地銀と異業種、提携相次ぐ

業務提携の動き

ネット金融大手のSBIホールディングスは2019年9月6日に島根銀行と、11月11日に福島銀行と、そして2020年1月17日には筑邦銀行(福岡県久留米市)と、それぞれ資本業務提携を発表している。これらはSBIのノウハウやサービスを銀行自体や銀行顧客へ提供するという提携で、SBIの2019年9月期中間決算説明資料(10月30日公表)では、相当のページ数を割いて同社が掲げる「第4のメガバンク構想」について説明している。

資料によると、SBIは今後も地銀との資本提携を拡大し、複数の地銀を傘下に持つ共同持ち株会社を設立。システムやATMを共通化してコスト削減を図るとともに、資産運用の高度化や、不動産の有効活用など、課題解決策が詳細に記されている。

ほかにも、野村証券と山陰合同銀行(松江市)が8月26日、野村証券の松江・米子支店のリテール(個人向け)顧客口座と山陰合同銀行の証券顧客口座、傘下のごうぎん証券の顧客口座を事実上統合する提携を発表しており、これも新たな形の証券分野でのアライアンスと言える戦略だ。これは、野村証券の支店のリテール(個人向け)営業部隊を、事実上山陰合同銀行に統合する形といえる。

東海東京フィナンシャル・ホールディングスも、2018年に包括提携を行った十六銀行(岐阜市)との間で、十六TT証券(十六銀60%、東海東京40%)を立ち上げた。

これに加え、家電量販のノジマは5月、シェアハウス投資の不正融資で揺れていたスルガ銀行(静岡県沼津市)との間で業務提携に関する基本合意を発表。10月には創業家から株式を取得し、筆頭株主になっている。

進まない地銀同士の再編

地銀同士の再編

このように、地方銀行と異業種との間における資本業務提携が浸透する一方で、地銀同士の再編は大きく進んでいない。

低金利下で地銀の経営環境はますます厳しくなってきており、独占禁止法上の地域シェアが極端に高くなることへの問題についても、十八銀行と傘下に親和銀行(いずれも長崎県)を有するふくおかFGと経営統合を機に一定の目途がついている。それにもかかわらず、「本命」と思われる地銀同士の再編については、現状までは見当たらない状況となっている。

7月に横浜銀行と千葉銀行が「千葉・横浜パートナーシップ」という形で業務提携を公表したほか、9月には福井銀行と福邦銀行(いずれも福井市)が包括連携の検討を始めたが、現状は資本提携に向けた動きとはなっていない。

地方銀行同士の再編パターン

  1. 同県内の地方銀行と第二地方銀行の再編(十六-岐阜、紀陽-和歌山)
  2. 他県の地方銀行と第二地方銀行の再編(ふくおかFG、山口FG、コンコルディアFG)
  3. 他県の地方銀行同士/第二地方銀行同士の再編(ほくほくFG、トモニHD、めぶきFG、九州FGなど)

地銀同士の再編がなかなか進まない要因は何か。

1つ目は、①、②のように地方銀行と第二地方銀行との再編の場合、地銀側から見ると、第二地銀の取引先は零細が多く、特に融資の審査基準などで違いが顕在化しやすい。

また、市場部門などでもリスク管理体制に差があるため、再編に躊躇しやすい状況にある。融資基準に関しては、第二地銀の既存取引先に対して追加や新規の融資ができなくなったり、これまで問題視されていなかった取引先が問題視され、取引先に抜本的な対策をお願いしたりするケースが考えられる。また、逆に優良な取引先側に対しても、同一グループからの借入金シェアが高まるのを懸念して、今まであった借入金を減らすことも想定され、ディスシナジーも生じるだろう。

こうした状況で再編などの統合をした場合、さきほどのような地銀と第二地銀との差異を埋めにいかざるを得ないが、より高度な管理をしている地銀側にとっては、自ら労力を費やして第二地銀側を指導することが必要になる。そのため、その負担感は大きく、場合によっては引当金の積み増しなどの財務的な負担も生じる可能性が出てくる。

2つ目は、同一県内で地銀と第二地銀が統合する場合、システム統合や大胆な店舗統廃合が不可欠になるので、特に、合理化が必要とされる第二地銀側には心理的な壁が存在することだ。

システムは大きな地銀側に寄せられるため、店舗統廃合の対象となるのはほとんど第二地銀側になっていく。そうしたことから、第二地銀としてまだ余力がある状態での同県内の再編は選択しがたい状況にある。過去の事案を見ても、第二地銀側の業績不振をきっかけに再編につながっているケースが目立つ。

