パーセプションの意味とは?フロー・モデルの活用と事例を紹介

「いい製品を作ったのに売れない」「広告費を費やしているが、売り上げにつながらない」という事態に陥っているとき、自社と消費者との間に、製品に対するギャップが生まれていると考えられます。 このギャップを適切に把握するために必要な要素が、「パーセプション」です。 消費者の購買行動を変化させ、売り上げにつなげるためには、変容(パーセプションチェンジ)を促すマーケティングが効果的と言えます。 本記事では、パーセプションの基本的な内容や、マーケティングへの活用方法をご紹介します。

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パーセプションの意味とは

「パーセプション」(Perception)とは、「認識」「認知」「知覚」という意味です。
マーケティングでは、消費者の購買行動に関係する大きな要素を表す言葉として使われます。

現代の消費者は、日々の生活において様々な観察や洞察を行い、企業や商品についての情報が無意識のうちに蓄積されています。
これによりパーセプションの形成がなされ、実際の購買行動にも反映されるのです。

そのため、企業は消費者のパーセプションを理解したうえで、商品やサービスを提供することが重要です。

消費者の中ですでに形成されたパーセプションを変化させ、自社の商品、サービス、ブランドを理解して購入したいと思ってくれるよう促すことが重要とも言えます。

この変化のことを、「パーセプションチェンジ(認識転換)」といいます。

パーセプションフロー・モデルとは

パーセプションチェンジを実現させる施策の策定で有効活用できることが、「パーセプションフロー・モデル」です。

パーセプションフロー・モデルとは、消費者の購買行動を8つのプロセスに分け、それに対する施策の方針を考える、マーケティングマネジメント手法です。

消費者の意識の変化に着目しており、消費者の目線で考えたモデルと言っても良いでしょう。

パーセプションフロー・モデルでは、消費者の行動を下記8つの要素で検討します。

  • 現状
  • 認知
  • 興味
  • 購入
  • 使用
  • 満足
  • 再購入
  • 口コミ

また、これらに対し、下記の5つの軸を組み合わせ、施策を考えます。

行動 最終的な結果・目的となる態度や行動変容
パーセプション 外部から得た情報に対する反応・解釈の結果
知覚刺激 「パーセプション」の形成に付与する要因
KPI 「知覚刺激」の成果を測る指標
メディア・媒体 知覚刺激を与えるための発信手段

なお、パーセプションフロー・モデルの実際の設計方法については、後述の「パーセプションフロー・モデルの設計方法」で解説しています。

カスタマージャーニーマップとの違い

パーセプションフロー・モデルと似た考え方として、「カスタマージャーニーマップ」があります。

パーセプションフロー・モデルは、「消費者にこれから起こるであろうパーセプション(認知)の変化」を設計するモデルです。

一方カスタマージャーニーマップは、「消費者の過去の行動」に着目し、消費者が商品を認知してから、実際に購入し、その後活用するまでの流れを設計するものです。

カスタマージャーニーマップは、1990年代に考案されました。
当時は、情報網が現代ほど発達していなかったため、消費者が過去にどんな行動をとり、どのように情報収集をしてきたかの把握が容易でした。

しかし、現代では消費者の行動が多様化し、情報網も大いに発達しています。

そのため、一人一人の行動に着目することが難しく、人々の行動に即して戦略を立てるカスタマージャーニーマップは、時代にそぐわなくなってきていたのです。

これに替わる手法として登場したのが、パーセプションフロー・モデルです。

パーセプションフロー・モデルを活用するメリット

パーセプションフロー・モデルをマーケティングで活用すると、パーセプションチェンジにより消費者と企業との認識のズレを埋められるだけではなく、自社にもメリットが生まれます。

消費者のパーセプションを変化させるためのモデルながら、結果的に自社のマーケティングの方針や役割分担が見えるようにもなるのです。

自社と消費者のギャップを埋められる

パーセプションフロー・モデルを設計することで、自社と消費者の間にある認識のズレをなくせます。

たとえ企業側が「いい商品だ」と感じていたとしても、消費者にとってそのパーセプションが無ければ、売り上げにはつながらないでしょう。

パーセプションフロー・モデルを設計し、消費者のパーセプションを理解することで、消費者の認識を自社が望むものへと変換しやすくなります。

ブランドマネジメントにもつながり、自社そのものや提供商品、サービスの印象を維持できるようになるでしょう。

マーケティングの全体像が可視化される

パーセプションフロー・モデルを設計すると、マーケティングの全体像が可視化されます。

パーセプションフロー・モデルは、いわばマーケティングの設計図のようなものです。
ターゲットである消費者について明確に描けるのはもちろん、それに対する施策の立案・実行、効果測定までを一元管理できます。

結果的に、途中でマーケティングの方針が変わってしまったり、進行状況がわからなくなったりすることが少なくなり、効率よく業務を進められるでしょう。

社内での意思疎通や連携がスムーズになる

社内やプロジェクトチームの意思疎通・連携も、より図りやすくなります。

たとえば、マーケティングを担当するチームが社内に複数あった場合、チーム同士で使用する言葉やその前提条件が異なっていると、コミュニケーションが取りづらいことがあります。

