カンパニー制の組織とは?メリットデメリットと導入事例を紹介

企業には多様な組織形態があり、企業規模や事業内容、時代背景などを加味し、自社に合った形態が選択されます。 日本で初めてソニーが採用したカンパニー制は、大規模多角経営企業を中心に広がりました。 しかしその一方で、カンパニー制を廃止し、事業部制やホールディングス制へ移行した企業もあります。 本記事では、カンパニー制の特徴やメリット、導入・廃止企業の背景について解説します。

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カンパニー制の組織とは

カンパニー制は事業分野ごとにカンパニーと呼ばれる組織に分け、各カンパニーを1つの会社のように位置づけ、権限や責任を持たせる組織形態です。

1990年代バブル崩壊後の景気低迷の中、企業は組織のスリム化やマーケットへの迅速な対応が求められました。

この時代背景から、身軽で、市場変化に対応しやすいカンパニー制が広まりました。

独立採算制の組織形態

カンパニー制最大の特徴は独立採算制です。

各カンパニーに責任者を置き、カンパニー内の人事や投資、予算管理など経営上の意思決定権を与えます。

権限が大きい分、責任範囲も広く、利益追求から、貸借対照表や損益計算書の確認、経理上も独立しているのです。

組織としては、人事・経理などの間接部門を各カンパニーに設置。業務上も独立させ、迅速で柔軟な組織体制を実現します。

事業部制との違い

事業部制は事業分野ごとに組織を分け、本社機能配下に事業部として配置する組織形態です。

現在大多数の上場企業で採用されており、一般的な組織形態と言えます。

カンパニー制と事業部制の形態の違いは権限範囲です。カンパニー制が経営上の意思決定を内部で行えるのに対し、事業部制は重要な意思決定権は本部が所有している点です。

事業部制をより発展させ、自立した組織体制構築の目的で、カンパニー制を採用する企業もあります。

一方で、カンパニー制を廃止し、事業部制へと組織改編する事例もあります。

某金属メーカーは、主要カンパニーの業績悪化により、カンパニー制を廃止し、事業部を管理するCOO・CEOを配置。執行役員直下で事業部を管理できるよう体制を見直しました。

ホールディングス制との違い

ホールディングス制は、持株会社である親会社が、傘下企業(事業会社)の株式を保有し、意思決定権・人事権・投資決済権などの経営に関する権利を持ちます。

傘下企業は親会社とは別法人のため、同一企業内で組織を分けるカンパニー制とは形態が異なります。

ホールディングス制のメリットは、持株会社が経営、傘下企業が事業運営と役割を明確化し、経営の効率化を図れる点です。

2022年にカンパニー制からホールディングス制への移行を発表した某家電メーカーは、各カンパニーの別法人化によって各領域での事業運営に専念し、競争力を磨く狙いがありました。

