ハイブリッドクラウドとは?複数のクラウドサービスの組み合わせ

ハイブリッドクラウドとは、企業や組織がクラウド環境で情報サービスを管理するとき、複数のクラウドサービスを組み合わせてシステムを構築する形態です。

クラウドサービスの種類については、後ほど解説します。

ハイブリッドクラウドの市場は世界的に成長中

アメリカの調査会社「Markets and Markets(マーケッツ・アンド・マーケッツ)」によれば、世界のハイブリッドクラウド市場は2018年時点で446億米ドル(約4兆6,107億円)を記録したとのことです。また、2023年までに976億米ドル(約10兆857億円)に成長すると予想されています。

国内のハイブリッドクラウドを含めたクラウド市場も毎年拡大しており、2024年に全体で5兆円を超える見込みです。

すなわち、ハイブリッドクラウドは国内外問わず今後も成長していく市場と言えるでしょう。

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドはどう違う?

マルチクラウドとは、複数の事業者(ベンダー)のクラウドサービスを組み合わせて各社サービスの利点を活用し、より最適なシステムを構築する方法です。

複数のクラウドサービスを利用する点ではハイブリッドクラウドと共通しますが、一般的に利用するクラウドサービスの事業者が複数の場合にマルチクラウドと呼びます。

とくに、事業者の異なる複数のパブリッククラウドを利用する形態を狭義のマルチクラウドとするケースが多いです。

クラウドの実装モデルには3種類が存在する

ハイブリッドクラウドを構成するクラウドサービスのモデルは3種類あります。各種類のモデルの特徴について以下に解説します。

プライベートクラウド

プライベートクラウドとは、ひとつの企業や組織だけがアクセスできるクラウド環境でサーバーやデータを管理するモデルです。

クラウドサービスの中でも最も閉じた環境で運用する特徴があり、外部からのアクセスを受け付けないという意味ではオンプレミスと変わりません。専用のクラウドシステムを構築するため、導入コストが高いのが特徴です。

物理サーバーを利用組織の敷地内に設置するケースもあれば、クラウド事業者のデータセンターなどに設置するケースもあります。

コミュニティクラウド

コミュニティクラウドとは、特定のコミュニティに属する複数の企業や組織がアクセスできるクラウド環境でサーバーやデータを管理するモデルです。

銀行間ネットワークや製造業のSCM(サプライチェーンマネジメント)など、業種や事業内容などが共通する組織が共同でデータセンターなどを運用するのが一般的とされます。

パブリッククラウド

パブリッククラウドとは、サービスが一般公開されており、インターネットを通じて誰でも使えるクラウド環境でサーバーやデータを管理するモデルです。

代表的なパブリッククラウドサービスは、Googleの「GCP(Google Cloud Platform)」やAmazonの「AWS(Amazon Web Services )」などが挙げられます。

個人でも使えるサービスを企業や組織も利用できるという見方もでき、低価格かつ容量を柔軟に調整できるのが魅力です。

ハイブリッドクラウドのメリットとは?

上記に解説した3種類のクラウドサービスを組み合わせるハイブリッドクラウドには、どのようなメリットがあるのでしょうか?3つのポイントに分けて解説します。

低価格でセキュリティを確保できる

組織が扱う情報は、その内容によってセキュリティの要件が変わるものです。

プライベートクラウドを利用すればセキュリティを強固にできますが、導入のためのコストは高くなります。

全ての情報に対して厳重にセキュリティ対策を取ると、本来必要のない情報にも高いコストを払うことになるため、コストパフォーマンスが下がってしまいます。

そこで、機密情報などの重要情報はプライベートクラウドに、重要度の優先順位が低い情報は低価格のパブリッククラウドに分けるハイブリッドクラウドを構築すれば、無駄なコストを削減可能です。

また、パブリッククラウド内でデータを分散し、物理的に異なる場所で保存することで、サイバー攻撃や災害による障害から素早く復旧しやすくなります。

このように、パブリッククラウドを組み合わせることで、比較的低価格でセキュリティを確保できるのです。

柔軟に組み合わせることができる

クラウド環境のサーバーでデータを保管できる容量には上限があります。

ハイブリットクラウドであれば、重要な基幹システムをプライベートクラウドで構築し、それ以外は容量の増加などに柔軟に対応できるパブリッククラウドで構築するなど、状況に応じた対応が可能となります。

