社外取締役とは?その報酬、重視されるわけ、最新動向を解説

企業経営を管理監督すると言う意味であるコーポレートガバナンスを巡る動きが最近活発になっています。 特に上場企業は社会の公器として不正や粉飾決算などあってはなりません。ただ、残念ながらアメリカにおいては2001年にエンロン社、2002年にワールドコム社が多額の粉飾決算により倒産しました。 日本においても2004年の西武鉄道の不実記載問題、2005年のカネボウ、2006年のライブドアによる有価証券報告書虚偽記載問題などを受け、金融商品取引法が制定されました。結果、経営に対する監督が強まってゆくことになっています。 2015年に金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を制定し、先日2021年6月11日にそれが改定され、コーポレートガバナンス強化の機運が更に高まってきています。 コーポレートガバナンスに係る論点は複数ありますが、特に議論の対象となるのが社外取締役です。社外取締役の存在意義や重要性など、実務的な面や報酬面にもフォーカスしてご説明します。

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社外取締役とは

社外取締役の定義は会社法第2条第15号に詳しく規定されており、簡単に言えば、社内人材ではない「社外」出身の取締役ということになります。

特に日本においては、サラリーマンの最高位として取締役が存在している会社が多いでしょう。

そういった社内出身者である取締役にはできない、第三者の視点をもった提言や意思表示が社外取締役には期待されています。

旧商法の時代から社外取締役という立場は存在していましたが、2006年の会社法施行で明確化されました。

そして、コーポレートガバナンス改善の機運とともに、2000年代初頭から増加してきました。

コーポレートガバナンス・コードの影響

社外取締役の活用が本格化されたのはコーポレートガバナンス・コードによる影響といっても過言ではありません。

2015年から上場企業に適用されたコーポレートガバナンス・コードは、法的拘束力のない自主規制であるものの、各原則を実施する(コンプライ)か、実施しない理由を説明する(エクスプレイン)かが求められ、上場企業にとって大きな牽制力となっています。

コーポレートガバナンス・コードでは、上場会社に独李社外取締役を少なくとも2名以上選任することが求められており、上場会社による社外取締役選任が加速しました。

また、改定されたコーポレートガバナンス・コードにおいては、2022年に予定されている東京証券取引所の市場区分変更によって創設される、最高位の市場であるプライム市場に上場する企業においては、少なくとも3分の1以上、総合的に必要と認められる場合は過半数の社外取締役の選任を求めています。

加えて経済産業省も2020年7月、「社外取締役の在り方に関する実務指針」を策定し、コーポレートガバナンス改革が成長戦略の重要事項であるとし、社外取締役の存在が大きな役割を果たしている旨を主張しています。

これらの動きからわかるように、今後も社外取締役を巡る動きはさらに活発化することが想定されます。

社外取締役はどう選定すれば良いのか

コーポレートガバナンス強化の期待をされる社外取締役ですが、どのように選定すればよいのでしょうか。

上場企業の社外取締役の顔ぶれをみていると、以下のようなバックグラウンドの方が目立ちます。

  • 弁護士、公認会計士、コンサルタントなどの専門職
  • 大学教授といった学識経験者
  • 行政経験のある官僚出身者
  • 他企業の経営を実際に担っていた(もしくは現役で担っている)経営経験者

各々の属性で有している知識や経験にバラツキがありますが、複数選任を要する社外取締役のバックグラウンドのバランスをとることも必要でしょう。

得てして企業の社長やCEOはリスクを顧みず新たな領域に突き進むことを厭わないタイプも多いことから、そういった企業トップを牽制し、時にはブレーキをかけ、冷静に経営実態を概観することも重要です。

したがって、社内取締役も含む役員構成は慎重にバランスを重視することが望まれます。

社外取締役の実際の選定ですが、なかなか豊富な知識と経験、バックグラウンドを持った方を探すことは難しいことが多いです。

時として社長やCEOの「お友達」が社外取締役に選任されることもあるようですが、コーポレートガバナンス強化の文脈においては望ましくありません。

最近では人材紹介会社をはじめ社外取締役紹介サービスを提供している会社も多く、求人サイト経由で募集している上場企業もあるようです。

社外取締役就任のプロセスは、社外取締役就任打診の受け入れ後、一般的には企業が年に1回開催する定時株主総会に取締役選任議案として上程され、過半数の賛成により可決され、登記を経て就任となります。

