高まる「エンゲージメント」の重要度 対話の強化が生む生産性の向上

組織や仕事に対する自発的な貢献意欲などを表した指標「エンゲージメント」。社員が主体的に業務に取り組めているかを示します。忠誠心やモチベーションとも違い、個人と組織が対等で、ともに成長できるという関係性を指します。指標化したとき、高いほど離職率は下がり、生産性の向上にプラスに貢献すると言われています。そのため昨今、経営陣はエンゲージメントを計るサーベイを行い、指標を上げる施策に対して積極的です。今回は、エンゲージメントを高めるにはどういった手法があるかについて、具体例を挙げて考えてみます。

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企業が取り組む涙ぐましい努力

企業が取り組む涙ぐましい努力

企業としてはエンゲージメントが上がるように仕向けていきたい。職場のリーダーがそのためにケアしなければいけないことを真剣に考え、取り組まないといけない時代になりました。

各自のエンゲージメントが高まる要因を把握して、可能な限りその状況にもっていく。例えば、ビジョン・目的の更なる浸透。自社の理念やビジョンなどの情報を事細かに伝える機会を準備するということがあるかもしれません。あるいは職場環境の改善。オフィスのレイアウト変更やフリーアドレス制、冷暖房やデスクなどの設備の改善、業務のデジタル化などもあるでしょう。

加えて、育児・介護休暇を取得しやすい環境の整備、フレックスタイム制や時短勤務の導入、テレワークの活用などといったワークライフバランスの推進。さらには人事制度の見直しや、風通しのいい職場づくりに向けた対話の強化など涙ぐましい努力をする企業および職場が増えています。

日本企業でのエンゲージメントは低い

日本企業でのエンゲージメントは低い

ただ、ここで理解しておく前提があります。日本企業のエンゲージメントは甚だ低く、早期に向上させる必要があるということです。日本企業の社員は愛社精神が高く、エンゲージメントはそれなりに高いと考えてしまいがちですが、真逆なのです。

Qualtrics社の2020年の「従業員エクスペリエンストレンド調査」によると、日本企業で「会社に貢献したい」という意欲の高い社員の割合は、わずか3%です。さらに言えば、日本企業における社員のエンゲージメントのスコアは長年、G8の中で最下位。世界的な企業力の低さを象徴するスコアです。

本来、エンゲージメントが高いなら、言われたことだけやるのではなくて、自ら進んでやる。このことから生産性の向上や革新性が生まれていきます。ところが、日本の社員は新しいことに自らチャレンジしない、職場としての自社に誇りをあまり感じない、組織の戦略や方針が腹落ちしていない状態と最下位の理由が語られています(同調査)。改善は急務です。

カギを握るマネジメント層

カギを握るマネジメント層

仮にエンゲージメントが低いとどのような状況になるのか。生産性が下がる、離職が増える、企業の評価が下がる、など業績を下振れさせる要素が多いのは明らかです。ゆえに企業は社員にエンゲージメントの高まりを求めるようになりつつあります。

企業の職場がエンゲージメントの高い状態を維持するためには、こうした存在に対してなにがしかの対策を打っておきたいもの。その対策のキーマンとなるのがマネジメント層です。

ちなみに前述の調査で、エンゲージメントに影響を与える要因としては、重要度順に「自社にとって適切な意思決定を行う経営陣に対する信頼感」(33%)、「担当業務と会社の戦略的目標の関連についての明確な理解」(34%)、「優れた業績に関する認知・評価」(35%)、「キャリア開発を支援する管理職」(29%)、となっています(%の数字は肯定的回答率)。

エンゲージメントを向上させるには、経営陣や管理職がリーダーシップを発揮する、的確な意思決定を行うことの重要性が分かります。ただ、よくよく考えてみると経営者と社員が対話する機会はなかなかありません。

ちなみにマネジメント層が社員の声に耳を傾ける企業では、エンゲージメントが高めになるとの結果が出ているとのこと。それだけ管理職と部下の対話の機会は、様々なことに影響する重要な取り組みなのです。

「1on1」が効果的な手段に

「1on1」が効果的な手段に

そこで注目度が高まっているのが個別の面談機会=1on1の活用です。

社員の成長を促すために上司と部下がマンツーマンで定期的にミーティングをするマネジメント手法のことで、ミーティングで使用する時間は平均15分から30分程度。短時間の面談を高頻度で繰り返すとより効果を発揮します。

