転換期を迎えたパチンコホール経営。スマート遊技機の登場が与えた影響とは

ギャンブル等依存症などの対策強化の影響を受けているパチンコホール業界。そんなパチンコホール業界では2022年11月から、過度な射幸性の監視と抑制を目的とした新たなスマート遊技機の導入が始まった。今後の将来にわたる設備投資負担など経営課題が見受けられる。パチンコホール業界そのものが縮小する中、将来に向けた設備投資負担などの経営課題に対して、どのような戦略をとるべきか。そのような環境では、生き残りに向けた業界再編も想定されるため、筆者はM&Aを有効な戦略の一つとして考える。

シェアする
ツイート

パチンコホール業界で進む規制の動き

パチンコホール業界で進む規制の動き

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風営法」という)によって規制を受けているパチンコホール業界は2015年6月の改正によって、「風営法第2条1項4号で『ぱちんこ屋』として設備を設け利用客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」として定義された。ここで定義された「設備」とは、ぱちんこ遊技機(以下「パチンコ機」という)や回胴式遊技機(以下「スロット機」という)である。

近年は「ギャンブル依存症問題」などへの関心の高まりから、日本遊技機工業組合がのめり込み対策として「パチンコ機開発に関する自主規制」を2015年に実施。また、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則」と「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」の改正が2018年2月施行され、「著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準」から「遊技機の認定と検定」まで規制が強化された。

こうした規制が強化される中、2020年5月には国家公安委員会規則の一部が改正された。改正内容は、最大2021年1月末までとしていた遊技機の旧規則機における認定と検定の有効期限を1年間延長することを認める、というものだ。これはコロナ禍の影響を受けたもので、旧規則機の撤去期限が後ろ倒しとなったのだ。この改正は、パチンコホールの経営に重くのしかかっていた機械入替の負担を一部軽減することになった。

スマート遊技機の導入がもたらした変革

スマート遊技機の導入がもたらした変革

さきほど述べたギャンブル等依存症対策強化の一環として、2018年2月以降、過度な射幸性の監視と抑制を目的とした「新遊技機」が開発されるようになった。新遊技機は出玉情報などを容易に確認でき、パチンコ機は管理遊技機(その後、名称を「スマートパチンコ(略称:スマパチ)」)、スロット機はメダルレス遊技機(その後、名称を「スマートパチスロ(略称:スマスロ)」)と呼ばれるものだ。新遊技機では、遊技球を遊技機内で循環する、または遊技メダル自体を使用せずに、遊技記録を電子情報で計測する。つまり、遊技球や遊技メダルに触れることなく遊ぶことができる遊技機なのだ。

こうした新遊技機はそれぞれ、スマスロは2022年11月21日から、スマパチは2023年1月から導入される予定で、感染症対策強化やギャンブル等依存症対策強化、不正防止、パチンコホールの負担軽減(遊技球、遊技メダルの保守や管理等)の効果が期待されており、業界への好影響も見込まれている。

しかし、新遊技機そのものに加えて、遊技機設置に必要となる専用ユニットまで、半導体不足のために入手が困難になっている。そのため、新遊技機の導入は大手のパチンコホールに偏る可能性がある。加えて、新遊技機の導入は購入や設置の設備投資の負担も少なくないため、中小や財務体力に不安のあるプレイヤーには重荷になる可能性も否定できない。

縮小傾向にあるパチンコホール業界

縮小傾向にあるパチンコホール業界

パチンコホールの市場規模を示す統計データは、警察庁の「営業所数や遊技機等の備付台数に関する発表」がある。

営業所数及び遊技機別備付台数の推移

警察庁のデータによれば、営業所数はこの10年間で3分の2近くまで減少。パチンコ機の設置台数も、この10年間で4分の3近くにまで減少している。こうした統計データは、パチンコホール業界が全体として縮小しており、厳しい業態が続いているものを示している。

また、経済産業省では月次の動きについて、調査対象を限定的に実施する「特定サービス産業動態統計調査」を公表している。

営業所当たりの月次売上高と設置台数の平均推移

パチンコホール業界では設置台数に大きな増減はないが、売上高は2020年前半に大幅に落ち込んだ。業界全体でクラスターの発生が報告されなかったことから2021年に少し回復は見られたものの、その後はコロナ禍以前の業績には戻らず低調に推移しているようだ。

大規模店でも店舗数は減少傾向

大規模店でも店舗数は減少傾向

パチンコホールはロードサイドや駅前などの立地条件もあるが、パチンコ機とスロット機の設置台数によって店舗規模が分かれており、警察庁による規模別の営業所数の推移の発表で確認できる。

規模別営業所数の推移

1,000台以上の大規模店舗が大手プレイヤーの象徴とされていたが、コロナ禍でそうした大手プレイヤークラスの店舗数も減少している。店舗数が300店以上の業界で、2位の店舗数をもつマルハンでは、2022年4月の新規出店が完全新規ではなく居抜き出店だったうえ、店舗の規模としては600台クラスの店舗だった。また、500台前後から700台未満の5店舗が2022年に閉店しており、店舗戦略を変えて取り組んでいることが見受けられる。

法的手続を活用した再生の動向は

法的手続を活用した再生の動向は

そうした状況のなか、パチンコホール業界では以前のような会社更生法や民事再生法といった再生に向けた法的手続の申請はみられていない。2021年以降では、特別清算や破産による法的手続がわずかにみられる程度である。

パチンコホールにおける主な法的手続事例

特別清算を申請した企業のうち、2020年に申請した企業は、会社分割による新会社を株式譲渡し、M&Aを実施した後の旧会社の整理だった。2022年は破産のみが見受けられ、業績不振による事業停止によるものと考えられる。

コロナ禍で目立つ店舗毎のM&A事例

コロナ禍で目立つ店舗毎のM&A事例

パチンコホール業界でのM&A状況はどうか。

2021年は、コロナ禍でも全国で10件程度のM&A事例の成約があった。特徴としては、特定の店舗(1店舗のケースが多い)を対象として、パチンコホール運営事業を会社分割(吸収分割等)で譲渡を行うものだ。

2022年は、11月時点では2021年より少ないものの、同水準に近い程度のM&A事例の成約があり、同じ流れが続いているとみられる。

店舗数が400店以上の業界で1位の店舗数をもつダイナムグループでは、2022年11月に1店舗吸収分割で営業を承継している。さらにダイナムグループは、店舗数拡大に向けて通常の新規出店に加えて、吸収分割によるM&Aも取り組んでいくことも発表している。

更なる淘汰が進んだときの有効な選択肢とは

ギャンブル等依存症対策の強化の影響もあって、パチンコホール業界で今後規制が弱まることは想定しづらい。また、人気があるパチンコ機やスロット機は半導体不足で導入コストが上昇している上に、スマート遊技機の導入は購入や追加の設備投資の負担が大きいだろう。

さらにコロナ禍でパチンコホール経営そのものの売上が減り、駅前好立地の店舗では、不動産業として業態転換を図っているところもある。

一方で、店舗条件が好ましい店舗ばかりではない。そのため、パチンコホール運営事業の経営主体である法人そのもの、複数エリアで事業運営をしている場合には、一部のエリアまたは特定の店舗などをM&Aによって、より高い価値評価で譲渡をして他事業への転換を図れる可能性がある。そうした意味でもM&Aという戦略は、今後のパチンコホール業界においても、有効な選択肢の一つとなり得るのではないだろうか。

コメントを送る

頂いたコメントは管理者のみ確認できます。表示はされませんのでご注意ください。

コメントが送信されました。

関連記事