逆の見方をすれば、社外取締役は取締役としての選任プロセスを経る必要があるため、会社と合意さえすればいつでも就任できるわけではないといえます。

気になる社外取締役の報酬は

社外取締役の報酬ですが、経済産業省のCGC研究会が2020年に行ったアンケートによると、最多のレンジは600万円~800万円です。

企業規模が大きくなればその報酬は多額になることが多く、中には3,000万円を超える企業もある一方で、200万円未満の企業もあり、報酬にはバラツキがあることが見て取れます。

毎年取締役選任において株主の意向を反映したほうがよいという考えから、任期1年としている上場企業も多いようです(非上場企業の場合は定款により任期を10年まで延長可能なため、上場企業よりも長期に設定している企業が多くみられます)。

社外取締役選任時のポイント

社外取締役の顔ぶれは知識や経験のバランスをとる必要があるとご説明しました。
社外取締役には一義的に会社経営への助言が求められるとともに、経営陣の暴走を牽制する役割が期待されています。

したがって、本質的には知識・経験を十分に有しているとともに、自身の意見を経営に配慮することなく明確に発言できる人が望ましいと考えられます。

社外取締役の取締役会での権限は、あくまでも他の取締役と同じ、1票を有するのみですが、実際の取締役会での社外取締役の影響力は会社によって様々です。

例えば、形式的な発言しかしない社外取締役もいれば、積極的に取締役会での議論に参加し、必要に応じて経営に事案の再検討を要請するような方もいます。

1票の権利しか持たない社外取締役の発言ですが、経営としては取締役会で社外取締役に拒否された事案を押し通すことはなかなか難しいため、実質的には強大な拒否権を持っている方もいます。

監査等委員会の機関設計をとっている会社でも、常勤の取締役(監査等委員)の設置は義務付けられていないため、社外取締役は一般的に月に1回から2回開催される取締役会への参加がメインの業務になります。

必要に応じて、取締役へのトレーニングとして研修や懇談会などを開催している会社もありますが、実働頻度はさほど高くないということが一般的です。

社外取締役の最新動向

近年では、上場企業の中でも特に大手企業において、社外取締役が取締役会の議長に就任するケースが散見されます。

2020年には双日や第一三共が取り入れ、日経平均に組み入れられる225社のうち、2020年末時点では23社の取締役会議長が社外取締役となっています。

従来は社長(CEO)や会長が議長を務めるケースが多かったですが、コーポレートガバナンス徹底の観点から、経営と業務執行を峻別することを目的としています。

また昨今の東芝の事例のように、社外取締役が会社側の人事案に反対することなど、特に会社にとって有事の際、その動向に注目が集まります。

注目される女性社外取締役

最近の顕著な動向として、SDGsやサスティナビリティに注力する企業も多く、率先してジェンダー平等を体現する手段として女性の管理職登用や社外取締役登用を積極的に推進している企業も増えています。

また、コーポレートガバナンス・コードにおいても、「女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保」が要請されています。

6月11日に公表された新コーポレートガバナンス・コードにおいては、多様性確保に向けた考え方や目標を示すことも要請されており、戦略的に女性を含む多様な顔ぶれの取締役構成とすることが求められています。

実業家の小林いずみさんのように、みずほ銀行など複数の大企業の社外取締役を兼任する実力者も存在し、日産自動車はレーシングドライバーの井原慶子さんを、不二家は女優の酒井美紀さんを社外取締役に選任し、話題を集めています。
ただし、このような傾向については「話題作り、広告塔」といった批判も見受けられます。

まとめ

コーポレートガバナンス強化のトレンドから、社外取締役への期待が高まっていることをご説明しました。

一方で、上場企業を中心として社外取締役の適任者争奪戦が引き起こされているともいわれています。

各企業は自社の経営に資する社外取締役をバランスよく選任し、かつ、就任した社外取締役にいかんなくその知識、経験を活かした活動をしてもらう制度や風土づくりをすることが求められているといえます。

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