これまで各企業が行っていた人事面談は、評価や目標などの確認やすり合わせが目的でしたが、1on1でのアジェンダは「相互理解」「業務に関する悩み相談」「今後について」が中心。よって、比較的フランクな雰囲気で、部下の自発的な発言を尊重する「対話型コミュニケーション」で行うことが推奨されています。すでに半数以上の企業が導入済みともいわれ、エンゲージメント強化のために必須の手段として定着しつつあります。

管理職の準備でより有意義に

管理職の準備でより有意義に

ただし、何となく、これまで行ってきた人事評価関連の面談と同じでしょ…と準備なしで始めてもうまくいきません。上司が1on1の意義を理解する必要があります。「会社の指示だから」という理由で部下との間に時間を取ったとしても、有意義な対話は期待できません。何よりも部下が上司のやる気のなさを感じてしまうでしょう。

有意義な1on1に上司の育成スキルは必要不可欠です。そして上司が1on1の目的や価値を口に出して説明できるほど理解している必要があります。そのためには管理職を集めて研修を行うなど、事前準備をしてから本格的に導入するのが得策です。

こうした準備をして行われている1on1はそれなりの成果が期待できます。株式会社リクルートマネジメントソリューションズの「1on1ミーティング導入の実態調査」でも、1on1ミーティングの導入によって

・上司と部下の信頼関係が構築される
・振り返りやフィードバックによって、部下の成長につながる
・組織全体の生産性が向上する

などの効果を得られた企業が多数あることがわかっています。まさにエンゲージメント向上に対する有効な手段と言えます。

1on1ミーティング

ただ、プラス面だけでなく時間的負荷が高いなど、効果的な成果につなげるためには現場の管理職にそれなりの負担がかかることは覚悟する必要があります。そこで、負担を少しでも軽くするために1on1ツールを導入する企業が増えています。

例えば、ミーティングの質を高めるためのトピック事前共有機能や、1on1を継続しやすくするスケジューリング機能で管理職の負担を下げ、有意義な時間にする。あるいは過去履歴を活用して適切なタイミングでフォローすることが、1on1ツールの導入で可能になります。

管理職の負担がまったくなくなるわけではありませんが、継続的な運用のためには少しでも負担を下げる工夫は重要。ツールを導入する企業は増えていくことでしょう。

人材確保に不可避な1on1

人材確保に不可避な1on1

さて、エンゲージメント向上に1on1を活用する動きは、継続するのでしょうか?

おそらく企業の経営視点からも、業績向上に向けた重要な、注目度の高い施策として継続すると思われます。人手不足問題の深刻化は増し、経営者にとって人材確保が重要なテーマから外れることはないからです。

若手人材の価値観の多様化や少子化で採用難度があがり、離職率が悪化している企業が大半。人は会社のためにだけ働いてくれない。人と会社が対等な関係で働く環境を整備しなければ、人材確保は不可能です。

こうした時代にエンゲージメントを強化するため何をすればいいのか。現場のリーダーである管理職と部下の関係を強化することしか道はない。ならば1on1は避けられない手段と言えます。

知人である製造業の管理職は「1on1を行うことは管理職の成長機会にもつながっている。部下に対する頻繁なフィードバックに向けた準備が、学びの機会になっているから」と話してくれました。

あるいはベンチャー企業の経営者は「1on1の内容が充実している組織は生産性が高いとの結果が出てきている。もはや重要な評価指標と考えている」とのこと。前向きに取り組み、成果につなげていくべきでしょう。

せっかくの機会を自分のプラスに

最後に1on1を受ける立場の視点から自分にプラスを持ち込む方法を考えてみましょう。

こうした機会が提供されるなら、どうしたらいいか。お互いの理解を深め、エンゲージメントも高まるように果敢に取り組むべきです。もちろん、上司からの質問にはしっかり回答する前提で、会社や上司が考えている優先度の高いことは何か、自分から質問してみてはどうでしょうか。

例えば、「来年以降に向けて取り組んでいることは何かありますか?」とか「我々も理解しておいた方がいい会社の方向性について、教えてください」と質問してみるのです。

普段は忙しく、しかも現場の部下たちは関心が低いと思って話していないことを教えてくれることがあります。そうした機会に相手の悩みが垣間見えることもあるでしょう。

自分もこうした質問を上司にぶつけた経験があります。すると、新規事業に関する取り組みや、内緒の人事に関する情報を入手できたことが何回もありました。

お互いの立場が違えば見えている視点の高さも違います。ところが、その高い視点で眺めている情報を知ることができると、これまで理解できなかった会社の方針やスタンスに関して納得出来たり、前向きに捉えることが可能になったりするもの。結果としてエンゲージメントは上がることでしょう。

せっかく、会社が提供してくれる機会なので上手に活用していきましょう。

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