ダブルチョップとは

「ダブルチョップ」とは、小売業者が企画から携わり、製造会社と共同で開発した商品です。
「SB」(Store Brand)とも呼ばれています。

チョップとは、「商標」という意味です。
商品パッケージの表面には小売業者のブランドが明記されますが、裏面の製造所の欄に製造業者の企業名も記載されることから、ダブルチョップと呼んでいます。

ダブルチョップの身近な例としては、イオングループが提供している「トップバリュ(TOPVALU)」の商品が挙げられます。

トップバリュの商品の販売者欄には、「イオン株式会社」と表示されています。
しかし、製造業者の欄に「サッポロビール」や「湖池屋」など、商品の製造業者(企業名)が記載されているものもあり、そういった商品がダブルチョップに該当します。

NB商品やPB商品との違い

ダブルチョップの他にも、小売業者独自のブランドであるPB(Private Brand)商品や、製造業者が全国的に広く展開しているNB(National Brand)商品もあります。

ダブルチョップとNB・PBの違いをまとめると、以下のようになります。

名称 形態 販売場所
NB メーカーが独自で開発・生産する スーパーマーケットやコンビニなど、全国の小売業者
PB 小売業者が独自に、開発・生産・販売を行う 小売業者の店舗のみ
ダブルチョップ(SB) 小売業者が企画から携わり、製造会社と共同で開発を行う 小売業者の店舗のみ

NB商品がどのようなものかや、PB商品とダブルチョップとの違いなどを紹介します。

NB商品とは

NB商品とは、「コカ・コーラ」など、商品を製造する製造業者(メーカー)自身のブランドの商品を指します。

NBは「ナショナルブランド」(National Brand)の略称です。
NB商品は日本全国で、多くの形態の小売業者で販売されている商品が該当します。

また、NB商品に対し、特定の地域でのみ認知・販売されているブランドのことを「ローカルブランド」(Local Brand)と呼びます。

ローカルブランドとしては、たとえばある商店街に店を構える自家製造の菓子屋や飲食店などが当てはまります。

最初はローカルブランドであっても、知名度が上がることによりNBになることもあります。

長野県を本拠地とする「株式会社サンクゼール」の食品ブランド「サンクゼール」も、かつてはローカルブランドでした。

当初は長野県内のごく限られた場所で、個人が作った手作りのジャムを販売していました。

しかし、徐々に人気が上がり、販路や取り扱う商品の種類を拡大して、今では、全国のスーパーマーケットやショッピングモールでも販売されているNBになっています(注2)。

PB商品とは

PB商品とは、小売業者や卸売業者など、本来は商品の企画や開発に関与しない業態の企業が独自で企画、開発などを行う商品です。

PBとはプライベートブランド(Private Brand)の略称です。PB商品は、小売業者や卸業者独自のブランドの商品として販売されるもので、イオングループの「トップバリュ」、セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」、ドン・キホーテの「情熱価格」などが有名です。

近年、大手の小売業者ではPB商品を販売することは一般的となっています。

また、イオンが2025年にはPB商品の売り上げを倍増させることを発表しており(注1)、小売業者におけるPB商品の存在感は非常に大きいものになりつつあります。

ダブルチョップのメリット

ダブルチョップのメリットとして挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 小売業者の差別化につながる
  • 製造業者の在庫リスク・広告費を下げられる
  • NB商品に比べて販売コストが低い
  • 製造業者が可視化され、消費者が安心できる

ダブルチョップは小売業者や製造業者だけではなく、消費者にもよい影響があります。

それぞれについて、詳しく説明します。

小売業者の差別化につながる

ダブルチョップの販売により、小売業者の差別化につながります。

例えば「日本コカ・コーラ株式会社」が製造する「コカ・コーラ」を買う場合、どこで買っても品質は変わらず、店舗間での差別化ができません。

その結果、消費者は価格の安い量販店に行くでしょう。

しかし、PB商品やダブルチョップは、他の量販店では販売していない独自の商品です。
そのため、価格競争に巻き込まれにくいのです。

また、ダブルチョップやPB商品の商品の質を向上させることで、PBや企業のイメージが向上するということもあります。

製造業者の在庫リスク・広告費を下げられる

ダブルチョップは、製造業者側にもメリットがあります。

ダブルチョップは小売業者自身のブランドで、販売も自身の店舗で行うため、販売チャネルが決まっています。
売り場が決まっていることにより、製造業者はある程度安定した発注が望めるのです。

また、製造業者は小売業者からの受注数量分を生産すれば良いため、在庫リスクが低い状況でビジネスが行えます。

さらに、広告費も抑えられます。NB商品を販売するとき、CMなどで商品を大々的に宣伝する必要がありますが、そのときの広告費は、コストとして製造業者に重くのしかかります。

しかし、販売チャネルが決まっているダブルチョップは、それほど広告をする必要がありません。
ダブルチョップは、宣伝にかかる費用も抑えられるのです。

NB商品に比べて販売コストが低い

ダブルチョップは、NB商品に比べて販売にかかるコストを低く抑えられます。

NB商品の場合、製造業者で製造された商品が、直接スーパーに並ぶわけではありません。

大抵の場合、製造されてから商社や食品卸会社などを経由し、小売業者へと渡り、その間にはマージンも発生します。

しかし、PB商品やダブルチョップは販売チャネルが決まっているため、商社や食品卸会社を経由することはほとんどありません。

そのため、途中のマージンが発生せず、NB商品よりも安く提供できる傾向にあります。

製造業者が可視化され、消費者が安心できる

ダブルチョップはPB商品と比べて製造業者を把握しやすく、消費者にとっても安心感があります。

PB商品の場合、製造業者の場所に記載されているのは小売業者の名前です。
小売業者は自社の工場で商品を製造しているわけではなく、どこかの製造業者に委託しています。

しかし、PB商品ではその製造業者が見えにくいため、どこで誰に生産されたのかがすぐにわからず、不安に感じる消費者もいる可能性があります。

しかし、ダブルチョップであれば、製造所や製造業者の欄に実際に製造を担当した企業の名前が記載されています。
そのため、消費者も安心して商品を購入できるようになります。