上記の2つの要因を考えると、地方銀行-第二地方銀行間の再編はハードルが高く、それと比べて、③の同じ地銀同士、第二地銀同士の広域統合のパターンにおいては上記の障害は存在しないように見える。

また、③のパターンでは、企業文化も比較的似ているため、統合や再編の話自体は進めやすいと思われる。

しかし、広域統合では再編メリットは見えにくくなる。
広域統合の場合、持ち株会社の傘下で各銀行はそのまま存続するケースがほとんどだ。

広域に広がった両行の店舗網では、店舗統廃合の効果を十分に出すことは難しく、短期的にみれば、システムの統合コストなどがかさむ。システム統合は中期的にはメリットはあるが、それ以外に大きな統合効果は見えにくい。

また、同業同士での広域統合では、ビジネスマッチングや相互の紹介を通じた取引先の深掘り、運用ノウハウの共通化など、売上増の効果も読みにくいというのが正直なところのようだ。

このように考えていくと、現在のような低金利下で本業の体力が日々削がれるような環境でも、よほど単独での存立が耐えられないような経営状態に陥るまでは、再編という行為は非常に負荷が重く、具体的なメリットを感じにくい取り組みであるため、実際に踏み切るのは難しいと思われる。

異業種とのアライアンスについての検証

アライアンス

一方で、地方銀行と異業種のアライアンスというのは、銀行側にしてみると、かかる負荷が銀行同士の再編で生じる度合いよりも軽く、かえって取り組みやすいものに思われる。

新たな株主からマネジメントについて色々言われるということは当然あるが、機能提供や補完の意味合いが非常に強く、地銀の経営へ影響する範囲も限定的だ。

SBIホールディングスのアライアンスは、SBIの金融商品や運用ノウハウを提供することで、地銀の運用収益の向上や、顧客向けの商品ラインナップ(住信SBIネット銀行の住宅ローン、マネープラザでの投信等の販売サポート)の拡充を図り、手数料収益の向上を目指すものだ。

多くの地銀にとって、本業である貸出収益が落ち込むなか、資産運用と金融商品での収益は、のどから手が出るほどほしいはずだ。

SBIホールディングスは明確に「第4のメガバンク構想」を掲げ、地銀の再編を進めている。島根銀行や福島銀行、筑邦銀行との提携で成果が出れば、各地の中規模以下の銀行も積極的に異業種との資本連携に乗り出す可能性が高くなるのではないだろうか。

一方、山陰合同銀行と野村証券のスキームは、銀行の証券口座を野村証券に移すものの、営業自体は野村からの出向者が山陰合同銀行でする。金融商品仲介を双方のリソースを持ち寄り、一種プロフィットシェアのような形で収益を上げていこうとする面白い戦略だ。

投資信託の銀行窓口での販売解禁から20年以上経つが、価格変動のある投資信託などの金融商品販売に関しては大手証券会社に一日の長がある。

証券口座は野村証券に移るが、野村証券の強力な営業担当者が自行の行員として、優良顧客に対して高度なサービスを提供し手数料収益を上げてくれる。地銀にとっても自行の限られた経営資源で証券ビジネスをやるのに比べ、魅力的なスキームなのではないだろうか。

ただ、このスキームはあくまで証券ビジネスに絞ったものであり、自社に足りないリソースを異業種から補完するという意味合いを超えない。銀行同士の再編のような経営全体への影響がおよぶ話ではないと考えられる。

地銀同士の再編は、経営改善に不可欠

再編からの経営改善

上記で述べたような異業種とのアライアンスは、効果が具体的に見えやすいという点はあっても、地銀・第二地銀が直面している、本質的なビジネスモデルの課題を抜本的に解決するものとは思えない。

銀行業務の根幹はあくまで貸出金での利息収入であり、ここがもう一段苦しくなった時には、統合効果を追求する観点で、やはり先述のような銀行同士の再編が発生していくのではないか。

この場合、先述の③他県の地方銀行同士、または第二地方銀行同士の再編パターンの際に、真の意味での統合効果をどうやって導き出すかは統合前の段階で十分に議論をしておくべきだ。

広域統合であっても、業務オペレーション統一にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション、事務作業の自動化)を加えて徹底的に効率化するとともにシステム統合をして、さらにコスト削減をするような形まで踏み込む必要があるのではないか。

地域でのブランドが重要な場合もあるが、広域統合においても、傘下銀行同士の合併まで踏み込んでいく必要も生じてくると思われる。

言葉にするのは簡単だが、これを実現するには、統合の過程で生じる尋常ではない軋轢を乗り越え、統合に導ける圧倒的なリーダーの存在と、それを支えるために納得性の高い両社のシナジー戦略を具体的に描くことが不可欠になる。

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