これによって、長期的に大量のデータ処理を安定して行うことが可能です。

アクセス負荷の分散ができる

企業のシステムは、繁忙期などになると外部からアクセスが集中することがあります。こうした一時的な負荷に耐えるためだけに、スペックの高いマシンを常設するのは高いコスト負担となります。

そこで、パブリッククラウドによって必要なときに必要なだけスペックを増強すれば、効率的にアクセス負荷を分散でき、コストの最適化が可能です。

ハイブリッドクラウドのデメリットとは?

ハイブリッドクラウドの構築は多くのメリットをもたらしますが、一方でデメリットも存在します。いまだ課題が残るポイントについて、ふたつに分けて解説します。

システム管理が複雑になる

ハイブリッドクラウドは複数のクラウドサービスを組み合わせて利用するため、システム構成はひとつのクラウドを利用する場合よりも複雑になります。

つまり、プライベートクラウド(コミュニティクラウド)とパブリッククラウドの両方を管理することになるため、管理項目が必然的に多くなります。

システム管理の難易度が上がると、それ相応に技術者のレベルを高める教育を行なったり、クラウドサービスに詳しい人材を雇用したりしなければなりません。

コスト試算が複雑になる

ハイブリッドクラウドはコストのバランスをコントロールして最適化できる点がメリットですが、コストの試算が複雑になる点に注意が必要です。

例えば、パブリッククラウドのコストを下げようとした結果、プライベートクラウドでコストが余計にかかってしまうと、結果的に全体のコストはあまり変化しない可能性があります。

ハイブリッドクラウドを採用する場合、事前のコスト試算が重要であると心得ましょう。

ハイブリッドクラウド活用の事例

では、実際の企業がハイブリッドクラウドをどう活用するのでしょうか?具体的なイメージのために事例をひとつご紹介します。

開発環境の課題を解決

ITシステム開発のSIerである株式会社JSOLは、自社が開発を行う環境にハイブリッドクラウドを取り入れる取り組みを実施しました。

かつて同社は、開発プロジェクトごとに社内の開発環境を立ち上げ、保有するデータセンターを基盤にオンプレミスで開発を行なっていました。

しかし、物理サーバーをベースとした環境のため、OSのアップデートやスペック・データ容量の補強などの環境を更新する作業がスムーズにできず、作業のたびにコストが増大してしまうという課題があがります。

そこで、ハイブリッドクラウドの導入を決定するという経緯に至ったのです。

まず行われたのは最新のオンプレミス環境のみでのシステム移行を実施した場合のコストを試算です。

これに対してハイブリッドクラウド環境の構築費用が割高とならないことを目標とした検討が行われ、新しい社内開発環境はオンプレミスとパブリッククラウドを組み合わせた環境へと変更されました。

その結果、先ほどの課題を解決するだけでなく、パブリッククラウドの機能を活用した柔軟かつ迅速な開発環境の構築が可能となったのです。

クラウドサービスのいいとこ取りで効率的な情報システム構築を

今回ご紹介したハイブリッドクラウドは、3種類のクラウドを組み合わせ、それぞれのいいとこ取りができる仕組みと言えるでしょう。

ハイブリッドクラウドを採用すれば、コストの最適化や効率的なシステム運用が期待できます。この効果を得るためには、それぞれのクラウドサービスの特徴やメリット・デメリットを把握し、正確にコストを試算することが重要です。

クラウド環境を活用したシステムの市場規模は、冒頭に解説したように、世界的な規模で広がっています。

この潮流に乗ろうと自社システムへクラウド環境を導入するという場合は、事前の検討をしっかりと行いましょう。

参考
Hybrid Cloud Market by Component, Service Type (Cloud Management and Orchestration, Disaster Recovery, and Hybrid Hosting), Service Model, Organization Size (SMEs and Large Enterprises), Vertical, and Region – Global Forecast to 2023
国内クラウド市場は2024年に5兆円超え ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研
マルチクラウドとは何か
「クラウドのサービスモデル・実装モデル」総務省
ハイブリッドクラウド環境での 社内開発環境への導入事例1

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