロールされているかどうかをチェックすることを指しますが、その中でも事業年度ごとの財務報告の内部統制について定めているのが、J-SOX法(内部統制報告制度)と呼ばれる制度です。 J-SOX法は、事業年度ごとに公認会計士ないしは監査法人の監査を受けた内部統制報告書と有価証券報告書とともに内閣総理大臣へ提出することが義務付けられています。 また違反した場合は、金融商品取引法に「(責任者は)5年以下の懲役または500万円以下の罰金またはその両方(法人の場合は5億円以下の罰金)」と罰則が定められています。 しかし、結果的に企業の内部統制を強化し、不正会計などのリスクを減らすことができるため、J-SOX法は企業にとってもメリットのある制度と言えます。 この記事では、J-SOX法の解説のほか、ITシステムに関する「IT統制」についても解説しています。企業の監査部門や、内部統制に関する部署で働いている方は、ぜひ参考にしてください。

5

パワー半導体の世界シェアは?注目市場の今後の動向を解説

パワー半導体(パワートランジスタ)は、家電や電気自動車をはじめとして、さまざまなデバイスの電源管理に使われています。 多くの分野で需要が伸びており、長期的な成長が期待できるマーケットです。 日本の企業や大学発ベンチャーが競争力を保っている分野でもあり、「パワー半導体強国」として世界市場でのシェアを獲得するべく、積極的に研究開発を行っています。 本記事では、世界規模で成長をつづけるパワー半導体の市場規模や、今後の展望を解説します。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中