しかし、パーセプションフロー・モデルではどの工程をどう呼ぶのかをマニュアル化できるため、そうしたニュアンスの違いも生じづらくなります。

また、マーケティングの全体像が可視化されることで、誰が何を担当するかを把握しやすく、業務も進めやすくなるでしょう。
もしうまく効果が出なかった場合も、問題点のチェックが容易になるはずです。

パーセプションフロー・モデルの設計方法

パーセプションフロー・モデルは、現状の消費者の行動の分析から始めます。
それを元に、パーセプションチェンジに必要な施策を逆算して決めていくのです。

そのため、実際に設計する際は、下記の順で設計します。

  1. まずはブランド定義と戦略立案を行う
  2. 消費者の行動からパーセプションを設定する
  3. 知覚刺激の内容を検討する
  4. KPIを設定し、効果を検証する
  5. メディアや媒体を通じて顧客へ働きかける

まずはブランド定義と戦略立案を行う

前提として、パーセプションフロー・モデルを作成する前に、ブランド定義と戦略立案をしておく必要があります。

ブランド定義ではベネフィット、戦略立案では競合分析が重要です。

消費者にどのような価値を提供するのか、また、その際の競合は何なのかを十分に検討する必要があります。

消費者の行動を具体化する

はじめに、消費者の行動を具体化します。
パーセプションフロー・モデルを構成する8つの要素を、「現状」から順に埋めていきましょう。

そこから、どのようにパーセプションチェンジをもたらし、最終的に消費者にどういった購買行動を取って欲しいのかを考えて記載します。

パーセプションを設定する

消費者の行動が具体化できたら、その行動が、どのようなパーセプションのもとになされているのかを逆算し、パーセプションを設定します。

具体化した消費者の行動にパーセプションを設定した例は、以下の通りです。

要素 その要素で起こる消費者の行動 その行動から設定できるパーセプションの例
現状 競合の商品を購入、使用している 買い続ける理由もないが、競合に大きな不満がないため使用している
認知 代替品を検討する 競合の商品で解決できない新たな課題が生まれ、それを解決できる代替品を探している
興味 ブランドに期待して購入の検討をする 新たな課題を解決してくれそうなブランドを見つけ、購入を検討している
購入 ブランドを選んで購入する そのブランドを購入することにより、利益が得られそうだと感じて購買に移している
使用 製品を使用する 新たに購入したブランドで、課題を解決できている
満足 ブランドを信頼する 購入したブランドで課題を解決できたことに満足感を覚えている
再購入 商品を再度購入する 「自分の課題を解決できるのはこのブランドだけ」と認識し、リピートしている
口コミ ブランドに愛着を抱いて推奨する このブランドを使うことで課題解決できる点に価値を感じ、より多くの人に知ってもらいたいと思っている

 

このように、パーセプションの設定では、消費者の気づきや変化を各段階で考えていくことが重要です。

知覚刺激の内容を検討する

パーセプションの逆算に必要な「知覚刺激」についても、検討しましょう。

知覚刺激とは、消費者の行動喚起をするための外部からの情報です。
それぞれのパーセプションの消費者に対し、どのようなアプローチをしてパーセプションチェンジを促すのか、具体的に考えます。

知覚刺激としては、下記が挙げられます。

  • 商品パッケージ
  • 店頭での販売状況
  • 競合優位性
  • 購買に至る口実(買っても良いと思える理由)
  • 商品を購入して得られるベネフィット(便益)

知覚刺激は、「目立つパッケージかどうか」「購入しやすい環境が整っているか」といった基本的なことから、「消費者がこの商品を買っても良いと思える理由があるか」「この商品を買うことで、どんな気持ちになるか」という心理的なことまで考えられます。

各段階で適切な知覚刺激を考え、実行していきましょう。

各段階のKPIを設定する

各段階でのマーケティングの効果検証や評価、改善策立案のために、KPIも設定しましょう。

パーセプションフロー・モデルのポイントは、各段階でKPIを設定することです。
主に、以下のような指標が考えられるでしょう。

  • ブランドの認知率
  • 商品の店頭での露出度
  • 購入者の製品への満足度
  • 製品の再購入率
  • ブランドや商品への共感率

ここで設定したKPIを元に、今後の展開策の検討を進めます。

使用するメディアや媒体を決定する

最後に、求めるパーセプションチェンジのために、どういったメディアや媒体を通じて消費者に働きかけるか検討しましょう。

考えられるメディアは、以下があります。

  • ペイドメディア:テレビやラジオ、Web広告、雑誌広告、新聞広告など
  • オウンドメディア:自社メディアやWebサイト、メールマガジン
  • アーンドメディア:TwitterやInstagramなどのSNSや、ブログ

今使っている商品に不満を覚えていて、代替品の購入を検討している「認知」の段階であれば、「代替品であればどんな課題を解決できるか」をアピールするCMや広告が効果的でしょう。

