ドローン宅配のメリット&課題を解説!物流に革命を起こすのはAmazonか?楽天か?

かねてから物流業界は、ドライバー不足や再配達の増加が課題とされていました。そこに、新型コロナウイルスの影響で宅配需要が急増し、物流業界はいまだかつてない窮地に陥っています。そんな物流業界の救世主として期待を一身に集めているのが「ドローン宅配」です。 今回は「空に革命を起こす」と言われるドローン宅配について、メリットや懸念点などを中心に解説していきましょう。

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ドローン宅配とは?

ドローン宅配とは、小型無人機(ドローン)を使った配送サービスです。

主に、物流拠点から配送先までの「ラストワンマイル」の配送自動化を担い、物流業界の課題解決をもたらす存在として大きな期待されています。

海外では、Amazon やGoogleグループのWingに牽引される形でドローン宅配の実用化が始まっており、アメリカではセブンイレブンがすでにドローン宅配をスタート。

ニュージーランドでもドミノ・ピザが一部の顧客向けにドローンによるピザ宅配を開始しています。

日本でも、測量や警備、農業などの分野ではドローンの導入が始まっていますが、物流業界でのドローン活用は遅れをとっています。

しかしながら、ここ数年で楽天や日本郵政をはじめとする企業がドローン宅配の実用化に向けて実証実験を重ねています。

「人の代わりに小さな飛行機が空を飛んで荷物を届ける」という、昔のSF映画に描かれていた世界が現実のものになろうとしています。

ドローン宅配が実用化されれば、物流業界にかつてないイノベーションが生まれるのは間違いありません。

ドローン宅配によってもたらされるメリット

ドローン宅配の実現によって物流業界にどんなメリットがもたらされるのか?

大きくは以下の3点が挙げられます。

労働力不足の解消

鉄道貨物協会は、2028年度にトラックドライバー不足が約28万人まで拡大すると予測しています[注1]。

今後、ますます深刻化する労働力不足の解消に大きな期待を受けているのが、ドローン宅配です。

ドローンは目的地をインプットして荷物をセットすれば、荷物を自動で届け、自動で拠点に戻ってきます。

今、宅配ドライバーがおこなっている配送業務をドローンが担ってくれれば、ドライバーの負担は大幅に軽減されるでしょう。

配送コストの削減

都市部では、荷量増加に加えて交通渋滞の慢性化から配送遅れが多くなっています。

郊外では荷物をまとめて配送するのが難しく、生産性が上がりません。このような問題は、配送コストの増加につながっています。

その点、空を移動するドローンは渋滞が起こりにくく、車での宅配が難しい山間部や離島にも簡単にアクセスできます。

さらに空を使うドローン宅配は道路と異なり、大がかりなインフラ整備が不要なので、その点でもコストを抑えることが可能です。

ドローン宅配が実用化されれば、配送コストの問題も改善が見込めるでしょう。

配達時間の短縮

上述のように、ドローン宅配は道路を使わないので、道路交通の影響を受けません。

また、車であれば曲がりくねった山道のある山間部でも、空の道なら直線的に移動できます。

ドローン宅配が実用化されれば、従来は不可能だったスピードでの配送が可能になり、離島や過疎地における生活の利便性を劇的に高める可能性を秘めています。

ドローン宅配の問題点

ドローンの実用化を目指すうえでは、クリアしなければいけない問題も多くあります。

安全性の問題

ドローンから荷物が落下するリスク、ドローン自体が墜落するリスクが指摘されています。

実際に、ドローンの墜落事故は多く報告されており、たとえばマラソン大会中に撮影用ドローンが墜落したこともありました。

いくら広い空とはいえ、飛行中のドローンが鳥や建造物と接触する可能性はゼロではありません。

また、雨や強風、落雷によってトラブルが生じる可能性も否定できないでしょう。

犯罪利用の問題

ドローンが、テロやスパイ活動に利用される危険性も指摘されています。

実際に、日本では首相官邸の屋上にドローンが墜落した事件があり、アメリカでもホワイトハウスの敷地内にドローンが墜落した事件がありました。

ドローンが小型化・高性能化するほど、テロやスパイ活動、密輸や盗撮などの犯罪行為に利用されるリスクへの警戒が必要になるでしょう。

法整備の問題

日本では、測量や農業などの分野でドローンの活用が始まっていますが、いわゆる「人口集中地区」で許可なくドローンを飛ばすことは禁止されています。

また、航空法では地上150メートル以上の空域でドローンを飛ばすことも禁止されています。

このようにいくつかの規制があるのが現状ですが、政府もドローンを使った宅配サービスなどの商用化を目指して法整備を進めています。

2020年2月にはドローンの登録制度を導入する航空法改正案が閣議決定され、6月に法案が成立しました。

ドローン宅配の取り組み事例

ドローン宅配は、世界中で急速な広がりを見せています。

日本も遅れを取り戻すように、ここ数年、企業・自治体による実証実験が相次いで実施されています。

海外・国内におけるドローン宅配の取り組み事例をご紹介します。

Antwork

Antwork(アントワーク)は、ドローンとAI技術を融合した「全自動物流システム」を開発する中国・杭州のスタートアップ企業です。

中国民間航空局(CAAC)が2019年10月に発行した、世界初の都市型ドローン輸送のライセンスを取得しています。

2015年に創業し、都市郊外での郵便業務から事業をスタートし、2016年には中国郵政と共同で初のドローン郵便配送ルートを開通。

現在まで、郵便・宅配・出前・医薬品などのドローン配送を実施しており、同社の物流システムはスターバックスやケンタッキーフライドチキンなどでも活用されています。

新型コロナウイルスの流行下においては感染拡大防止のため、自治体や医療機関と連携して「ドローンによる医療物資の輸送プロジェクト」を発足。

同社のドローンや無人ステーションを使うことで人や物資の接触・汚染を減らしながら、スピーディーに医薬品や検査キットなどの医療物資を輸送しました。[注2]

千葉市

2016年1月、千葉市はドローン活用の国家戦略特区に指定され、同年4月からドローン飛行の実証実験を始めました。

千葉市はドローンによって生活必需品や医薬品の宅配をおこない、子育て世代やシルバー世代に新しいライフスタイルを提案したいとしています。

2018年10月には、国と千葉市、楽天などの企業で構成される「千葉市ドローン宅配等分科会」がドローンの飛行実験を実施しました。

これは、目的地をインプットしたドローンが自律飛行して約600m離れた幕張新都心のマンションまで荷物を運び、マンションに設置されている地上配送ロボット(UGV)に荷物を移し、UGVがエレベーターなどを通過して荷物を部屋まで届けるという実験。

物流拠点から部屋まで、無人で宅配する際の課題や安全性を確認しました。[注3]

実用化が急がれる日本のドローン宅配

ネット通販の拡大や巣ごもり需要の増加により、宅配サービスは私たちの生活に欠かせないインフラになりました。

ドローン宅配は物流業界の未来を変えてくれる画期的なテクノロジーとして、その実用化が待たれています。

実用化に向けては様々な問題をクリアする必要がありますが、現在、実証実験が重ねられており、機体の安全性向上や法整備も進んでいます。

今後の物流業界、ドローン業界の動きは、ぜひチェックしておきたいところです。

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<参考>
[注1]公益社団法人鉄道貨物協会「平成30年度 本部委員会報告書」
[注2]中国ドローン配送、医療物資に広がる:日本経済新聞
[注3]千葉市:ドローンによる宅配等の取組み

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