縮小するテレビ広告

広告費グラフ
※出所:電通「日本の広告費」よりFMI作成

電通が3月11日に発表した「日本の広告費」では、2019年におけるインターネット広告費は前年比19.7%増の2兆1048億円、テレビメディア広告費は同2.7%減の1兆8612億円となり、いよいよインターネット広告費がテレビメディア広告費を上回る事態となった。直近4年の年平均成長率を見ても、インターネット広告費は16.1%増、テレビメディア広告費は0.9%減となっており、勢いの差は歴然としている。

インターネット広告の優位性は、常時携帯されるスマートフォンを経由した接触時間と、ターゲット顧客の閲覧履歴や反応をマーケティングに活かせるインタラクティブ性に集約されると考えられる。特に、博報堂DYメディアパートナーズの調査によれば、男女15才~19才、男女20才代では、スマートフォンとの接触時間がテレビとの接触時間を大きく上回っており、テレビメディア広告の重要ターゲットとされる若年層ほど、スマートフォンとの接触時間が長いという傾向と見られ、今後もインターネット広告優位の傾向は続くものと予想される。

コロナで制作力が低下

東京タワー
このような、メディア広告の王者であったテレビ広告の凋落というトレンドに加え、直近のコロナ禍が、テレビ業界を直撃している。国内で外出自粛や都市間の移動自粛を強く要請する緊急事態宣言や、海外主要都市のロックダウンにより、移動を伴い、人との触れ合いを魅力とするロケ撮影が実質的に不可能となった。
加えて芸能界や報道関係者、番組制作関係者からコロナ陽性者や死者が発生する環境下で、スタジオでの撮影も大きな制限を受けた。既に期待の新作ドラマも撮影が中止され放送開始時期が見えない他、バラエティ番組でも出演者がやむなく自宅から出演するなど、テレビ局がコンテンツ力を完全には発揮できない事態となっている。
ロケ撮影を多用する番組では、近々にも撮り溜めた番組が枯渇する可能性が有り、過去の番組の総集編や再放送といった苦肉の策で時間を埋め、コロナ禍が落ち着くまでの時間をしのぐ事態が散見される。

コロナ禍により、一般消費者の「巣ごもり消費」という環境下では、テレビとの接触時間は増大していると見られるが、広告主全般の経済環境や、上記制限を背景としたテレビ番組の不完全性を考慮すれば、短期的にはコロナ禍によるテレビ広告需要減は不可避となるだろう。

テレビ広告需要減に加えて、テレビ局の放送外収入の重要な地位を占めるイベント関連事業にもコロナ禍の大きな影響が見られる。音楽、演劇、スポーツ、展示会などのイベントは、多人数が密集してしまうことから、中止、延期を余儀なくされており、テレビ局の短期的な収益力を更に削ぐことになると考えられる。

影響は地方局ほど深刻に

ABCビル

上記に挙げたインターネット広告と比較したテレビ広告需要の中期的な後退トレンド、ならびにコロナ禍の短期的影響は業界に共通する問題だ。
しかし、強力な番組制作能力や多様な収益手段を持つ在京キー局へのインパクトは相対的に小さく、地方広告主、即ち地方経済動向に大きく依存する地方テレビ局に相対的に大きいものと考えられる。

地方局のテレビ放送に関する収入は、(キー局、準キー局から見た)全国ネット番組に関するネットワーク費の受入、自局の独自番組のタイム販売収入、そして自局の視聴率に準じたスポット収入となる。全国的なテレビ広告費の減少の影響を受ける上に、基盤が脆弱なローカルスポンサーの広告出稿にも依存する地方局にとって、コロナインパクトは、キー局よりも大きくなるのは当然だ。

従って、このような状況に抗うためには、地方テレビ局は、放送外収入の強化、ないしは新規事業の開拓に従来以上に取り組む必要があるだろう。

テレビ局を含むメディア各社の新規事業開拓においては、エンターテインメント業界での成長分野であるアニメ関連やイベント関連の事業化、ベンチャー育成の取り組みが散見される。
在阪準キー局の朝日放送グループホールディングスは、M&Aを積極化する方針を掲げ、M&Aや事業開発を主幹とする役員や上級管理職を中途採用し、2019年にアニメ企画会社「DLE」を子会社化したほか、各種新規事業の創出に携わっている。
同じく在阪準キー局のMBSメディアホールディングスも新規事業創出に積極的で、新規事業のインキュベーション、M&Aを行うビークルとして「MBSイノベーションドライブ」を立ち上げた他、大阪中央郵便局跡地(梅田)で2023年より約2,500席の劇場運営を予定し、食事業をテーマとする新会社を設立している。
北海道新聞社は、インターネット企業デジタルガレージと共同で、北海道におけるスタートアップ企業の育成とオープンイノベーションの推進を目的とした共同事業に取り組むことで合意し、株式会社D2Garageを設立している。

まとめ

コロナ禍の影響で、どうしても足元の苦境をどうしのぐかに目が行きがちではあるが、地方テレビ局は、新規事業拡大に待ったなしの状況であり、多方面の地元企業や自治体とも協力しながら、新規事業開拓を促進しうる人材をアサインした上で、積極的な取り組みに期待したい。

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