分社化との違い

分社化は事業内容やエリアなど、一定の基準を元に別法人として子会社や関連会社を設立する組織形態です。

カンパニー制は同一法人内での組織で、分社化は別法人のため、さらに独立性を高めた組織形態と言えるでしょう。

分社化のメリットは、それぞれの子会社の自立した経営により、各社の経営状態が見えやすくなる点です。

また、事業ごとの分社化で、業績不振事業の影響での全社倒産のリスクを回避できたり、反対に成長分野に対し迅速な事業展開が行えたりします。

カンパニー制のメリット

カンパニー制は主に大規模多角経営企業で採用されてきました。

これは、各カンパニーに責任者や間接部門を設置するため、ある程度の規模が必要であり、カンパニーごとに採算のとれる売上高が必要なためです。

スピーディーな意思決定

カンパニー制は、各カンパニーが経営判断の権限を持ちます。

大規模投資や経営戦略に関する判断を本部へ仰ぐ必要がなく、全てをカンパニー内判断で行えるため、迅速な意思決定が可能です。

カンパニー制の採用で、変化の速い市場や顧客ニーズに合わせて、迅速な経営判断が可能になります。

責任の所在が明確

カンパニー制は独立採算制のため、各カンパニーに売上・利益・コストなど経理上の数値も独立して算出されます。

そのため、各組織の業績が好調か不調かは明確で、要因も見えやすいです。

不調な場合でも要因を発見し、課題に対する戦略立案を迅速に行えるのも大きなメリットでしょう。

人材育成への効果

各カンパニーの責任者は権限範囲が広いため、経営者視点でのカンパニー運営が求められます。

大規模投資や人事戦略、事業戦略立案など、責任者による会社経営に必要な経験の蓄積により、将来の経営者層の育成に繋がります。

カンパニー制のデメリット

カンパニー制組織では、各カンパニーが独立する性質上生じる弊害が存在します。

この弊害に対する工夫がないと、会社としての一体感が薄れ、場合によってはカンパニー間で敵対するリスクもあります。

カンパニー制の効果的な運用には、各カンパニーの独立性と全社の一体感のバランスが大切です。

カンパニー間の連携の希薄化

カンパニーが1つの組織として独立するため、会社が各カンパニーに分断されます。

そのカンパニーが自組織の利益を最優先に行動するため、他組織への興味や連携の意識が薄れる傾向があります。

また、本社も権限委譲しているため、経営に助言する機会が少なく、情報連携が希薄化する可能性もあります。

重複機能が生じる

先述した通り、カンパニー制は間接部門を各カンパニーに設ける組織体制です。

人事や経理、法務など間接部門は組織間で共通の業務も多く、重複が生じます。

社内の手続きや事務処理を素早く行える点はメリットですが、全社で見ると重複コスト・工数により非効率発生の恐れもあります。

カンパニー制の導入事例

カンパニー制は各種メーカーや金融企業、WEB系企業など様々な業種で採用されています。

カンパニー制の効果的な運営には、導入目的や組織編成の切り口、責任者の決裁権限範囲、本社機能の関与度合など、自社に適した体制構築がカギとなります。

ここでは、カンパニー制導入2社の目的や背景、体制を解説します。

ソニーのカンパニー制導入から再編・廃止

1994年にソニーは19の事業本部を8つのカンパニーの事業単位に括り直し、日本で初めてカンパニー制を採用しました。

この組織再編の背景には、景気後退によるマイナス成長の状況を打破すべく、以下の5つの狙いがありました(注1)。

  • 中核ビジネスの一層の強化と新規ビジネスの育成
  • 市場対応型組織を導入し、製造・販売一体となってマーケットの要請に対応
  • 事業責任の明確化と権限の委譲により、外部変化に迅速に対応できる組織の構築
  • 階層の少ないシンプルな組織
  • 企業家精神の高揚を図り、21世紀に向けたマネジメントの育成

上記の項目から、組織再編により意思決定の迅速化・人材育成のみならず、事業ごとの成熟度に合わせた戦略立案や、重層化した組織の役員階層の簡略化によるシンプルで風通しの良い組織への再編など、多くの目的が読み取れます。

1996年には、定着してきたカンパニー制をさらに市場対応力を増すように10のカンパニーに再編。各事業が自立的に事業運営を行いつつ、本社機能の強い求心力で会社が一体となり、1997年には過去最高の業績を達成しました。

しかし、主要事業であるエレクトロニクス分野のデジタル化対応の遅れや短期的な成果を評価する人事制度などが影響し、徐々に営業損失が拡大していきます。

そこで、2005年にはカンパニー制廃止を発表、これには、カンパニー制で分断されていた商品戦略や技術、資材調達、マーケティングなどの重要部門の横断的連携を強化し、重複機関を排除して、全体の効率化を行う狙いがありました。

製品軸のカンパニーで「もっといいクルマづくり」を掲げるトヨタ

トヨタ自動車(以下トヨタ)は2016年にカンパニー制を採用し、製品軸で7つのカンパニーを設置しました。

これは、従来掲げていた「もっといいクルマづくり」とそれを支える「人材育成」を促進する狙いがあります(注2)。

担当する製品の責任・権限をカンパニー責任者であるプレジデントに集約し、企画から生産まで一貫したオペレーションを実施しました。

従来、技術開発、生産、デザインといった機能を軸とした組織を製品を軸に構成し、技術や生産等の機能部門を各カンパニーに設置し、機能間の調整に時間をかけない効率的な仕組みを構築しました。

この再編で、組織内での迅速な意思決定と事業が効率的に利益追求できる体制を実現しています。

また、トヨタはカンパニー制採用の効果もあり、組織再編後3年間でプリウスなどの中型車から大型車、レクサス車まで幅広くラインアップを拡大しています。

カンパニー制が自社に適しているか慎重な判断を行う

カンパニー制にはメリットが多い反面、有効に機能しなければ組織の一体感を損ない、無駄なコストや工数が発生します。

カンパニー制を有効に機能させるには、本社機能の強化や互いが連携しやすい組織風土の醸成、各カンパニーが自立して事業を行える売上規模や人材確保など、多面的視点からの体制整備が不可欠です。

市場動向や景気変動などの外的要因も影響するため、カンパニー制導入には慎重な判断が必要です。

引用(参考)
注1:ソニーグループについて|ソニー株式会社公式ホームページ
注2:トヨタ自動車、新体制を公表|トヨタ自動車株式会社公式ホームページ

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