「興味」から「購入」の段階であれば、自社のECサイトを充実させ、商品を購入する機会を増やす方法も考えられます。

消費者の知覚刺激を効果的に伝達できるよう、各段階で適切なメディアや媒体を選びましょう。

パーセプションに着目したマーケティングの成功事例

最後に、パーセプションに着目したマーケティングを実施し、大きな成果を上げている企業を3つ紹介します。

パーセプションフロー・モデルの活用によりパーセプションチェンジを実現したものや、全く新しいパーセプションの創造により、新たな市場を開拓したものもあります。

「物件」ではなく「人」に着目した「LIFULL HOME’S」

国内最大級規模の不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」(以下、HOME’S)を運営する株式会社LIFULL(以下、LIFULL)は、パーセプションフロー・モデルを活用した広告施策を展開し、利用者増を実現しています。

1997年4月のサービス開始以来、同社はHOME’Sを「豊富な物件情報を掲載する不動産情報サイト」として運営していました(注1)。

しかし、サービス開始10年の節目となる2017年4月に、自社の事業方針を一新。「世界一のライフデータベースを構築し、一人ひとりに最適なソリューションを提供する」という方向性に切り替えました(注2)。

このころより、不動産情報そのものではなく、サイトを訪れる「人」の情報を中心としたデータ活用戦略を構築したのです。

一人一人の情報やサイト内での行動に着目し、潜在顧客へのターゲティングを実施して、パーセプションフロー・モデルによる広告のクリエイティブや訴求メッセージの作成も進めました。

この結果、顕在顧客のみならず、潜在顧客にもアプローチが可能になり、HOME’Sの利用者数・問い合わせ数は増加に貢献しています。

CV率と商談化率が飛躍的に向上した「Unipos」

Unipos(ユニポス)とは、Fringe Coo株式会社(以下、Fringe Coo)が提供しているWebサービスです。
従業員同士が、感謝の言葉と少額のインセンティブを送り合えるというもので、現在は530社以上の企業で導入されています。

Uniposは、2019年にパーセプションフロー・モデルを活用した施策を実行。

新聞やニュースなどでのPR効果もあり、実行後1年でCVRは4.1倍、商談化率は2倍になりました(注3)。

まず、UniposのLPを内容を、機能の紹介から、ユーザーにとってのメリット中心の内容に刷新して、知覚刺激の内容を変え、「Uniposを使うと、ユーザー側の利益が大きい」というパーセプションチェンジを実現したのです。

また、パーセプションフロー・モデルを活用し、各部署の業務の再確認と、部署間の連携強化を行いました。

マーケティング担当者と営業担当者の協働が促進されたことで、共有する情報の精度が上がり、より効果的な営業活動ができるようになったのです。

2021年9月現在も、Uniposは導入した企業の継続使用率を非常に高く維持しており、導入する企業数も伸び続けています。

新たなパーセプションを作った「uno フェイスカラークリエイター」

大手化粧品メーカー・株式会社資生堂(以下、資生堂)は、既存のパーセプションに変化を加えたのではなく、新たにパーセプションを形成した点が特徴的です。

2019年3月、資生堂は自社の男性化粧品ブランド「uno」からBBクリーム「フェイスカラークリエイター」を発売しました。

その後、同商品はわずか9カ月で38万個出荷(注4)、2021年2月には100万個出荷に到達する(注5)大ヒット商品となりました。

男性用コスメの需要は、ここ数年で世界的な高まりを見せていました。

しかし、資生堂が日本人男性を対象に独自に行った調査では、「綺麗な肌を作りたいが、女性用ファンデーションを使うのは抵抗がある」という回答も多かったのです。

そこで資生堂は、男性用BBクリーム「フェイスカラークリエイター」を発売して、「男性でも、メイクで綺麗な肌を作れる」という、これまでにないパーセプションを形成し、新たな市場を開拓したのです。

今ではシリーズ4種類を展開し、資生堂は国内の男性用コスメ市場をけん引する存在となっています。

既存のパーセプションの転換のみならず、まだ存在しないパーセプションを形成することも、マーケティングには有効だとわかる事例です。

パーセプションを理解してマーケティングに活用

パーセプションは、消費者が日常生活で得ているさまざまな情報から、無意識に形成されるものです。

現代でマーケティングを成功させ、売り上げ向上につなげるためには、パーセプションチェンジを促し、消費者自身の意識・行動変容を変えなくてはなりません。そのとき、パーセプションフロー・モデルの活用がカギとなるでしょう。

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引用(参考)
注1:沿革|株式会社LIFULL
注2:第22期株主通信|株式会社LIFULL
注3:2020年3月期 第2四半期決算説明資料|Fringe81株式会社
注4:メンズ美容への関心の高まりをうけて ウーノより BB クリーム&アイブロウ発売 ~2020 年 3 月上旬発売~|株式会社資生堂
注5:ウーノの男性用BBクリーム「フェイスカラークリエイター」シリーズが累計100万個出荷を突破!|株式会社資生堂

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