無形文化遺産「和食」

無形文化遺産「和食」

和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録された。伝統技術といった分野の登録・保護が主な目的で2010年に「食」が対象となった。それをきっかけに、フランスの美食術、メキシコの伝統料理などが登録された。

和食は、南北に伸びた日本の国土も相まって地域独自の発展を遂げた。太平洋側と日本海側にて水揚げされる魚介類が異なり、地域ごとに異なる出汁・醤油・日本酒等の文化が存在。

地域の郷土料理に合わせた味・文化が育まれてきた。

※筆者も、両親が鹿児島、自身の育ちは関東のため、帰省すると味の違いに驚くことがある。

中小企業が支える「和食」

中小企業が支える「和食」

▲出所:国税庁「酒のしおり」、しょうゆ情報センター「醤油の統計資料」、経済産業省「工業統計」よりFMI作成
注:酒税法改定の観点から2017年データで統一比較、ソース製造業のみ「工業統計」従業員4人以上の事業所数を採用

日本国内の洋食関連と和食関連メーカーの企業数を比較した場合、洋食関連メーカーの方が少なく、和食関連メーカーの方が多く存在する市場である。

これは市場規模の大小とメーカー数が相関しているわけではなく、洋食関連に比べ和食関連メーカーは中小企業が多いことを意味する。

地場スーパーの存在

スーパーマーケットの業界構造も「日本の食文化≒和食」の特徴を表している。

日本のスーパーマーケット市場は、大手全国チェーンの他に“地場スーパー”の存在感も大きい。その背景は、先に述べた“地域の味”に合わせた品揃えが全国チェーンに比べ、地場スーパーの方が優れているためと言われる。

世界での和食ブームは幻想?

世界での和食ブームは幻想?

海外における和食文化の広がりはどうだろうか。健康志向も相まって世界では和食ブームが広がっているとも耳にする。

農林水産省の調査によると海外における日本食レストランの数は2006年には約2.6万店だったが、2019年には約15.6万店まで増加(アジアでは約10.1万店、北米では約2.9万店存在)。13年間で6倍(年平均成長率15.5%)と急増している。

一方で、人口10万人当たりの和食レストランの店舗数を見ると、アジアが2.2店、北米では5.1店舗。

日本の中華料理店は41.6店(ラーメン店・中華そば店を除いた中華料理店の場合は11.7店)であり、まだまだ及んでいないのが実態である。

輸出は増えても、国内減少を吸収できない

輸出は増えても、国内減少を吸収できない

▲出所:国税庁「酒のしおり」、財務省「貿易統計」よりFMI作成

また先に述べた日本酒の「国内消費量」と「海外輸出量」の推移を比較すると、どうなるのか?

海外への輸出量は10年前と比較すると2倍以上と着実に増加している一方で、国内消費量の減少をカバーしていない。

この現象は日本酒に限ったことだけではなく、他の和食市場の多くが同様である。海外への輸出量は国内消費に比べ極僅かであり、国内消費量に至っては減少の一途を辿っている。

国内市場の減少背景は、人口減少だけでなく、食生活の欧米化により日本人が和食を選択しなくなった結果と言える。(主食用米の1人当たり消費量も減少)

熾烈な競争

熾烈な競争

また、海外市場は成長市場であるため、各企業の競争は熾烈だ。

比較的海外で受け入れられる日本のビールにおいても、アメリカのスーパーでは4大メーカーの主力ブランドのみが棚にあれば良い方で、それ以外が棚を取っていることは稀である。

日本国内のコンビニやスーパーの棚を見れば、殆どが国内メーカーの製品である。海外製品はビールであればバドワイザーかハイネケン、ホットソースであればタバスコといった主要メーカーのみが並ぶ。海外で和食食材は、限られた棚を確保する必要がある。

つまり、中堅以下の難しさが伺える。

国内(域内)or海外(域外)の“まえ”に

国内(域内)or海外(域外)の“まえ”に

海外市場の競争が激しく国内市場も縮小。となれば「ピボット」や「多角化」を図ることで他市場への参入を考える。

但し、国内(域内)or海外(域外)かに関係なく、最も重要なのは自社の優位性・競争力を見極め、正しいビジネス領域で正しい経営を行うことだ。また周辺領域の進出に際し、ケイパビリティ(組織、企業の持つ能力)が足りない部分があるならば、それを補完することだ。

コンサルティングの現場では、国内(域内)経済の縮小に怯え、闇雲に周辺領域に進出し、失敗しているケースを多々目にする。

門外不出・秘伝のワナ:裸の王様

門外不出・秘伝のワナ:裸の王様

伝統的な和食関連のメーカーでは門外不出・秘伝の製法を守るため、創業一族による経営が続いてきたケースが多い。

代表以外の幹部も一族で固められていることも多く、社内外における創業家の存在は非常に大きい。この事自体は決して悪いことではないが、先に述べた周辺領域への進出に際しては足枷になる。

自社・自身の専門を超え、新たな領域への進出に至っては、外部の活用・連携といった「新たな視点・意見を取り入れる」ことが重要である。別の視点・意見を寄せ付けず、幹部や周辺にイエスマンばかりを配置すると「裸の王様」にもなりがちだ。あえて批判や反論をする幹部・外部の存在が重要である。

組織運営に求められる「伝統的正当性」

一方、大規模な事業ポートフォリオの入れ替えには強烈なリーダーシップ・権威も必要となる。

新領域を育たてるためには時間を要し、また社内での逆風にさらされることも珍しくない。

外部から招聘した人材は内部人材とは直ぐには馴染めず、創業家の後ろ支えが必要なことも多い。

マックス・ウェーバーが著した「支配の諸類型(経済と社会)」によれば、組織統治のためには「伝統的正当性」「合法性」「カリスマ性」の3類型が存在する。つまり、創業家によって歴史を繋いできた伝統産業では「伝統的正当性」が担保され、大胆な戦略転換に適している。

未来は、作るもの

市場縮小は避けられない。国内人口は減少し、和食文化を支えてきた胃袋の数は減少する。

未来に残すべき“文化”があるならば根性論に陥るのではなく、コントロール”可能なモノ“と”不可能なモノ“を見極め、冷静に手を打つことだ。リーダーが行うべきは“成り行き”に身を任せるのではなく、“未来を変えるため、未来に投資する旗振り役”になることだ。

▼出所:国税庁「酒のしおり」
しょうゆ情報センター「醤油の統計資料」
経済産業省「工業統計」
財務省「貿易統計」
総務省統計局「平成28年経済センサス」

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