ダブルチョップのデメリット

ダブルチョップは小売業者・製造業者・消費者それぞれにメリットがありますが、以下のようなデメリットも存在します。

  • 販売責任は小売業者が負う必要がある
  • NB商品の売れ行きに影響が出る可能性がある

それぞれについて、詳しく説明します。

販売責任は小売業者が負う必要がある

ダブルチョップのデメリットは、販売責任を小売業者が負っている点です。

NB商品の場合、売れなかった商品は製造業者へ返品できる場合がありますが、ダブルチョップの場合はできません。

また、在庫の管理も小売業者が負うため、商品の売れ行きが悪かった場合は、在庫の保管費用などがかさんでしまいます。

NB商品の売れ行きに影響が出る可能性がある

製造業者にもデメリットが生じる場合があります。

NB商品よりダブルチョップブランドの売れ行きが良かった場合、自社の提供するNB商品の売れ行きに影響することがあります(注3)。

そのため、メーカーはダブルチョップとNB商品のバランスを取ることが重要になるのです。

ダブルチョップはさらに存在感を増していく

ダブルチョップは、小売店においても独自性が出しやすいことや、NB商品に比べてコストが低く抑えられることから小売業者にはメリットが大きい商品です。

製造業者側にもリスクが少なく、安定したビジネスを構築することができると言えます。

今後も小売業界は、PB商品を中心に大きく変わる可能性があり、ダブルチョップも、さらに存在感を増していくかもしれません。

引用(参考)
注1 :「イオン PB売上を5年で倍増へ 直接販売など増えボーダレス化する業態 『商品そのものがキーワードに』」、食品新聞、2021年4月16日、食品新聞 WEB版(参照2021年8月4日)
注2 :沿革|株式会社サンクゼール
注3 :PB 商品の需要拡大が製造企業に与える影響 -食品製造企業からみた PB 商品の戦略的効果と NB 商品の需要回復に向けた取り組み-|水野清文

関連記事

村上春樹さんから学ぶ経営⑳ おじさんは石とだって話ができるじゃないか

五輪に関するネット上の匿名での投稿(すなわち本音)をみると高評価が多く、無事に終わって本当に良かったと思います。ゆくゆくは二つの五輪(オリンピックとパラリンピック)の統合と、差別をなくした上で「WeThe15」ではなく「WeThe100」(弱みが全くない人など存在しません)の実現を期待したいところです。

プロスポーツチームの戦略オプション②~スタジアム・アミューズメント化経営の要所

コロナ禍において、プロスポーツチームが取り得る戦略オプションは、どのようなものがあるだろうか。今回は取り組みが活性化してきている「スタジアム・アミューズメント化」経営について、その提供価値と実現スキームに焦点を当てて解説していく。

混流生産とは?メリットや種類、自動車業界の詳細な事例を紹介

混流生産は、1つの生産ラインに複数の品種を混ぜて流す生産形態です。市場の動きへの柔軟な対応を可能にする多品種少量生産の1種で、自動車業界を筆頭にさまざまな業界に導入されています。 需要が多様化した成熟市場に不可欠な生産方式ですが、資金や技術の不足から導入できない企業は少なくありません。とりわけ、知識不足が導入する上でのネックとなっています。 そこで、本記事では、混流生産の定義やメリット、自動車業界で展開される実例を紹介します。

ランキング記事

1

EVは本当に最適か?⑤ 基幹産業=自動車を守る為に

ゼロカーボン社会に向け、EV(電気自動車)は本当に最適なのだろうか?シリーズ最終回は、日本が技術的優位に立つ「Hy-CAFE」(Hy:水素/C:Cold fusion/A:Ammonia/F:Fuel cell/燃料電池/E:e-fuel」を生かした、自動車の次世代エネルギー革命についてまとめた。

2

村上春樹さんから学ぶ経営⑯「文章はいい、論旨も明確、だがテーマがない」

前回のテーマは「変えてはならないことがある」でした。そこで今回は、本田宗一郎氏――「社の連中に技術的な話をしたことがない。話すことは、みな技術の基礎になっている思想についてである」「技術はテンポが早く、すぐ陳腐化してしまう。技術はあくまでも末端のことであり、思想こそ技術を生む母体だ」(『起業家の本質』プレジデント社)――のようなお話です。それでは今月の文章です。

3

「安すぎる日本」で国民は苦しむか? 最低賃金引上げの合理性を問う

最低賃金引上げが叫ばれている。日本の賃金は国際的に見て安いらしい。一般消費財でも、スターバックスコーヒーやマクドナルドなどグローバルブランドの商品が日本では先進国中で最低価格となっており、「安すぎる日本」として話題になっている。最低賃金引き上げは、本当に筋のよい政策なのだろうか。

4

相続登記義務化のインパクトとは?

不動産を相続した場合、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する必要があり、この手続きを「相続登記」と呼ぶ。従来相続登記は任意であったが、2021年6月の法改正により2024年を目途に義務化されることになった。相続登記義務化の背景と、そのインパクトは何かを考察する。

5

プロスポーツチームの戦略オプション②~スタジアム・アミューズメント化経営の要所

コロナ禍において、プロスポーツチームが取り得る戦略オプションは、どのようなものがあるだろうか。今回は取り組みが活性化してきている「スタジアム・アミューズメント化」経営について、その提供価値と実現スキームに焦点を当てて解説していく。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中