現地法人とは

現地法人とは、日本企業が海外に設立する子会社のことです。日本で会社を設立する際、会社法のルールに従うのと同様に、海外で会社を設立する際も現地の法律が求める条件をそろえて、登記を行ない、法人(会社)を設立します。

現地法人は、日本企業の子会社になりますが、「法的な関係性」は出資関係くらいです。会計上は売上も支出も利益も、現地法人(子会社)と日本企業(親会社)は別々に計上します。

また、子会社と同じ形態なので、会計上では資金の移動に金銭消費貸借契約や増資などの必要があります。現地法人があげた利益を、そのまま日本の親会社に「資金移動」することはできません。

現地法人が黒字なのに、日本の本社が赤字、ということも起こり得ますし、現地法人の赤字を日本の本社で吸収することはできません。

定款も現地法人用のものが必要です。また、税務も労務も異なります。

国別の注意点

現地法人には、日本の企業が100%出資する完全子会社や、現地の企業との合弁会社などがあります。

資本主義国では、完全子会社の現地法人を設立しやすいですが、中国などの社会主義国である場合、さまざまな規制から合弁会社にせざるを得ない場合があり、国によって大きく異なります。 今回は例として、4カ国紹介します。

アメリカ
現地法人の会社形態は6種類あり、事業の規模や目的に合わせた形態を選択することが重要になります。

原則、現地法人の資本金の100%を外国の法人または個人が所有しても問題はありません。しかし、業種規制あるいは国家安全保障にかかわる規制(エクソン・フロリオ条項)に当てはまる発電や銀行業など特定の9分野は、外資の出資比率が制限されるケースがあるので注意が必要です。

注意点として、州ごとに必要な書類・手続きだけでなく、税制や所得比率も大きく異なります。そのため、現地法人設立後のビジョンを明確に持っておく必要があります。

タイ
会社設立を始める前に、まずは各種規制について調査することが大切です。外国人事業法を始め、外為管理法、外国人職業規制法、移民法、工場法、関税法等の様々な規制が、進出の可否、選択するべき会社の形態などに大きく関わってきます。事業目的に照らし合わせて、関係する規制について調査しましょう。

また、BOI (タイ投資委員会:タイ工業省傘下の投資誘致機関)や、タイ工業団地公社の投資奨励に該当するか調査しておくことも非常に重要です。該当する場合、外資100%での会社設立が可能となったり、機械輸入税や法人所得税の減税・免税など、進出企業は大きなメリットを受けることができます。

ベトナム
外資規制をはじめ、日本企業が進出する上で障害となりうる規制が多く存在しています。外資規制としては、IT業などのように、100%外資でも会社設立可能な業界もあれば、広告業界のように1%でもベトナム資本が入っていれば問題ない場合、100%ベトナム資本でなければ事業ライセンスが取得できない場合など、細かく分かれているため、注意が必要です。

ベトナムでは環境規制も設けられており、現地法人設立の際には「環境影響評価書」を提出しなければなりません。また現地法人設立後も、環境への取り組みがチェックされることを覚えておきましょう。

シンガポール
他の東南アジア諸国に比べても会社設立が容易で、日本人・日本企業でも100%独資で簡単に設立できます。また、タックスヘイブンに該当しない限り、日本の法人税より低いシンガポールの法人税 (17%) が適応されるため、税制面でのメリットを享受できます。

注意点として、会社法上、取締役の中に必ず1人はシンガポールの居住者を含まなければならないことや、会社の財務書類や定款の変更等の政府登録業務、総会・役会関連書類の作成業務を担う秘書役を設置する必要があります。

海外支店や駐在員事務所との違いは

現地法人と同様に、海外で事業を行う際に設立する海外拠点に「海外支店」と「駐在員事務所」があります。そこで、現地法人とその2形態との違いについて解説します。

海外支店との違い

海外支店は、日本の本社の事業の一部という位置づけです。海外支店の会計は、本社と合算します。つまり、海外支店の損益は、本社の損益と相殺することができます。

現地法人の売上は、日本の本社の売上に加えることができませんが、海外支店の売上は日本本社の売上に加えることができます。

海外支店の利益には日本の税金が課されますが、海外でも課税されます。これでは二重課税になるので、日本の税制には外国で納めた税金をその年の所得税額から差し引ける「外国税額控除制度」が用意されており、海外で課税された分を日本の税制の課税対象外にすることができます。

駐在員事務所との違い

駐在員事務所は一般的に市場調査や情報収集などを中心とし、収益を伴う事業を行いません。

ただ他の海外拠点と比較すると、駐在員事務所は手続きが容易なため、「身軽さ」という大きなメリットがあります。

現地の規制はどうなのか、パートナーを組める企業はあるのか、などを鑑み、進出できるのかどうか判断しなければなりません。たとえば、政情不安の国では、まずは駐在員事務所を設置して様子をみたほうがよいでしょう。

現地法人を設立するメリット・デメリット

3つの違いが分かったところで、現地法人を設立するメリットとデメリットを考えていきましょう。

現地法人のメリット

①ビジネスチャンスの拡大

現地法人をつくる最大のメリットは、確固たる海外拠点ができることです。現地法人があれば、現地の顧客や規制当局の信頼度は高まります。また現地に拠点を持つことによって、現地の優秀な人材を確保しやすくなることや、早い段階での情報の入手が可能になること、現地の顧客のニーズを的確に把握できることも海外拠点を持つ大きなメリットです。

②節税

法人税率が日本より低い国に現地法人を設立した場合、節税効果も見込めます。
OECDの基準では、日本の法人税率である23.2%で、もっとも高いフランスの32.02%、メキシコ、ポルトガル、オーストラリアの30.00%よりも低くなっていますが、アメリカの21.0%やイギリスの19.0%、カナダ15.0%、ドイツ15.83%、ハンガリー9.0%、スイス8.5%、タイ20%、シンガポール17%は、かなり低くなっています。これらの国に現地法人を設置すれば、節税効果が得られます。

③コストカット

現地で使用したり、販売したりする場合、原材料の調達費や生産コストを節約することができます。また、不動産や建設などの費用を節約することができます。

現地法人を設立するデメリット

一番のデメリットとして、カントリーリスク があります。政権が変わったり、情勢が変わったりして営業活動に影響を与え、特に政情が不安定な国では何が起こるかわかりません。政情が不安定な国の場合テロの標的になる恐れもあるので、そこの自己防衛をどうするかを考える必要があります。
また、資金繰りや税務などの会計処理、人の採用や労務管理、登記などの法務管理など、事務処理や手続きが煩雑かつ膨大になってしまうこともデメリットです。

海外事業の目的や規模に合わせて拠点をつくる

海外拠点を設立するといっても、各国で法律や文化などが異なるため、一筋縄ではいきません。

そのため、最初から現地法人ありきで海外進出をしてしまうと「大火傷」を負うことになりかねません。

海外事業の目的や規模に合わせて、現地法人、海外支店、駐在員事務所を使いわけることをおすすめします。

参考
国際収支の推移 : 財務省
海外投資、日本の稼ぎ頭に 経常収支の構図変化:日本経済新聞
Table II.1. Statutory corporate income tax rate

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