マーケティング・コミュニケーションの意味とは?

マーケティング・コミュニケーションとは、売れる仕組みをつくるコミュニケーション活動全般です(注1)。広報やPRなどのコミュニケーション活動の展開で、顧客や見込み客との良好な関係を構築する戦略的なビジネス・プロセスと定義されています。

マーケティング・コミュニケーションの取り組みは、下記のとおりです。

  • テレビや新聞、街中の看板やポスターといった広告
  • プレスリリースや発表会、機関紙、刊行物などの広報(パブリシティ)
  • タイムセールや期間限定の割引、クーポンなどの販売促進
  • 電話やカタログ、メールマガジンなどのダイレクト・マーケティング
  • 店頭での実演販売や販売会、訪問販売などの人的販売

マーケティング・コミュニケーションの役割

マーケティング・コミュニケーションには、サービスとユーザーをつなげる役割があります。ユーザーにサービスを知ってもらい、興味を持ってもらうことが第一歩です。

マーケティング・コミュニケーションの一般的な役割の詳細を知ると、経営戦略に取り入れて展開する上で大きな強みとなるでしょう。

ここでは、マーケティング・コミュニケーションの役割について詳しく解説します。

サービスの有形化

マーケティング・コミュニケーションは第一に、製品やサービスをロゴ・マークやコミュニケーション・マークによって有形化する役割があります(注2)。

ロゴ・マークやコミュニケーションには、Apple社のリンゴマークのロゴ、デザインや文字で構成された大学のブランドイメージを表現したマークが、当てはまります。

顧客教育

顧客教育も、マーケティング・コミュニケーションの役割の1つです。事業者側が顧客教育を施すと、サービスの品質を維持しやすくなります。

具体的には、事業者が顧客の製品購入時に、取り扱い方法や自社の価値観などについて解説することが顧客教育といえます。こうした情報を顧客に伝えると、消費者が製品を大切にし、リピートする確率も向上するでしょう。

既存顧客の関係維持に特別な情報提供

既存の顧客との関係を長期的なものにするための特別な情報提供もマーケティング・コミュニケーションの役割として位置付けられます。

具体的な例として、来店して商品を購入した消費者に対し、後日はがきを送るなどが当てはまるでしょう。LINEやメールマガジンでの情報発信も、顧客との関係維持に役立つ情報提供です。こうした情報提供によって、製品やサービスの認知が高まり、リピーターが増えます。

マーケティング・コミュニケーションの成功事例

マーケティング・コミュニケーションが成功すると、サービスの認知度向上や、利用顧客増加などの効果を得られます。

ここでは、マーケティング・コミュニケーションの導入で実際に成功した事例を紹介しましょう。いずれも、マーケティング戦略の構築から、コミュニケーション活動が適切に行われ、顧客との関係構築に成功した事例です。

YouTube「好きなことで生きていく」

オンライン動画共有プラットフォームのYouTubeが、2014年に打ち出した「好きなことで、生きていく」と呼ばれる広告は、優れたマーケティング・コミュニケーションの筆頭事例といえます。

このキャンペーンの狙いは、動画配信を行うクリエイター「YouTuber」の募集です。現在も国内トップクラスのYouTuberとして活動するHIKAKINをはじめ、著名なYouTuberをテレビCMや街頭広告などで大体的にPRしました。

このキャンペーンによってYouTuberの認知度が飛躍的に高まっただけでなく、ユーザーの動画投稿への心理的障壁が下がり、YouTuberが増える契機になったといえるでしょう。

サウスウエスト航空「トランスファレンシー」

トランスファレンシー(Transfarency)は、Transparency(透明性)とFare(料金)を掛け合わせた造語です。サウスウエスト航空は、キャンペーンの一環として、燃油サーチャージを無料にする#FeesDontFlyというイベントを実施しました。

自社の航空サービスの優位性を説明した後、空港の荷物受け取りカウンターでギフトカードや無料チケットを搭乗客に手渡し、他のエアラインに払ったサーチャージ料を相殺します。そして次のフライトでサウスウエスト航空を選んでもらえるよう促し、多数のリピーターを獲得しました。

他にも、手荷物やフライトの変更方法、機内で提供される飲食物の料金などをテレビやラジオ、Webページで告知。顧客にとって親しみやすいブランドイメージの形成にも成功しています。

Dentsu Aegis Network「Dead Whale」

最後に紹介するのは、電通の連結子会社、Dentsu Aegis Network(DAN、現Dentsu International Limited)が2017年に実施した「Dead Whale」と呼ばれるマーケティング・コミュニケーションです。

DANは、2017年のASEAN(東南アジア諸国連合)サミット中に、海洋汚染が進むフィリピンの都市の海岸に、約22mのクジラの模型を設置しました。クジラはフィリピンの海岸に打ち上げられた160kgのプラスチック製の廃棄物を使って作成されたものです。ASEANサミットで海洋プラスチックが議題に挙げられ、話題を呼びました。

Dead Whaleは、沿岸の環境保護を訴える広告効果が強く、100カ国で15億のインプレッションを獲得。世界最大級の広告賞、カンヌライオンズでもゴールドライオンを獲得するなど、高い評価を得ました。

マーケティング・コミュニケーションを成功に導くポイント

マーケティング・コミュニケーションは、自社の商品やサービスを消費者に伝える手段ですが、より魅力的に見せる努力が必要です。ここでの「魅力」とは、情報コンテンツをメディアが進んで報道したり、多くの人がSNSで発信したりすることです。

ここからは、マーケティング・コミュニケーションを経営に取り入れて成功させるためのポイントを、魅力のあるコンテンツの作り方と併せて解説します。

PRプランニングをしっかり行う

優れたマーケティング・コミュニケーションの実行には、マーケティング戦略を策定する初期段階からのしっかりとしたPRプランニングが大切です(注1)。

PRプラニングは、広告や広報、販売促進といった適切なPR手法の選択はさることながら、他者に発信したくなるニュース作りが求められます。PR対象とする商品やサービスに、新規性・独自性が含まれていれば、第三者によって扱われ、露出が増えるでしょう。

第三者がレピュテーションを作るよう促す

マーケティング・コミュニケーションは、第三者のレピュテーション(評判)向上も重要です(注1)。第三者が商品やサービスの価値を評価し、拡散すると、商品、サービスの価値向上に直結します。

人が情報を広めたくなる要素には、下記が挙げられます。

  1. 相反する要素を併せ持つ「逆説、対立構造」
  2. 人の記憶に残りやすい「最上級、初、独自」
  3. 地域の情報を盛り込んだ「社会性、地域性」
  4. 人を起点としたストーリーである「役者、人情」
  5. 説明しやすい「キーワード、数字」
  6. トレンドを表現する「時流、世相、季節性」

これらの要素を意識して情報コンテンツを作ると、レピュテーションの向上が成功しやすくなるでしょう。

コンテンツ作りにこだわる

マーケティング・コミュニケーションは、人が発信したくなるコンテンツ作りが肝になります(注1)。発信者は、レピュテーションの形成で説明した6つの要素を踏まえたコンテンツ作りに注力するとともに、コンテンツの中のストーリーを作りも重要です。

ストーリー制作に重要なのは、事実に即したものである他、生活者に与えるメリットの創出です。ストーリーを生活者の環境に近づけるほど、ストーリーを受け取る消費者が商品やサービスに共感しやすくなります。

企業の経営戦略にマーケティング・コミュニケーションは有効

マーケティング・コミュニケーションは、多くの人が発信したいと思えるコンテンツ作りが重要であるとわかりました。

コンテンツが魅力的であれば、広告費を過剰に割かなくとも、自社の商品やサービスが市場に波及していきます。その結果、広告費の削減で利益が増えたり、リピーターを獲得しやすくなったりするでしょう。

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